食品安全情報blog過去記事

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新しいIARC報告書は途上国に広がるカビ毒汚染への対応を強く求める

New IARC report urges action against widespread mycotoxin contamination in developing countries
http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2016/pdfs/pr242_E.pdf
IARCがBill & Melinda Gates財団の支援で招集した専門家ワーキンググループがアフラトキシンとフモニシンの健康影響についてレビューした。これらのカビ毒は急性中毒やがんの原因となるだけではなく、影響のある集団の子ども達の発育不全率の高さにも寄与する可能性が高い。さらにワーキンググループは途上国での暴露を削減するための効果的方法についても同定した。これらの助言は「中低所得国でのカビ毒コントロールMycotoxin Control in Low- and Middle-Income Countries」報告書として発表された。
Christopher Wild IARC長官は「この報告書は食品のカビ毒汚染問題に協調的国際対応が必要であることを強調する。その健康影響はあまりにも長い間無視されてきた。我々には改善の道具がある。今必要なのは政治的意志である」という。
サハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ、アジアの最も貧しい人たち約5億人が毎日ピーナッツやトウモロコシやその他の穀物を含む主食からアフラトキシンやフモニシンのような蔓延する天然毒素に暴露されている。これは人々や家畜が優良農業規範や規制などで守られている先進国と著しい対比をなす。
このような高濃度のカビ毒への暴露は病気や死亡を増やす。アフラトキシンはヒトの肝臓がんの原因で、アフリカやアジアでは急性中毒による死亡もおこっている。動物での影響や集団研究での根拠はアフラトキシンが小さな子どもの発育阻害にも寄与していることを示す。
世界中で1億6000万人の5才以下の子ども達が成長不良である。カビ毒コントロールの改善は広範な健康へのメリットがある、とIARCワーキンググループの座長J. David Miller博士は言う。「既にある知識と技術を使って、低所得国の食品のカビ毒汚染コントロールをすべきだ」
報告書
Mycotoxin Control in Low- and Middle-Income Countries
EDITED BY CHRISTOPHER P. WILD,J. DAVID MILLER, AND JOHN D. GROOPMAN
http://www.iarc.fr/en/publications/pdfs-online/wrk/wrk9/IARC_publicationWGR9_full.pdf
介入方法としては、最も健康に良い根拠がしっかりしているものが最も実行が困難なのもで、食生活を多様にすること。
他の対策としては作物の選別、保管を含む収穫後の一連の対策、南米のトウモロコシについてはnixtamalization(トウモロコシの加工方法)の最適化。
(先進国で流行しているオーガニックだのナチュラルだのといったものがカビ毒対策にとっては悉く悪手であることは認識すべき。)