食品安全情報blog過去記事

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その他

  • なぜ私達は発酵食品が好きなのか

Why We Love Fermented Foods
by Berkeley Wellness | April 18, 2016
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/nutrition/article/why-we-love-fermented-foods
何千年もの間、世界中の人々が食品を保存目的で発酵させてきた−そして発酵により風味やテクスチャーが変わることを発見した。
(写真はキムチ)
微生物を働かせる
(ヨーグルト、キムチ、ケフィア、味噌、醤油、納豆、魚醤、臭豆腐、等はいいが昆布茶kombucha(紅茶キノコ)そんなに人気なのか)
発酵食品の利益
「発酵食品」が実際にはそうでないとき
基本
発酵食品は発酵していないものより消化しやすく栄養豊富である傾向があり、健康的な食生活の一部となりうる。しかしそれだけで一部の人が主張しているような病気を予防したり治療したりはしない。さらに発酵食品は非常に多様なので、その健康への影響は一般化できない。ヨーグルトやその他の発酵乳製品などはサラミなどのような発酵食品より全体としてより良い可能性が高い。納豆や味噌や漬物を含む多くの発酵食品はナトリウムがとても多いため、あるかもしれない健康影響を打ち消すだろう。また漬物野菜には利益とリスクの両方があるだろう。もし可能ならナトリウムの少ないものを選び、何事もほどほどに、を忘れずに。

