食品安全情報blog過去記事

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FAQ

Frequently asked questions
JMPR 事務局
16 May 2016
http://www.who.int/foodsafety/faq/en/
食品の残留農薬に関する健康リスクとは?
農薬は昆虫、菌類、雑草、他の病害虫から作物を守るために農業で使用される化学物質である。農業での使用に加えて、農薬は、蚊などの熱帯病の媒介生物を抑制し公衆衛生を守るためにも使用される。
だが、農薬はヒトにも毒性がある可能性がある。それらはがん、生殖毒性、免疫系や神経系の影響を含む有害健康影響を引き起こす可能性がある。使用が認可される前に農薬はすべての健康影響の可能性を検査しなければならず、ヒトへのあらゆるリスクを評価するために専門家の分析を受けなければならない。

「ハザード」と「リスク」:その違いは?
農薬のような危険な化学物質の健康影響への可能性についての科学的研究は、それらを発がん性(がんの原因となりうる)、神経毒性(脳の損傷の原因となりうる)、催奇性(胎児に傷害を与える原因となりうる)、などに分類することを可能にする。「ハザード同定」と呼ばれるこの分類作業は、「リスク評価」の第一段階である。ハザード同定の例は、WHOの専門的がん機関である国際がん研究機関(IARC)が実施したヒトへの発がん性による物質の分類である。
一人の人間がどのくらいの量の化学物質に暴露されるかにより、同じ化学物質が様々な影響を持つ可能性がある。それは例えば飲み込む、吸入、注射など、その暴露経路にもよる。
WHOが「ハザード同定」と「リスク評価」の2つを区別する理由は?
「ハザード同定」―特に発がん性に関するIARC分類は−「リスク評価」の最初の段階である。ある物質を発がん性ハザードがあると分類することは、例えば職業、環境、食品などからの、ある濃度での暴露はがんのリスクを増やす結果となりうることを示す。
国連食糧農業機関世界保健機関合同残留農薬会議(JMPR)が行う食品の残留農薬リスク評価は、リスクの程度を評価して安全な摂取量を設定する。許容一日摂取量(ADIs)は、食品の農薬の最大残留基準(MRLs)を設定するために、政府やFAO/WHO合同食品規格委員会などの国際リスク管理者によって使用される。消費者が生涯にわたり食品を食べることで暴露する残留農薬の量で有害な健康影響がないことを確認するために国家当局はMRLsを履行している。
IARCのハザード同定はJMPRのリスク評価に情報を提供することができ、そのためこの2つのプロセスは相補的でありうる。例えば、IARCは化学物質の発がん性に関する科学的研究から新しい証拠を同定することがあり、必要があればJMPRは農業で使用され、食品に残留する化学物質の安全性の評価や再評価を行う。
JMPRの専門家はどのように選出される?会議には専門家が何人参加する?
全てのJMPRの専門家は農薬リスク評価分野での経験や科学的専門分野に基づいて選出され、公開呼び出しに関心を示すとJMPR専門家登録者から選出される。化合物数と必要とされる専門知識の範囲により、一回のJMPRの会議におよそ15〜35人の専門家が参加する。
利益相反問題をJMPRはどのように考える?
WHOとFAOにはJMPRの作業に加盟国から委任された専門家たちが関わっている。全員大学や国の機関で働く専門家である。
政府機関で働いている人を含む全ての専門家は、彼らの政府や組織の代表としてではなく、彼ら自身の立場でJMPRに貢献している。国のレベルで申請に関わっている専門家はJMPRでは同じ申請を担当することはない。
大学で働く専門家は研究計画を支援するために企業からたびたび助成金を受け取る。WHOは注意深くすべての専門家の利益申告を検査しており、JMPRの検討課題の化合物と関連するコンサルタント業務を行う人や専門家の中立性を害する恐れのあるほかの形式の経済関係がある人を除外する。
2016年5月に発表されたダイアジノン、グリホサート、マラチオンに関するJMPRの結論は2015年に発表されたIARCのハザード分類に矛盾している?
いいえ。JMPRはその評価の中で、IARCのデータと解釈を踏まえて検討している。
IARCとJMPRの作業は補完的ではあるが異なり、それぞれの機能は公衆衛生へのハザードの可能性を確認し、その後そのようなハザードへのリスクの程度を評価する一連の作業として見ることができる。
IARCはがんのハザードの可能性を確認するために発表された研究をレビューする。そのハザードの暴露に関連する集団への「リスク」は推定しない。一方JMPRは食品の残留農薬への食事暴露に関連する消費者の健康リスクの程度を評価するために、発表されたものと未発表の両方の研究をレビューする。
ダイアジノン、グリホサート、マラチオンの場合、IARCのモノグラフ112巻はその3つの成分をハザードの視点から「おそらく発がん性がある」と分類した。IARCモノグラフはこの3つについて特定の暴露経路や暴露量によるがんリスクを推定していない。
JMPRのリスク評価では、証拠の重みづけアプローチに基づき、これらの化合物の食事暴露は人々のがんの原因となりそうもないということが分かった。このことは消費者の安全暴露量―許容一日摂取量(ADI)―を設定することが可能であることを意味する。人々がこれらの残留物の許容一日摂取量を超えて暴露しないことを確保するために、政府が農薬と作物の組み合わせについて最大残留基準を設定する、多くの場合コーデックス委員会が推奨する最大残留基準に従っている。
IARCはその3つの成分が遺伝毒性の可能性からも、おそらく発がん性があるとしたが、一方JMPRは遺伝毒性がないとした。どうして違いがあるのか?
遺伝毒性と考えられる化学物質は、細胞の遺伝情報を変えてがんにさせる物質である。
IARCのモノグラフ112巻は遺伝毒性に関するすべての入手可能な発表された研究を考慮した。そのうちのいくつかはヒトへの妥当性や食事からの暴露量で異なる。
JMPRは、入手可能な非常に多くの研究から、その3つの化合物への食事暴露に関連した健康リスクを評価する中で、ヒトと経口暴露にとって最も妥当なものを重視した、すなわち生きている(“in vivo”)哺乳類での経口暴露の影響を調べたものである。JMPRはカイマン(ワニ)のようなヒトからかなり離れた種での、経口でない研究は重視しなかった。このレビューは予想される食事暴露で遺伝毒性ではなさそうだという結論となった。