食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • 如何にして「面積当たりの作物の収量を増やす」ことが野生種を救うのに役立つか

How 'more food per field' could help save our wild spaces
28-Jan-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-01/uoc-hf012616.php
野生種の消失と温室効果ガスの排出の主要因は農地の拡大である。しかし農業技術が向上し同じ広さの土地から収穫できる作物が増えれば、自然の生物のためにとっておける土地が増える。保存のために土地を空けておく政策への転換を求めるScienceの記事。肥料や農薬をたくさん使うことで収量を増やすのではなく、最適な技術で収量を増やすことを薦める

  • 世界中の海の魚に有害汚染物質を発見

Study finds toxic pollutants in fish across the world's oceans
28-Jan-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-01/uoc--sft012616.php
世界中の海の魚から難分解性有機汚染物質を検出。PeerJに2016年1月28日発表された1969年から2012年の論文のレビュー。研究対象汚染物質はDDTや水銀、難燃剤などを含む。1980年代の濃度の方が現在より高いものが多い。

  • 包装表面への表示はその食品が健康的であることを意味しない

Front of package food labels do not mean a food is healthy
2-Feb-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-02/ioft-fop020216.php
Journal of Food Scienceの1月号に発表された食品技術研究所(IFT)による研究によると、包装表面に表示されている(FOP)強調表示に頼ることは消費者にとって最良の選択肢ではないかもしれない。2006年から2010年の間に発売された朝食シリアルや調理済みの食事2200以上のFOPの栄養強調表示を解析した。「心血管系疾患リスクを減らす可能性がある」「低脂肪」あるいはオーガニックやナチュラルや地元産といった表示は必ずしも栄養価の高いことと関連せず、消費者は食品を選択する場合には栄養成分表示を見る必要がある。

  • がんの遺産

A cancer legacy
Jennifer Couzin-Frankel*
Science 29 Jan 2016:Vol. 351, Issue 6272, pp. 440-443
何十年もに渡る喫煙や悪い食生活やその他環境要因で遺伝子異常を蓄積してきた成人と違って、生まれて間もない子どものがんは偶然あるいは遺伝による。現在小児がんのがん細胞と正常細胞の遺伝子研究が進んでいる。遺伝する変異があった場合の家族への報告、治療方法のない遺伝的要因を同定した場合の対応など

  • 身長は心血管系疾患、糖尿病、がんリスクに影響する

Height influences risk of cardiovascular disease, diabetes, and cancer
2-Feb-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-02/dzfd-hir020216.php
身長は主に遺伝的に決まるが近年世界中で身長は伸びている。子ども達が成人したときの身長は彼らの両親より有意に高い。特に身長が伸びたのがオランダで、オランダ人男性の身長は150年前より20cm高い。オランダは世界でもミルクや乳製品の摂取量が最も多い。
ドイツと米国の研究者らによる国際研究でこの身長の医学的影響を解析した。これまでの研究で背の高い人は心血管系疾患と糖尿病リスクが低くがんリスクが高いことが明確になっている。疫学データからは身長が6.5cm高いと心血管系疾患による死亡リスクは6%減るががんによる死亡率は4%増える。この原因としてIGF-1/2システムの関与が疑われる。
著者らは身長を主要疾患予防のためにもっと考慮すべきと結論する。Lancet Diabetes & Endocrinology

  • 水銀摂取の答えを探る

Fishing for answers about mercury consumption
2-Feb-2016
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-02/rumc-ffa020216.php
シーフード摂取による水銀濃度の増加は脳への有害影響増加と関連しない
シーフードを食べることは認知症予防に役立つという研究がある一方でシーフードは認知機能を傷害する水銀の摂取源でもある。JAMAに発表された新しい研究では脳の水銀濃度と認知症に関連する脳の神経病理との関連について初めて報告した。
シーフードを食べることは脳の水銀濃度と関連があるが水銀濃度の増加は脳の神経病理とは関連がなかった。むしろシーフード摂取はアルツハイマー病神経病理の少なさと関連した。また同じ研究で魚油サプリメントは脳の神経病理と何の関連もないことも見出した。ただし研究対象者の魚油サプリメント使用率は低くしっかりした結論は出せない。
死亡まで平均4.5年フォローしたコホート参加者の286の死後の脳の解剖結果。
オープンアクセス
Association of Seafood Consumption, Brain Mercury Level, and APOE ε4 Status With Brain Neuropathology in Older Adults
Martha Clare Morris, et al.,
JAMA. 2016;315(5):489-497.
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2484683
エディトリアル
Fish Consumption, Brain Mercury, and Neuropathology in Patients With Alzheimer Disease and Dementia
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2484661
(週に2.7回食べると多いというアメリカ人での研究なのでもともと水銀量少ない。)

  • マイクロプラスチックが牡蠣の繁殖能力を傷害する

Natureニュース
Microplastics damage oyster fertility
Daniel Cressey 02 February 2016
http://www.nature.com/news/microplastics-damage-oyster-fertility-1.19286
フランスの国立海洋研究機関(Ifremer)の科学者であるArnaud Huvetらが太平洋牡蠣(Crassostrea gigas)をマイクロプラスチック入りの水で2ヶ月育てたところ、プラスチック無しの水の場合に比べて卵が小さく数が少なく精子の動きが悪く子どもが少なかった。子どもの成長も遅かった。PNAS。

Scienceニュースでも
Tiny bits of plastic in ocean are hurting oyster reproduction
By Patrick MonahanFeb. 1, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/02/tiny-bits-plastic-ocean-are-hurting-oyster-reproduction

  • 科学者が帝王切開赤ちゃんに母親の微生物を塗る

Scientists swab C-section babies with mothers' microbes
Ewen Callaway 01 February 2016
http://www.nature.com/news/scientists-swab-c-section-babies-with-mothers-microbes-1.19275
Nature Medicineの2月1日号に発表された研究で、研究者らが帝王切開で生まれた赤ちゃんに母親の膣由来微生物を塗ることで微生物叢を変えた。この方法はたった4人でしか試みられていないが帝王切開で生まれることで欠ける微生物暴露を元に戻そうとするものである。経膣分娩の7人、帝王切開11人そのうち4人が滅菌ガーゼで母親の膣から採取した微生物を生まれた後2分以内に赤ちゃんの全身に塗る方法で移植を受けた。その結果自然分娩の赤ちゃんとより近い細菌コミュニティをもつことが報告された。最初の1ヶ月の結果しか報告されていないがフォローアップを計画している。
しかしこれがその後の健康に影響するかどうかを見るのは難しいだろう、とミネソタ大学のAlexander Khorutsはいう。「私が心配するのはこのような方法を要求する親たちがいるだろうということだ。これはまだ実用段階ではない」
しかし科学的結論を待たずに実施する母親達がいる
(ポジティブバースムーブメントというサイトにリンクがある)
How to give a C-section baby the potential benefits of vaginal birth
By Jennifer Couzin-FrankelFeb. 1, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/02/how-give-c-section-baby-potential-benefits-vaginal-birth

  • 歯フッ素症の自然史と長期影響:前向きコホート研究

Natural history and long-term impact of dental fluorosis: a prospective cohort study
Do LG et al.,
Medical Journal of Australia 204:25.e1, 2016
https://www.mja.com.au/system/files/issues/204_01/10.5694mja15.00703.pdf
2003年から2004年に南オーストラリアで行われた集団ベースの研究の2011-2012フォローアップ研究。8-13才の子ども。結論として非常に軽度のあるいは軽度の歯フッ素症は時間とともに消失する。歯のフッ素症は口腔の健康認識に負の影響を与えない。