食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 公衆衛生:健康の社会的起源を追跡する

Nature書評
Public health: Tracing the social roots of health
Andrew Steptoe
Nature 531, 32–33 (03 March 2016)
Andrew Steptoeが英国の画期的出生コホート研究を称賛する
Helen Pearson の「ライフプロジェクト:我々の普通の生活の途方もない物語The Life Project: The Extraordinary Story of Our Ordinary Lives」の書評
英国の70年前に始まった出生コホート研究の歴史と遺産を描いた本。
最初は1946年に生まれた5362人の追跡研究(NSHD)。1958年に生まれた17000人を追跡したNCDS、1970年生まれの17000人についてのBCS70、2000-2002年の19000人についてはMCS、など。研究の科学的成果よりも研究をとりまく社会状況(資金確保に苦労したことやコホート参加者の人生など)を主に扱っている。

  • 脳のパワー

Natureエディトリアル
Brain power
02 March 2016
http://www.nature.com/news/brain-power-1.19475
脳刺激は非医療用に使われるようになったがその意味を考える時期である
昨年米国の神経外科医が3人の患者の奇妙な症状を報告した。頭痛、吐き気、足の衰弱、低血圧、転倒などの症状を訴える60代から70代の胸部X線撮影で問題がわかった。心臓用のペースメーカーと、パーキンソン病の特徴的な振戦を抑制するために脳に埋め込まれている電極の電源ユニットがあまりにも近くにあったのだ。機器が干渉していた。
脳深部刺激は10年以上治療に使われてきているが手術は高価で誰にでもできるわけではない。適応患者は少ない。より安価で簡単な脳刺激装置に関心が高まっている。
学術誌ではいくつかの症例報告があるが一部の人たちが自分で自分あるいは子どもに市販の製品を使い始めている。このDIY脳刺激には多くの神経科学者が警鐘を鳴らしている。害がある可能性があるからだが、他により根本的な倫理上の問題がある。依存や不安などの症状のためではなく、精神能力を向上させる目的で使いたい人たちが増えている。
運動能力を増すために薬物を使うことは顰蹙を買うが同じことが認知機能強化技術についても言えるだろうか?
(こんなサイトがhttp://www.diytdcs.com/
でもこんなのが話題になってたので日本のほうがやばいのかも。
http://www.jst.go.jp/coi/sympo/data/v2_2.pdf
Natureが心配しているのは一部の暴走、日本のは国を挙げての官民合同プロジェクト。)

  • 太ったマウスは肥満と大腸がんの謎を解く手がかりとなる

Natureニュース
Fat mice provide clue to obesity-colon cancer puzzle
Heidi Ledford 02 March 2016
http://www.nature.com/news/fat-mice-provide-clue-to-obesity-colon-cancer-puzzle-1.19484
肥満ががんリスクに寄与する背景には幹細胞の刺激が示唆される
太ったマウスは肥満のヒトと同じように大腸がんリスクが増えるが、本日Natureに発表された研究ではついに理由が示唆された。高脂肪食を与えられて太ったマウスは代謝を調節するタンパク質PPAR-δの活性化により腸の幹細胞が増えていた。

  • 研究のマネジメント:福島から5年

Natureコメント
Research management: Five years on from Fukushima
Masahiro Sugiyama, Ichiro Sakata, Hideaki Shiroyama, Hisashi Yoshikawa & Taketoshi Taniguchi
02 March 2016
http://www.nature.com/news/research-management-five-years-on-from-fukushima-1.19458
持続可能性と信頼を構築するために、日本のエネルギーと環境研究はより学際的で世界的にならなければならない、とMasahiro Sugiyamaらはいう
東京大学政策ビジョン研究センター。で、事故により原子力から再生可能エネルギーに転換するきっかけになった、みたいな記述に早速コメント欄で日本で実際におこっているのは化石燃料への復古であると突っ込まれている。)

