食品安全情報blog過去記事

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メディア報道と科学的評価の乖離が消費者の疑いを招く

Divergence between media reporting and scientific assessment leads to scepticism among consumers
01.03.2016
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2016/10/divergence_between_media_reporting_and_scientific_assessment_leads_to_scepticism_among_consumers-196773.html
農薬や有効成分であるグリホサートの健康リスク認識についての「BfR消費者モニタースペシャル」調査の結果が発表された
食品の生産に農薬が使用された場合、そのような製品は消費者の評判が悪い。2016年2月にBfRが行った代表調査でこれが確認された。回答者の約半分が(農薬を使うと)食品の安全性と質が全体として低下すると信じている。この低下の理由として農薬と農業の工業化をあげている。「インタビューした1/3が特にメディアで報道された尿と母乳にグリホサートが検出されたことを特に心配している」とAndreas Hensel BfR長官は述べた。「最新の解析では実際には母乳からグリホサートは検出されていない。科学的視点からは、尿中に微量あるのは予想される。規制値以内の残留は認められているので食べられている可能性があるからだ」この点からは最近のビールからのグリホサートの検出も意外ではない。一般的に食品への農薬の使用とそれによる残留は規制機関により認められている。一方回答者の2/3は食品に残留は認められていないと考えている。
調査対象は代表性のある1000人。2010年に農薬についての調査を行ったとき、多くの消費者が規制値までの残留農薬が認められていることを知らなかった。BfRは2013年に始まったグリホサートの認可更新に関する議論があったため2016年2月に再び農薬について調査した。その結果農薬についての間違った想定(食品に残留農薬は禁止されている)がまだ一般的であることがわかった。さらにドイツ人の多くは農薬を使って作った食品は有害で安価で、農薬無しで作った食品は健康的で美味しくて高いという意見を持っている。
調査では消費者が農薬の知識を得るのは主にメディアからであることも確認した。約70%が過去2年間で農薬についてメディアから聞いたり読んだり見たりしていたが何が話題だったのかを覚えているのは半分だった。回答者の1/4は農薬のトピックスを一般的であいまいな用語でしかとらえておらず、1/4は何が報道されたのか全く覚えていない。健康リスクについて議論していたメディア報道を覚えていたのはたった9%である。
農薬を使うことのリスクとベネフィットについて尋ねたところ2/3はリスクのほうが大きいと答えた。この信念に従って65%が残留農薬を含むまたは疑う食品を避けると言った。つまり多くが残留農薬には批判的である。
しかしながら認められた残留のある食品は健康影響に関しては安全である。人や動物が僅かな残留農薬、例えばグリホサート、を摂取している可能性があるのは事実である。しかしグリホサートは速やかに排泄され尿にも検出されることが予期される。これらの濃度は健康に有害影響が出るような量より遥かに少ない。分析方法の進歩によりますます微量の、個々の分子レベルまで、物質が検出できるようになった。たとえばダイオキシンは1960年の検出限界は1ナノグラム(10-9 g)だったが2010年には1フェムトグラム(10-15 g)以下である。
農薬の規制に関しては80%以上が農業業界や消費者同様消費者団体やNGOが重要な役割を果たすことを望んでいる。国や欧州レベルで法的義務を負っている政府当局がこの分野で重要だと考えているのは70%超程度だった。
この結果は人々には農薬の科学的リスク評価の基本や結果について、将来的により包括的な情報を与えられる必要があるというBfRの見解をさらに補強する。