食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 個人的体験談が絶望した患者を幹細胞ツーリズムに誘い出す

Personal testimonials lure desperate patients into stem-cell tourism
Mar 29 2016
http://www.afr.com/lifestyle/health/mens-health/personal-testimonials-lure-desperate-patients-into-stemcell-tourism-20160328-gnsrlo
医療情報の伝達に、小さいけれど不愉快なシフトがおこっている。
メルボルンのMonash大学の社会学教授Alan Petersenはいう。
かつては医療情報は医療の専門家が主に提供するものだった。しかしWeb 2.0の技術により、自分の経験を語る患者や特定の病気についてのオンラインコミュニティからの情報が増えている。個人の体験を語る読みやすいブログは検証されたものではなく科学的正確性は不明である。時に動画もアップロードされる。堅い医療サイトがそのようなものと競合するのはますます難しくなっている。
幹細胞療法のような議論の多い治療法を受けた患者がメディアに取り上げられるとソーシャルメディアが拡散し患者コミュニティを作り上げさらに大きなスケールで情報を共有する。かつては個人的集団のなかで共有されていた物語が今はよりたくさんの聴衆を獲得する。その話の一部は本当だろうが一部は過剰に楽観的で大きな期待を抱かせる。幹細胞治療ツーリズムは科学ではなく期待により突き動かされる産業である。世界中に誇大広告が溢れ毎日のように画期的成功が報告されるにも関わらず、幹細胞で効果があることが証明された治療法は極めて限定的なものである。しかし根拠がないことはツーリズムを止めることはない。
(長い記事。患者向けに学会から提供されている情報への紹介もある)

Rumours about contaminated food land Sask. man in handcuffs
CBC News Posted: Mar 29, 2016
http://www.cbc.ca/news/canada/saskatoon/la-ronge-mischief-contaminated-food-1.3511620
食品を検査したところ噂が嘘だと判明した
3月28日、La Rongeカナダ連邦警察に地元の業者から通報があった。警察によると、その人は誰かが従業員に食品に針が入っていると語ったと主張した。問題の製品は野菜や果物や肉や焼いた製品であった。警察はMamawetan Churchill River Health Regionに通知し、調査したところその苦情は事実無根だと決定した。Health Regionの発表によると、念のためLa Ronge, Sucker Riverおよび Stanley Missionの店の言及された食品が排除された。捜査の結果Stanley Missionの48才の男性が逮捕された。

Natureエディトリアル
Honey trap
29 March 2016
http://www.nature.com/news/honey-trap-1.19641
心理学は放縦の原因にもなるが我慢するのにも役立つ
あなたの食器棚からチョコレートがこぼれていたり、イースターエッグが残っていたりフォンダンの詰まったバニーを見たらどう思う?食べたいと思う気持ちと食べてはいけないと言う気持ちが湧き上がるだろう。我慢できたら立派だし、我慢できなかったとしてもあまり強い罪悪感を感じる必要はない。単に人間として感じる当然のことだから。あなたはハムレットで、食べるべきか食べざるべきかについて悩み苦しんだのである。
心理学者はこの手の心理的苦痛を接近・回避型葛藤と呼ぶ。結果は二つに一つだが決定に至る認知的プロセスは振動する。極めて人間的に、どんな決定をしてもこの努力はストレスになり結果には満足できない。依存の理論の一つにこの押すか引くかのダイナミクスの重大なバランスの悪さが示唆されている。このバランスを取り戻すことはできるのか?一部の研究ではできる。アルコール依存症患者での研究で葛藤を象徴する身体的行動−アルコールの写真遠ざけて小さくするあるいは近づけて大きくする−で飲酒量を減らすように操作できることが示唆された。同じことがチョコレートでも有効か?そしてより大規模に肥満危機に対応できるか?英国などが砂糖税を導入したが心理学的後押しで我々の甘党を減らせるか?一部の研究ではできることが示唆されているが別の研究では矛盾する。いつものように、さらなる研究が必要である。ある研究ではこんな文言でボランティアを募っている:「あなたはチョコレートが好き?誰がそれを避けられる?」