Scienceニュース
Five years after the meltdown, is it safe to live near Fukushima?
By Dennis Normile Mar. 2, 2016 ,
http://www.sciencemag.org/news/2016/03/five-years-after-meltdown-it-safe-live-near-fukushima
日本の福島第一原子力発電所では日常への復帰への長く過酷な苦闘が続いている。作業員による悪名高い反応炉周辺の汚染した土地のクリーンアップは前進し、避難者は5年前に事故で封鎖された自宅へ帰ろうとしている。原子力発電所自体はまだ危険地帯であり作業員は溶けた燃料の位置を決めて取り除く複雑でリスクのある仕事を始めたばかりである。
2011年3月11日、マグニチュード9.0の地震が日本の北東部を襲い、40メートルの津波により15893人が死亡し2572人が行方不明になり127290の建物が破壊され100万人以上が被害をうけた。また福島でのメルトダウンを引き起こし原子力発電所から20km以内の15万人が避難しそれより遠くの地域も放射性降下物の影響を受けた。
現在核の避難者はジレンマに直面している:もとの自宅の放射能はどのくらいなら安全なのか?超人的努力により、当局はこれまで1時間当たり0.23マイクロシーベルトの戸外での被曝目標を目指して900万立方メートルほどの汚染土壌や葉をはぎ取り沿道の建物を洗浄してきた。昨年9月、政府は発電所から半径20km以内の7つの自治体の避難命令を一部または全部解除しはじめた。作業が進むにつれて当局は2017年の春までに避難者の70%は自宅に戻れるだろうと予想している。
しかし避難者は安全性と補償問題で引き裂かれている。多くの人が放射線暴露量がまだ高いと感じるのに自宅に帰らざるを得なかったと主張する。事故後に14000人が避難している南相馬市長Katsunobu Sakuraiは「放射線の教育がなかった。多くの人にとってこれらの放射線レベルが意味するものや何が安全なのかについて知らないまま戻ることを決めるのは難しい」という。一部の市民団体は政府と東京電力に、自宅に帰らないことを決めた人たちに補償を求めて裁判をおこしている。発電所近くの汚染の多い地域はずっと立ち入り禁止であろう。
(以下発電所内の燃料取り出しの課題関連、略)
当局がクリーンアップと住民の再定住に苦労している一方、一部の地域は自分たちで安全性を判断している。2014年には避難地域外の福島市の進取的な(enterprising)高校生のグループが国際放射線線量測定プロジェクトを始めた。福島県の6校、日本の他の6、フランスの4、ポーランドの8、ベラルーシの2の216人の学生と教師が2週間線量計をつけて活動について詳細な日記を記録した。このプロジェクトを考えた福島高校のスーパーサイエンスクラブの一員であるHaruka Onoderaは「私は自分の被曝量がどのくらいか、そしてそれが他の場所と比べてどうなのか知りたかった」と説明する。学生達は昨年11月にJournal of Radiological Protectionに知見を発表した。彼らの結論は「福島県に住む高校生の放射線暴露量は他の地域の人たちより多くはない」
これは福島市住人にとっては多分良いニュースだ、しかし発電所のより近くの家に戻ることを検討している避難者にとっては慰めにはならない。
(高校生偉いよね。)

  • 国際麻薬統制委員会2015年次報告書

INCB Annual Report 2015
Launched on 2 March 2016
https://www.incb.org/incb/en/news/AR2015/annual_report_2015.html

100 times more potent than Fentanyl, opioid W-18 is on the streets
March 2, 2016
http://www.vancouversun.com/health/times+more+potent+than+fentanyl+opioid+streets/11757024/story.html
1980年代初期にアルバータ大学の実験室でエドモントンの科学者たちがびっくりするような性能の合成オピオイドを発見した。これはW-18と呼ばれ、近年カナダで何百人もの過剰使用による死亡の原因と非難されている処方鎮痛薬フェンタニルの100倍強力だった。
実際にヒトで調べられることはなく製薬会社から注目されることもなくこの発明は30年間忘れられていた。
突然W-18が復活して騒動を巻き起こしている。カナダや海外の業者がオンラインで販売して出回っている。中国の工場で合成されていると考えられている。
昨年8月にカルガリー警察が20錠の錠剤を押収しヘルスカナダに提出していた。その結果が12月に出た。その中にW-18があった−オキシコドンと偽装していたが。このことが警察を動揺させた。