食品安全情報blog過去記事

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論文

Phobia of sicknesses leads to Angelina Jolie syndrome
11-Dec-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-12/nruh-pos121115.php
今日の西洋文化における健康問題の政治問題化と商業化がヘルシズム−健康のためなら何でもやる−という風潮の拡大につながっている。ヘルシズムでは美しく、若く、スリムな身体という魅力ある基準にあてはまらないものは全て批判対象である。極端になると「正しい」遺伝子のみを選択する優生学に近づく。しかし身体の「標準」についての単純な懸念でも、健康な身体を手術するといった過剰修正につながる。
Journal of Social Policy Studies(ロシア語!)に発表されたEvgenia Golmanによる記事。
(長いものの一部抜粋)
アンジェリーナ・ジョリー症候群は最近メディアで良く言及されるようになったが、危険な病気になる可能性への注目の増加を指す。健康状態を良く監視することだけでなく、健康な身体への外科的手術を含む、仮説でしかない病気すら予防しようとする。
しかしアンジェリーナ・ジョリーの物語は「健康についての新しい理解」の極端な表出である。より広範なヘルシズムの表出は、モバイルアプリによる健康モニタリングやダイエット、フィットネス、形外科手術、オーガニック食品の流行も含む。そのような「身体崇拝」はビューティサロンやサプリメント製造業者や「スーパーヘルシー」食品、フィットネスやヨガ教室、そして医療機関ですら推進している。
今日の医療政策は健康についての責任を医療機関から個人にシフトしてきていて、さらに治療から予防に、純粋な仮説でしかない病気すら予防しようとシフトしている。
予防医学が多くの病気を予防しリソースの節約になるのは疑いようもない。しかし病気の「計算」や美しく健康な身体基準の理想化が商業ベースで行われるとき、それは集団神経症と社会の健康への過剰な依存となり不適切である。そのようなやり方は「ヘルシー」でないあらゆるものを悪いものとみなす。
健康マニアは神経症と差別につながる
「健康」が社会的倫理的義務になり、「不健康」は忌まわしいものになる。健康でいたいという当然の願いが、特にマスメディアでは、非合理的なレベルになっている。
「不健康な見た目」は社会的に差別される
特に女性がヘルシズムのプレッシャーを受ける
(ヘルシズムが結果として健康状態が良くなることにつながらないので)

Thyroid cancer patients report poor quality of life despite 'good' diagnosis
11-Dec-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-12/uocm-tcp121115.php
Thyroidに12月11日に発表されたシカゴ大学の知見。甲状腺がんサバイバーは、診断と治療後のQOLがより致死的ながんと診断された患者より低い。間もなく全アメリカ人人口の10%になろうとするがんサバイバーについてのあまり研究されてこなかった知見。
甲状腺がんは5年生存率が約98%、10年でも95%と非常に高く「良性」のがんとよばれる。しかし予後がよいため甲状腺がんサバイバーの研究はあまり行われてこなかった。
シカゴ大学医学部のBriseis Aschebrook-Kilfoy博士らは北米甲状腺がんサバイバーシップ研究(NATCSS)で米国とカナダから1174人の甲状腺がん患者を調べた。89.9%が女性で平均年齢48才。City of HopeのQOL甲状腺ツールを用いて患者の報告する身体的・心理的psychological・社会的・精神的spiritual健康を測定した。スケール10で甲状腺がん患者の平均は5.56で、その他のがん(直腸結腸や乳がんを含む)のサバイバーの6.75より悪い。
共同研究者のGrogan医師は「我々みんなが社会に深く根ざしたがんへの恐怖を持っているので、予後がどうであろうとがんだとわかっただけで恐怖に震える。この結果はそれを示すものだと思う」という。甲状腺がん患者は治療が終わった後、生涯がんの検査に直面し再発率の高さが不安を呼ぶこともこの知見に寄与する可能性がある。さらにより若い、女性、教育レベルの低いほうが報告されるQOLが低い。しかしながら5年を過ぎるとQOLは徐々に改善していく。研究はさらに継続する。
甲状腺がんの発症率は過去数十年で劇的に増加し、年に約5%増加している。米国だけでなく世界中で増加していて低所得国でも同様に性差がある。研究者らはこの増加は画像診断機器の進歩によるものと環境やライフスタイルの両方であると考えている。
甲状腺がんというのは呪いの要因が強いんだなぁ。呪いを祓う方法はあるようだが−適切な科学−呪いを振りまく人たちも多い。)