  • スペシャルレポート:如何にしてWHOのがん機関は消費者を混乱させているか

Special Report: How the World Health Organization's cancer agency confuses consumers
Mon Apr 18, 2016  LONDON | By Kate Kelland
http://www.reuters.com/article/us-health-who-iarc-special-report-idUSKCN0XF0RF
WHOの後援で働いている科学者のおかげで、あなたはあなたの歯ブラシがあなたをがんにしないことを確信できる。あるWHOの機関は、40年以上で989の物質や活動、ヒ素から理髪まで、を評価してきて、ヒト発がん性ではないだろうとしたのはたった一つである。それは歯ブラシの毛や伸縮性のあるヨガのパンツに使われるナイロンの成分である。そして残り988物質は、WHOの傘下のIARCによると、なんらかのリスクがあるかさらなる研究が必要か、である。IARCの分類の最上ランクにある発がん物質のいくつかは明らかにイヤなもので、プルトニウムマスタードガスや喫煙などである。他にはびっくりするようなものもある、木材ダストや中国風塩漬け魚である。
IARCによると塗装工として働くことはがんの原因で、携帯電話を使うとがんになる可能性があり、パイロットやナースのようなシフト労働は「おそらく発がん性」である。昨年10月には加工肉をプルトニウムと同じトップカテゴリーにした。この発表は恐怖を引き起こし、少なくとも科学者ではない人たちはIARCのランキングの意味について戸惑った。
がんは世界中で年に800万人以上を殺し新たに1400万人が罹る病気で、その世界的権威としてIARCの影響は絶大で、批判者の間ですら敬意を払われている。しかしながら大学や企業や公衆衛生の専門家はIARCは人々と政策決定者を混乱させている、という。ある物質が発がん性かどうかというIARCの検討方法とコミュニケーションの方法は欠陥があり改革が必要であるという批判者もいる。
IARCを管轄しているWHOですら、加工肉と赤肉の発がん性の発表には不意打ちを食らった。WHOの公式広報担当者Gregory HartlはWHOのジュネーブ本部に分類についての質問や要望が多数寄せられたという声明を発表した。IARCの判定は、人々が肉を食べるのを止めるべきだということを意味しない、と彼は言う。
IARCとWHOの関係について尋ねられたHartlはReutersに対して「WHOはIARCと緊密に継続的に作業して、公衆のリアルなおよび可能性のあるハザードとリスクの知識について、二機関の協力とコミュニケーションを改善していく」と述べた。
判断には何百万人の人々の命と各国や多国籍企業の経済活動が掛かっている。IARCの判定は多くのことに影響する。しかしその方法はあまり理解されておらず公共の利益に役立っていない、と国際疫学研究所の生物統計部長で先のアメリカNCIの統計学者Bob Taroneは言う。IARCのやりかたは「科学にとって良くなく、規制機関にとって良くない。そして人々にとっては?ただ混乱させられている」
IARCで19年間働いてきて遺伝学と疫学チームのトップになり現在は米国Mount Sinai 医科大学にいるPaolo Boffettaは、自分自身をIARCの「強力な支持者」としながらもIARCのアプローチは、その判断が自分自身や同僚の研究をレビューする専門家の判断に依存するためしばしば「科学的厳密さscientific rigor」に欠けるという。
一部の機関は既にIARCと衝突している。現在IARCはEFSAとグリホサートを巡って激しい論争をしている。IARCはグリホサートを「おそらく発がん性」といい、EFSAはそうでないという。グリホサート騒動はIARCでの利益相反への懸念につながった:IARCに米国の農薬反対キャンペーン団体であるEnvironmental Defense Fundと密接な関係のあるアドバイザーが関係している(参照)。
この批判に直面してIARCはその方法と目的を強固に主張した。「この方法は可能な限り最強のプロセスである」とIARCの分類計画部長Kurt Straifは言う。IARCの長官Chris WildもIARCを科学雑誌で擁護する。雑誌の一つに書いた手紙で、この分類に関与した科学者は「ヒトのがんの原因を同定することで予防に寄与し公衆衛生を向上させようという望みに動機づけられている」という。
King’s College Londonのがん政策とグローバルヘルスのRichard Sullivan教授は、混乱の原因はIARCの役割についての広まっている誤解である、という。「IARCは純粋に科学をやっていてその科学は素晴らしい。しかし純粋科学と政策や公衆衛生のためのメッセージは違う。そこに問題がある」という。
IARCはその始まりから複雑だった。フランスの主導で生まれ、もともと独立した予算の多い機関だった。その後ほどほどの予算でのWHOの自立した一機関になった。リヨンにあるIARCは2014年の収入は約3千万ユーロ(3400万ドル)で、英国の慈善団体Cancer Research UKは約8億7500万ドル、米国の政府機関NCIは49億ドルである。その財政的限界にもかかわらずIARCはパイオニアで世界を主導する権威だと自認している。何かががんの原因だとするその発表は政治家や公衆の耳目を集める。
評価をするためにIARCは既存の科学文献をレビューする専門家グループを招集し、5つのカテゴリーのうちどれかに分類する。この報告書は「モノグラフ」と呼ばれる。
一般の人々はIARCの分類をしばしば誤解する。IARCは「ハザード」を評価している−その物質や活動がなんらかの条件でがんをおこすかどうかにについての根拠の強さを。それはヒトが通常どのくらい暴露されているのかを考慮しない。だから「リスク」は考えていない。
Albert Einstein医科大学のがん疫学者でIARCを公に批判しているGeoffrey Kabatは、この分類は公衆にとって「役にたたない」という。「人々が知りたいことは、健康に明らかに影響のある私達の身近にある物質は何か?であって極めてありそうにない特殊な条件で理論的に影響があるかもしれないかどうか、ではない。」IARCの発表を報道したメディアの中には明らかに間違っているものがある。Huffington Postは「肉は新しいタバコ」と報道しDaily Mailは「健康主任が加工肉をタバコと同じレベルにした」と報道した。
IARCの見解ではそのような解釈は誤解を招くものである。StraifはReutersに対して混乱の原因は企業や活動家やメディアのせいである、と語った。IARCが馬鹿げていると思わせたい活動家やセンセーショナルなものが好きなメディア。
「反科学でなくてもあまい」
批判者の中にはIARCのモノグラフの問題は報道される前からある、という人たちもいる。「専門家グループ」の構成がしばしばその物質の研究をしてきた人たちである。例えば2012年から2015年の間にIARCは18のモノグラフを発表あるいは開始し314人の科学者が関与した。Reutersの分析ではそのうち61人が自分の研究を評価している。この解析には同僚の研究者は含まない。
このような人々が「最良の判断者」であることに疑問が提示されている。IARCのStraifはワーキンググループのメンバーは「世界で最良の専門家」からなると主張する。「自分の研究を一番よく知っているのが自分や同僚で、彼らは自身の研究を批判的に見ることができると強く信じている」。IARCのきまりでは著者や同僚は直接自分の論文を評価することはできないので中立性は確保されている、という。しかしそれは「反科学とまではいかないがナイーブ」だと国際疫学研究所のTaroneはみなす。「自分自身の関心や名声、キャリアに関してバイアスがないとみなすのはおろかである。それは悪意ではなく単に人間の性質である」
(さらに肉の評価についてもいろいろ記述されているが略。IARCの会議を見ていた人の、期待していた科学的厳密さはなくがっかりしたという話やWHOがIARCをコントロールできていないという批判も。非常に力の入った記事。)

