食品安全情報blog過去記事

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畜産における抗生物質の使用効果に関するQ&A

Questions and answers on the effects of the use of antibiotics in livestock farming
21 January 2016
http://www.bfr.bund.de/en/questions_and_answers_on_the_effects_of_the_use_of_antibiotics_in_livestock_farming-128259.html
動物が病気になると薬で治療する必要がある。抗生物質は食品を生産する動物には特に獣医に処方されたときにだけ与えられる。
食品は消費者の健康を害する可能性のある残留物を含まない場合にのみ市販できる。畜産で抗生物質が意図した目的で使用される場合、規定の待機時間を守れば、食品にはその後有害な残留物はない。厳格な規制と管理のおかげで食品摂取による消費者の健康リスクは抗生物質の残留物に関する限り低い。
畜産での抗生物質の使用は耐性の発達と耐性菌の拡大を促進する。抗菌剤耐性とは病原菌がある種の抗生物質に反応しないことを意味する。しかしながら、畜産での抗生物質の使用がヒトの医薬品の耐性問題にどのくらい寄与しているのかは現在のところ推定できていない。
食品の生産過程で畜産由来耐性菌は肉や牛乳などの食品に移行することがある。耐性病原菌も食品や家畜と直接接触することで消費者に移行することがあり、ある状況下ではヒトの感染の引き金となりうる。治療が必要な時に投与された抗生物質の効果がなければ、耐性細菌の感染はより長く持続したり、より深刻になる可能性がある。
さらなる耐性の拡大を防ぐために、BfRは、畜産での抗生物質の使用は治療に必要な最小量を厳格に守るべきだという意見である。この場合、抗生物質による治療が最初の段階で必要とならないように動物の健康を維持する方法に的を絞るべきである。畜産の抗生物質の使用を最小限にするための概念はドイツ医薬品法(AMG) 第16回改訂で法に定められた。
抗生物質とは?畜産では何が使用されている?
抗生物質は細菌の感染を食い止めるために使用される。この種の感染の原因となる病原体は様々な方法で動物の群れに持ち込まれることがある。多くの動物が寄り集まって生活している場合には、病原体は群れを通して素早く広がることがあり、相当な損害となりうる。獣医はこの種の感染症を治し感染被害(病気、苦しみ、死)から動物を守るために農畜産物抗生物質を投与する。動物が集団でいる場合、同じ集団内の病気の動物から健康な動物への感染拡大を防ぐためにすべての動物に治療をするのが一般的である。
畜産で成長促進剤としての抗生物質の使用は2006年以降EUで禁止されている。以前は、たとえば動物の成長を向上するために使用されていた。
ヒトの医薬品と動物の医薬品に同じ抗生物質が使用されている?
多くの抗生物質は両方の医薬品に使用されている。このため、ヒトと動物の治療用に特に重要な抗生物質のリストは国際レベルで準備されている:
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/010/i0204e/i0204e00.pdf.
WHOはヒトの治療に関して2011年にこのリストを拡大した:
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/77376/1/9789241504485_eng.pdf

畜産に使用される抗生物質の量は?
獣医や獣医薬局が医薬品として供給する抗生物質の量は、この調査の初年度に当たる2011年の1706トン(t)から、2014年にはおよそ1238tに減少した。
これらの物質の多くは家畜に使用されているようだ。ほとんどの抗生物質グループで減少している。第三第四世代のセファロスポリン類とフルオロキノン系のグループだけが2011年と比較して明確な減少がなく、ヒトの医薬品として重要視されているフルオロキノロン系の使用が増加している。ドイツ消費者保護・食品安全庁(BVL)は投与量を報告している:
https://www.bvl.bund.de/DE/08_PresseInfothek/01_FuerJournalisten/01_Presse_und_Hintergrundinformatinen/05_Tierarzneimittel/2015/2015_07_28_pi_Antibiotikaabgabemenge2014.html
この変化はハノーバー医科大学で実施した、肥育用豚に何らかの抗生物質で治療した日数が2011年の半年間1ヶ所あたり約5日から2014年の半年間1ヶ所当たり約1日に減ったという、BfRの調査計画VetCAb-Sentinel(動物用抗生物質の摂取)の結果と一致している。これらのデータは抗生物質を処方するドイツの獣医の行動に変化が生じていることを示している。今後数年間この変化要因を調査することになっている。
全ての場合に動物用医薬品の使用を決めるのは、定期的に家畜の世話をしたり病気の動物の治療のために農業経営者に依頼されている獣医の責務である。最新版「抗菌効果のある動物用医薬品を慎重に利用するためのガイドライン」は連邦獣医審議会が2015年に最新版を発行した。
http://www.bundestieraerztekammer.de/downloads/btk/leitlinien/Antibiotika-Leitlinien_01-2015.pdf
獣医と農業経営者は食品生産用の動物の治療を記録しなければならず、数年間ファイルに文書を保存しなければならない。

抗生物質耐性とは?
細菌が特定の抗生物質に反応しなければ、これを抗生物質耐性と呼ぶ。以前はこの種の細菌を抑制したり全滅させたりしたのに、今は成長を抑制しないあるいは、程度が不十分でしかないことを意味する。細菌は様々なメカニズムで抗生物質に対して反応がなくなる(耐性がある)。
耐性細菌による感染はさらに治療しにくいため、より長引きより深刻になる恐れがある。

