食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 食事中脂肪と死亡リスクへの専門家の反応

expert reaction to dietary fats and risk of death
July 5, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-dietary-fats-and-risk-of-death/
異なる種類の脂肪摂取と死亡率の違いを調べた研究がJAMA Internal Medicineに発表された。彼らは脂肪の種類により総死亡や原因特異的死亡率に異なる関連を報告した。
ケンブリッジ大学MRC疫学ユニットNita Forouhi博士
現在の食事中脂肪を巡る議論の中で、この大規模研究は飽和脂肪を多価不飽和脂肪に交換することの健康上のメリットについてのしっかりした観察的根拠を提供する。研究による根拠の総合性を検討するには継続した努力が必要であるが、この研究は総脂肪摂取量より脂肪の種類を強調した食事ガイドラインを薦める強い事例になるだろう。飽和脂肪の影響についての違いを埋めるためのさらなる研究も必要である。
この研究の重要な結果は飽和脂肪への注目で紛れてはならない。この研究はこれまで提示されてきた植物油に含まれるオメガ6脂肪酸であるリノール酸への疑いを晴らすしっかりした根拠を提示する。この研究をきっかけに異なる種類の脂肪の影響についての理解が進むことを期待する。脂肪については明確なガイダンスを作る努力が必要であろう。
食品研究所名誉フェローIan Johnson博士
この経験のある信頼できる研究者グループによる大規模で厳密な観察研究は食事からの脂肪摂取と米国男女の死亡リスクを検討している。食事については最大30年繰り返し評価し結果は他のライフスタイル要因などで補正してある。
この知見は比較的飽和脂肪量の多い食事は不飽和脂肪の多い食事に比べて高い死亡率と関連することを示す。注目すべきは総カロリー摂取量のわずか5%の飽和脂肪(約15g)を不飽和脂肪に交換することが心疾患やがんやその他の原因での死亡リスクが27%低いことと関連することである。
これらの知見は現在の公衆衛生助言と一致する。
最近通常の食事助言である飽和脂肪より不飽和脂肪を薦めることが間違っていたという主張や本が人気であるが、この研究はバランスを取り戻す。バターが良いということはない。
Reading大学栄養と健康准教授Gunter Kuhnle博士
最近食事ガイドラインを巡る議論が多い。特に脂肪を悪者扱いするのはやめるようにという要請が(代わりに炭水化物を悪者扱い)。これらの議論にはしばしば現行の食事ガイドラインには根拠がないという主張が伴う。このようなアプローチは人々を混乱させるだけでなくしっかりした助言から遠ざける。食生活は重要な変えられるリスク要因で、個人への影響は小さくとも国全体にとっては大きな影響がある。そのため食事ガイドラインにはしっかりした根拠が必要で、それは大規模研究の結果を定期的に見直すことによってのみ達成できる。この最新の研究はこの根拠に寄与でき、将来の決定に情報を提供するだろう。12万人以上を30年ほど観察したもので概ね現行のガイドラインを確認する。しかし重要な限界もある。脂肪や炭水化物にはいろいろな種類があり、この研究では飽和脂肪と不飽和脂肪を区別しているがまだ十分詳細ではない。また食事調査は自己申告でありバイアスの可能性がある。

  • パスタ摂取がBMIの低さと関連するという研究への専門家の反応

expert reaction to study reporting that pasta consumption is associated with lower BMI
July 5, 2016
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-reporting-that-pasta-consumption-is-associated-with-lower-bmi/
Nutrition & Diabetesに発表された観察研究でパスタ摂取がBMIの低いことと関連があると報告された
Reading大学栄養と健康准教授Gunter Kuhnle博士
著者らが使った食事評価方法は多くの観察研究で用いられている手法で主に自己申告に頼っている。これには当然限界がある。しかしこの方法は何年も成功していて幾分かは限界への対策方法もある。しかしながらこの文脈で「パスタ摂取」はそれだけ抜き出して見ることはできず、食事のパターンの一部であることを理解することが重要である。この研究ではパスタを多く食べる人は地中海風食生活に従っている人でもある。地中海地方での研究なので驚くべきことではない。
しかし興味深いことはこれらの結果は炭水化物を悪もの扱いするのは間違っていることも明確に示しているこの結果はバランスのとれた食生活を薦める現在の食事助言を確認する。