  • 砂糖税は市場の失敗を甘くする

Natureワールドビュー
Sugar tax could sweeten a market failure
29 March 2016
http://www.nature.com/news/sugar-tax-could-sweeten-a-market-failure-1.19646
英国が砂糖入り飲料に課税すると発表した。各国はさらに二酸化炭素排出量の多い食品を標的にすべきだ、とAdam Briggsは言う
健康キャンペーン団体や政治観察筋は英国の最新予算に驚いた。砂糖入り飲料を製造している企業に課税するという形で砂糖税を発表した。
これはこれまでしばしば企業よりと批判されてきた保守政権の歓迎すべき動きである。このことは政治家や役人が助言を聞き入れ砂糖が規制の必要な公衆衛生の問題であることを認識したことを意味する。この税は公衆衛生や世界のソフトドリンク産業だけでなく、食品に関する市場の失敗に政府が対応できることを示す可能性がある。
砂糖税は既にメキシコ、フランス、ハンガリーフィンランドなどで導入されていて南アフリカ、フィリピン、インドネシア、インドなどが検討していて英国が初めてではない。ハンガリーフィンランドは他の健康的でない食品にも課税している。
世界中の科学者や健康活動家や政治家は英国の人々やソフトドリンク企業の反応を注視している。(既に法的手段に訴えるという報道がある)英国は減塩で国際的リーダーとしての評判が高い。
(以下税の仕組みの話、略)
二酸化炭素排出量の多い食品に課税することは健康にも地球環境にも利益があるだろう。明確な開始点は赤肉である。我々のグループの研究では気候税は5-45%の価格上昇と最大20%の消費減をもたらし英国の二酸化炭素排出量を年に1900万トン相当減らす。砂糖は良い出発点であるがより高いところを目指すことができる。
(いきなり世界で最も環境負荷の高い和牛に火の粉)

  • またオーガニック農場がだれかを殺した−今度は未殺菌ミルクで

Another Organic Farm Has Killed Someone – This Time With Raw Milk
Posted on March 29, 2016 by Hank Campbell
http://acsh.org/news/2016/03/29/another-organic-farm-has-killed-someone-this-time-with-raw-milk/
ペンシルベニアのMiller’sオーガニック農場の未殺菌チョコレートミルクを買ったフロリダの人がリステリア症で死亡した、皮肉なことに免疫系を強くするだろうより「ナチュラル」なものを摂取していると考えて。
食中毒は殺菌のおかげで一世紀前より減った。科学のおかげで、我々はミルクを高温処理すると大腸菌やリステリアやサルモネラカンピロバクターのようなものが殺せることを150年前に学習した。かつては乳製品はたくさんの病気の原因だったが今はワクチンと殺菌のおかげで健康が改善した。それなのにミルクによる避けられる病気がファッションを理由に一部で復活している。一部は年長者に逆らうヒップスターで、年寄りが予防接種や天然ガスや貧しい人たちのための食べものを容認するなら、それはクールじゃないに決まっている。1864年のような髭を生やしてその時代以降の科学を学ばないことは、彼らと同年代の若い学者にとっては極めて煩わしい。他の人たちは反科学で殺菌やワクチンやGMOは自然ではない。未殺菌ミルクは21世紀の今でも他の食中毒の3倍の入院の原因で殺菌したミルクの13倍のアウトブレイクをおこしている。幸い一部の少数の集団だけに留まっているが死亡者がでたにも関わらずさらに多くの州が未殺菌ミルクの販売を認めるようになっている。間違った信念を抱いた自由主義者たちによる政治的勝利で。
未殺菌ミルクを売ってお金を儲けようとする人たちは、オーガニックマーケティングと同じような組織的キャンペーンを行い同じようなナンセンスを売る。未殺菌ミルクは乳糖不耐を減らすとか免疫系を強化するとか。科学は長くそれらを否定してきた。
実際には嘘の否定は難しい。アトランティスが海に沈んでいるとかワクチンが自閉症の原因だとか信じている人たちは「全ての意見を聞くべき」とか「議論があることを教えるべき」という。奇妙な信念を持つことは人類の多様性という喜ばしいことだろう。しかしロシアンルーレットが好きなのでなければ未殺菌ミルクを買うべきではない。
(ヒップスターサイエンスのイラストとノンGMO認証マークをつけたヒマラヤの塩の写真)
この記事で紹介されていたのが以下の科学ミュージアムでの疑似科学イベント

ヒューストン科学ミュージアム疑似科学が輝く
Pseudoscience To Shine At Houston Science Museum
By Kevin M. Folta | March 27th 2016
http://www.science20.com/kevin_folta/pseudoscience_to_shine_at_houston_science_museum-168974
ヒューストン科学ミュージアムが科学技術を否定し疑似科学にお墨付きを与えるイベントを後援する。2016年3月29日にヒューストン自然史博物館がTheirry Vrain博士の講演「我々の食品の中の毒とそれによる我々の身体へのダメージ」を後援する。Theirry Vrain博士はGMO反対活動をしているもと分子生物学者。
コメント欄でこのイベントのキャンセルが伝えられている。
http://store.hmns.org/(X(1)S(grzhy5zjfprr4dy2upllpj55))/DateSelection.aspx?item=2865
ヒューストン科学ミュージアムがTheirry Vrain博士に彼の講義の中心テーマについての科学的根拠を提示するように求めたところ、それが無かったので場所を変えることになった。従ってヒューストン科学ミュージアムはこのイベントとはもはや関係がない。18ドルのチケットを購入済みの人には返金する、とのこと。
(一応科博の面目は保ったようだ)