  • グリホサートバトル:何故異なる欧州機関ががんについて異なる結論になったのか

Glyphosate battles: Why different European agencies came to different cancer conclusions
Andrew Porterfield | April 18, 2016 | Genetic Literacy Project
https://www.geneticliteracyproject.org/2016/04/18/glyphosate-battles-different-european-agencies-came-different-cancer-conclusions/
これは極めて普通でない、けんかである。
EFSAの長官Bernhard UrlがEFSAの決定に抗議する文書に公開で署名した科学者たちを「フェイスブック科学者」と非難したとき、反GMOコミュニティは大騒ぎした。IARCのグリホサートの「おそらく発がん性」という決定を称賛した反GMOコミュニティはEFSAの決定を非難した。グリーンピースの食品政策担当官Franziska Achterbergは「EFSAの結論は農薬企業を喜ばせるものであるが他の全ての人にとって悪いニュースである。EU諸国がEFSAに従うなら全ての農薬が安全とみなされるだろう」と書く。
しかしさらなる調査の結果IARCはNGO利益相反に浸食されていることが明らかになった。
この普通でない挑発的意見交換はEFSAとIARCのアプローチの相当な違いを明らかにした。
まず最初にIARCは規制機関ではなくハザードを同定するのみである。そのためどんな量でもその物質ががんをおこす可能性のみを考える。EFSAやその他のリスク評価機関と違って実際のリスクは評価しない。しかしこの違いが多くの人には理解されない。
二つ目はIARCは現在発表された学術論文とみなされるもののみを見る。独自の研究は行わず、メンバーとなった科学者はIARCの事務局が用意した論文のみをレビューすることを認められる。他の機関は企業が製品登録のために作ったデータも含めて評価する。
過去10年のIARCのレビューがどのように行われたかをレビューすると、IARCが他のほとんどの規制機関の仕事とどれだけかけ離れてきたかがわかる。
IARCモノグラフはワーキンググループや委員会が作るが、メンバーは約10ヶ国の約20人からなる。メンバーと座長はIARC事務局が選び特定の化合物や行動についての結論を出すことを要請される。1971年以降900ほどのものをレビューし「発がん性ではない」とされたのはたった一つで、400以上が「おそらく」「多分」「発がん性」とされている。
2005年にIARCのアプローチを見直すための委員会が設立されその報告書によるとIARCは定量的リスク評価を用いる可能性を保留し出版されていないどんな研究も排除した。そして多くの批判を浴び既に取り下げられたセラリーニのラット腫瘍研究をグリホサートモノグラフに認めている。2014年の委員会の報告書ではハザード評価とリスク評価について検討し、モノグラフワーキンググループに定量的リスク評価を求めることは主目的から離れることになると結論している。それからIARCのレビュー対象を選ぶ委員会がグリホサートやアトラジンを選んで大麻やパイプタバコを外した。
Christopher Portierとは誰?
これらの委員会に共通して議長だったのがChristopher Portierである。その時には開示されていなかったがPortierは同時にEnvironmental Defense Fundの上級コンサルティング科学者だった。IARCがPortierのEDFとの関係を開示したのは2015年で、それまではIARCは彼を国立環境健康センターにもと努めていたあるいはリタイヤしたとしか書いてなかった。一方でEDFの上級科学者としては2014年にIARCで働いていると宣伝しセラリーニのグリホサートによるラット腫瘍論文の取り下げに反対を表明している。
IARCの議長は委員会の結論に大きな力をもっている。議長がメンバーを選びどの論文を評価対象とするのかを決める。
PortierとIARCと EFSAは規制やハザード評価の基準として「予防原則」の極端な解釈を使い続ける。「予防原則」はもともと60年代後半に政府が大気汚染や比較的新しいハザードに取り組み始めた頃が起源である。基本としては「安全性が確認されるまで有害とみなす」、だがこの定義の規制への使用はEUと他の工業国を区別しただけでなく環境活動家や反GMO団体が政治活動をする道を拓いた。