食品安全情報blog過去記事

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植物油と食品の加工汚染物質

Process contaminants in vegetable oils and foods
3 May 2016
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/160503a
グリセロールベースの加工汚染物質はパーム油に含まれているが、ほかの植物油、マーガリンやいくつかの加工食品にも含まれ、すべての若い年齢集団での平均的な摂取者に、またすべての年代の多量摂取者に健康の懸念を生じる恐れがある。
EFSAはこれらの物質の公衆衛生リスクを評価した:グリシジル脂肪酸エステル類(GE)、3-モノクロロプロパンジオール(3-MCPD)、2-モノクロロプロパンジオール(2-MCPD)及びそれらの脂肪酸エステル。これらの物質は食品加工中に、特に高温(約200℃)で植物油を精製する際に形成される。
最も多量のGEや3-MCPD、2-MCPDエステル類を含む)はパーム油とパーム脂肪に含まれ、その他の油と脂肪がそれに続く。3歳以上の消費者にとってはマーガリンと「ペストリーとケーキ」が全物質で主な暴露源だった。
グリシジル脂肪酸エステル類―遺伝毒性発がん性
EFSAの食品チェーンの汚染物質に関する専門家パネル(CONTAM)はGEのリスク評価のために、摂取後にすべてのエステルがグリシドールに変わると仮定して、グリシドール(GEの親化合物)の毒性に関する情報を検討した。
CONTAM パネルの議長であるHelle Knutsen博士は述べた:「グリシドールに遺伝毒性と発がん性があるという十分な証拠があるため、CONTAM パネルはGEの安全量を設定しなかった。」
食品チェーン内に意図せず存在する遺伝毒性発がん性物質を評価する際に、EFSAは消費者の「暴露マージン」を計算する。一般的に暴露マージンが高くなると消費者の懸念は低くなる。
パネルは、平均的に暴露しているすべての若い年齢集団に、またすべての年齢集団で大量暴露する消費者に、GEは健康の懸念となる可能性があると結論した。
「乳児用粉ミルクだけを摂取している赤ちゃんのGEへの暴露は特に懸念となる、公衆衛生上の懸念が低いと考えられる量の最大10倍になるからだ」とKnutsen博士は述べた。
生産者の自主対策により、パーム油と油脂のGEの量は2010年から2015年の間に半減したとパネルのレビューは明らかにした。このことはこの物質の消費者暴露の重要な減少に貢献している。
3-MCPDへの暴露は安全量超過:2-MCPDのデータは不十分
動物実験でこの物質が臓器障害に関連しているという根拠に基づき、私たちは3-MCPDとその脂肪酸に0.8マイクログラム/ 体重kg/ 日(µg/kg bw/day)の耐容一日摂取量(TDI)を設定した」とKnutsen博士は説明した。彼女はさらに、「しかしながら2-MCPDの安全量を設定するには毒物学的情報があまりにも限られている。」
青年(18歳までの)を含む若い年齢集団の両方の形の3-MCPDの平均的及び高摂取群の推定暴露量はTDIを超え、健康の懸念となる可能性がある。
パーム油はほとんどの人にとって3-MCPD と 2-MCPD暴露の主な要因である。植物油の3-MCPDとその脂肪酸エステルの量はこの5年間以上ほとんど変わっていなかった。
今後は?
リスク評価者はEUの食の安全性を規制する欧州委員会や加盟国のリスク管理者に情報を提供する。彼らは食品中のこれらの物質の暴露による消費者への潜在的なリスクの管理方法を検討するためにEFSAの科学的助言を使用するだろう。パネルはデータギャップを埋め、これらの物質、特に2-MCPDの毒性や、食品を通した消費者暴露に関する知見を改善するために、さらなる研究のための助言も行っている。

Scientific opinion on risks for human health related to the presence of 3- and 2-monochloropropanediol (MCPD), and their fatty acid esters, and glycidyl fatty acid esters in food
EFSA Journal 2016;14(5):4426 [159 pp.]. 3 May 2016
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4426
EFSAは食品中の遊離およびエステル化した3- 及び 2-モノクロロプロパン-1, 2-ジオール(MCPD)とグリシジルエステルに関する科学的意見を求められた。3- 及び 2-MCPDグリシドールエステルは加工植物油の汚染物質である:遊離MCPDsはいくつかの加工食品に形成される。食品チェーンの汚染物質に関するパネル(CONTAM パネル)は7,175の食品中濃度データを評価した。3- 及び 2-MCPDエステルとグリシジルエステルはパーム油/ 油脂に高濃度で見つかったが、ほとんどの植物油/ 油脂は相当量を含んでいる。総3-MCPD、2-MCPDグリシドールの検出限界値未満の濃度を検出限界の半分とした場合(MB)の平均食事暴露値は、年齢集団により一日あたり体重当たりのマイクログラムで、それぞれ、0.2–1.5、0.1–0.7 、0.1–0.9の範囲で、高摂取群では(P95) は0.3–2.6、0.2–1.2 、0.2–2.1だった。動物実験から経口投与後のエステル化された3-MCPDグリシドールは強く加水分解されることが示されたので、エステル化体と遊離体は内部暴露に同等の貢献をすると想定された。3-MCPDで処理されたラットに腎毒性が一貫して観察された。2-MCPDの毒性に関するデータは用量反応評価には不十分だった。グリシドールの慢性的な投与は、ラットとマウスのいくつかの組織で腫瘍の発生を増やし、遺伝毒性の作用機序に従う可能性が高い。パネルは3-MCPDにはラットの尿細管過形成誘発の0.077 mg/kg 体重/日をベンチマーク用量信頼下限値(BMDL)10 とし、耐容一日摂取量(TDI) 0.8 μg/kg体重/日を導出した。3-MCPDへの平均暴露量は「乳児」「幼児」と「その他の子供」ではTDI以上だった。グリシドールについては、ラットの発がん性影響のT25値である10.2 mg/kg体重/日を選定した。暴露マージン(MoEs)は平均及びP95暴露で各年齢集団でそれぞれ11,300–102,000 と4,900–51,000の範囲だった。粉ミルクだけを摂取している乳児用の暴露シナリオはMoEs 5,500(平均)と2,100 (P95)という結果だった。MoEsは25,000以上なら健康の懸念は低いとみなす。
(注:BMDL10なら通常10000のところT25なので2.5倍必要という理由)