どの食品に抗生物質耐性細菌が含まれる可能性がある?
一般的には、耐性細菌は様々な食品に生じ存在する可能性がある。
食品生産過程では、畜産の耐性細菌が、例えば肉や牛乳といった生産された食品に移行する可能性がある。細菌は熱処理によって死滅する(ゆでる、焼く、揚げる、あぶる、低温殺菌する)。
実験では、肉の加工中に大量の細菌が台所用品に移る可能性があることが示されている。台所の衛生状態が悪いと、例えば、同じ皿を使用したり同じ台所用品に接したことで細菌が生肉からレタスに移行すると、生肉を通して一般家庭に耐性細菌が入り込み消費者が耐性細菌を摂取することになりうる。

畜産での抗生物質の使用が耐性細菌の広がりに担う役割は?
畜産で抗生物質を使用することで、耐性の発達、特に耐性細菌の広まる一因となることが想定されている。
研究により納屋や牛小屋で見つかった病原菌はフードチェーン全体に移行し、汚染された肉から一般家庭に入り込む可能性があることが発見された。十分な分析ではないが、畜産での抗生物質の使用がヒトの耐性の広がりにどの程度影響を与えるかが推定可能になった。
さらに耐性が高まるのを防ぐために、BfRの意見では、抗生物質の使用は治療のために必要な量に限るべきである。動物が治療を必要としないよう、真っ先に健康を維持するための努力をするべきである。

畜産で抗生物質耐性を減らす対策は発効している?
最小化対策の結果、多くの農業経営者と獣医はその責任で使用を減らすための努力をし、その結果獣医の抗生物質の供給量は明らかに減少するようになった。
医薬品法(第16回改正AMG)の改訂に伴い2014年4月以降、食品生産用の家畜を飼育する農業経営者は、ある一定規模以上なら、群れへの抗生物質の使用詳細を報告しなければならない。ほかの企業と比較してかなり多くの抗生物質を使用する企業は使用削減手段をとらなければならない。この法律で定められた最小化概念の目標は畜産での抗生物質使用の永続的な削減である。

消費者が食品中の耐性細菌から自身を守る方法とは?
原則として、消費者が食品に関する耐性細菌を防ぐために取ることのできる手段はサルモネラ菌カンピロバクター病原菌のような他の細菌を防ぐための手段と同じである。輸送、保管、食品調理中の衛生措置は抗生物質に耐性のある細菌にからも守る。そのため、生肉は消費する前に最低セ氏70度で少なくとも2分間加熱しなければならない。生肉を取り扱う際には細菌が手やナイフやまな板などの調理器具を通して他の食品に移行しないように注意を払う必要がある。
BfRは食品を取り扱うための最も重要な衛生規則をまとめた「消費者のヒント:一般家庭における食品感染症からの保護」という冊子を発行した。この冊子で提供される情報は耐性細菌と感受性細菌の両方にあてはまる:
http://www.bfr.bund.de/cm/350/verbrauchertipps_schutz_vor_lebensmittelinfektionen_im_privathaushalt.
pdf PDF-File (2.4 MB)

BfRは「チキンをどうする?」というタイトルの台所の衛生に関するビデオ映像も制作している。
http://www.bfr.bund.de/de/was_tun_mit_dem_huhn_-191706.html?current_page=1

残留抗生物質はどの食品に含まれる可能性があり、それはどのように食品に入り込むのか?
動物が抗生物質で治療されれば、肉、卵、牛乳などの動物から生産されるすべての食品に残留抗生物質が含まれる可能性がある。動物に抗生物質が投与されると、この動物から生産される食品は既定の待機時間内に市販されることはない。家畜生産用の医薬品が適切に使用されるなら、待機期間を過ぎれば食品中に健康上の懸念のある量の残留物が含まれることはない。

食品中の残留抗生物質は消費者に健康リスクとなる?
残留医薬品のある食品を摂取することによる消費者の健康リスクは低い。食品の最大残留基準の設定は食品を生産する動物で使用される医薬品の認可条件の一つである。食品中最大残留動物用医薬品基準は認可手続きで設定される。
消費者保護及び食品安全庁は国家残留物管理計画(NRCP)に沿って監視当局の残留物試験の年次概要を提供している。
http://www.bvl.bund.de/SharedDocs/Downloads/01_Lebensmittel/08_nrkp_erkp/nrkp2013_bericht.pdf?__blob=publicationFile&v=11

BfRは定期的にそれらの結果を評価し、一般人に利用しやすいようにしている。
http://www.bfr.bund.de/cm/343/ergebnisse-des-nationalen-rueckstandskontrollplanes-und-des-einfuhrueberwachungsplanes-von-2013-belegen-hohes-mass-an-sicherheit-bei-lebensmitteln-tierischer-herkunft.
pdf PDF-File (197.9 KB)

最大残留基準とは?
最大残留基準は食品に含まれる恐れのある物質の量である。この量が消費者に健康リスクを引き起こすことはない。
ドイツでは、連邦各州の食品監視当局が最大残留基準の法の順守を検査している。もしも超過したなら、その食品を売ることはできない。

オーガニック食品も抗生物質の残留物を含むことがある?
原則としてオーガニック農場で育てられた家畜も抗生物質で治療を受ける可能性があるが、オーガニック農業団体が出している多数の規則と同様に、EU規則で定義された、より広範な規制が適用される。現在オーガニック畜産での抗生物質の使用に関する信頼できる統計資料はない。

食品の残留抗生物質はいったん食品が加熱されると減る?
一般的に、摂取される食品は消費者の健康を損なう可能性のある残留物を一切含まない。加熱は必ずしも使用される物質や分解生成物を不活性化するわけではない。不活性化の程度は物質の種類による。