食品安全情報blog過去記事

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  • ふたつのサイトの物語:アルツハイマー治療薬を巡る科学コミュニケーションの落とし穴

Tale of two sites: Science communication pitfalls covering Alzheimer’s drug
Nicholas Staropoli | July 27, 2016 | Genetic Literacy Project
https://www.geneticliteracyproject.org/2016/07/27/tale-two-sites-science-communication-pitfalls-covering-alzheimers-drug/
7月27日のNew Scientistの記事は「前代未聞のアルツハイマー治療薬が80%もこの病気を遅らせた」という見出しで、STATの記事は「期待されたアルツハイマー治療薬は新しい試験で失敗し、希望は打ち砕かれた」だった。それだけではない。Daily Mailは「革新的一日二回の錠剤がアルツハイマー病の進行を遅らせ、びっくりするような回復の兆候すらみせる」で、ニューヨークタイムスは「アルツハイマー治療薬LMTXは臨床試験最終段階でつまづく」、BBCニュースは「薬はアルツハイマーによる脳死を「遅らせるかもしれない」」だった。どうしてこうなった?何故こんなに違う?その答えは科学コミュニケーションとジャーナリズムに長い間蔓延っている問題の核心にある。
問題の研究はLMTXの第三相臨床試験で、LMTXはタウタンパク質の凝集を阻害する。その結果がトロントアルツハイマー学会国際会議で薬の所有者であるTauRXの研究者により発表された。この試験では890人の軽度から中程度のアルツハイマー患者が参加し、多くは既に他の治療薬を使用している。結果は複雑で混乱したものだった。全体としてはLMTXは最初の目標を達成できなかった。しかし患者のうちで他の薬を使用していない人で病気の進行が遅くなった。
New ScientistはTauRxの関係者から話を聞きSTATはこの研究に参加していない神経科学者から話を聞いて記事を書いている。関係者から話を聞くことが悪いわけではない。実際を知っているのは彼らだ。利益相反はあるが利益相反はTauRx側だけにあるわけではない。タウタンパク質はアルツハイマー研究にとって原因と信じる人と信じない人(ベータアミロイド派)の間に大きな議論がある。つまりほぼ全ての人に利益相反の可能性がある。
では一体誰を信じればいいのか?理想的にはデータを信じることだ。残念ながら疑問を解消するのに決定的なデータはない。そしてそのような問題があるのはアルツハイマー病だけではない。
TauRXのデータは予備的なものでさらなる研究で理解が深まるだろう。最終的にどうなるかはわからないが、現時点で「革新的」や「大失敗」と呼ぶのは誇張だろう。

'Herbal Viagra' and 14 other supplements may increase disease risk
July 28, 2016 · FoxNews.com
http://www.foxnews.com/health/2016/07/28/herbal-viagra-and-14-other-supplements-may-increase-disease-risk.html
コンシューマーレポートの調査により、現在市販されているサプリメントの一部は、がんや心停止や臓器傷害のリスクを増やす可能性があることが明らかになった。問題の成分はオンラインやWalmart, CVS, GNC, Costco およびWhole Foodsなどのような主要小売店で販売されている。
独立した医師や研究者による分析で15のサプリメント成分が消費者の健康にリスクとなる可能性があると同定された。FDAは食事成分やサプリメントを規制していないしリスクの方が想定されている利益より大きいことを示唆する研究がますます増えている。
問題成分は:トリカブト、カフェイン粉末、チャパラル、フキタンポポコンフリー、ジャーマンダー、クサノオウ、緑茶抽出物粉末、カバ、ロベリア、メチルシネフリン、ペニーローヤル油、紅麹、ウスニン酸、ヨヒンベ
もとの発表はこちら
常に避けるべき15のサプリメント成分
15 Supplement Ingredients to Always Avoid
By Consumer Reports July 27, 2016
http://www.consumerreports.org/vitamins-supplements/15-supplement-ingredients-to-always-avoid/
(有害であることがかなり前から指摘されているものが多い中に緑茶抽出物が入っているのが感慨深いというか。しかもリスクはめまい、耳鳴り、鉄の吸収低下、貧血と緑内障の増悪、血圧と心拍の上昇、肝障害、死亡の可能性、とある)

  • 幹細胞療法はまだほとんど理論的なものなのに、クリニックは花盛り

Stem Cell Therapies Are Still Mostly Theory, Yet Clinics Are Flourishing
Gina Kolata JULY 28, 2016
http://www.nytimes.com/2016/07/28/upshot/stem-cell-therapies-are-still-mostly-theory-yet-clinics-are-flourishing.html?_r=0
最近の報告によると過去2-3年で米国で幹細胞療法を行っているクリニックは570もある。どんな病気にでも根拠のない幹細胞治療が提供されている。これらのクリニックではウェブサイトで幸せになった患者の体験談などを宣伝している。FDAは認めていないし学会も警告している。
(長い記事)

Fentanyl overdoses not limited to street users, B.C. health officials warn after recent death
July 28, 2016
http://vancouversun.com/health/local-health/overdose-kills-surrey-drug-user-on-welfare-wednesday-despite-widespread-harm-reduction-efforts
Fraser HealthはSurreyの住人が自宅で過剰使用して死亡した最近の事例をうけて、薬物使用者に対してフェンタニルが広く流通していることに警告
主任医務官Victoria Lee博士が死者の詳細については伏せながら自宅で過剰使用してSurrey記念病院で死亡したと言った。この死亡は2週間前のフェンタニル入りクラックコカインに関連する大量の過剰使用に次いでおこっている。クラックコカインユーザーだけがリスクがあるのではない。ヘロイン、コカイン、アンフェタミン、エクスタシーにフェンタニルが混入されているものがみつかっている。
Surreyでは2016年上半期の薬物過剰使用による死亡は44人で地域全体では371人である。事例の60%からフェンタニルが検出されている

  • HPVワクチンへの出資でより広範なアクセスと保護−専門家の反応

SMC NZ
Wider access and protection with HPV vaccine funding – Expert reaction
July 28th, 2016.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2016/07/28/wider-access-and-protection-with-hpv-vaccine-funding-expert-reaction/
Pharmac(ニュージーランドの医薬品への公的保険適応を決める政府機関)がHPVワクチンGardasilの男の子への接種にも資金提供を拡大しもっと多くのHPVをカバーするようワクチンのタイプを変える。
パブリックコメントを経て発表した。2017年1月からHPVワクチンは26才までの全ての子どもと成人に接種できる。また学校での予防接種計画に男の子も含まれる。さらにワクチンはより少量でより多くのウイルス系統をカバーするよう変更する。同時に全ての子どもに子ども予防接種計画での水痘ワクチンに資金を提供する。
SMCは専門家の反応を集めた
(略。5人の専門家が公衆衛生の進歩を歓迎)

  • 欧州の新しい科学助言団に会う

Scienceニュース
Meet Europe's new science advice brigade
By Tania RabesandratanaJul. 28, 2016
http://www.sciencemag.org/news/2016/07/meet-europes-new-science-advice-brigade
船頭多くして船山に上るという諺がある。多すぎるアドバイザーは助言をダメにするか?
そうではない、と昨年一人が長を努めた主任科学アドバイザーの役割に置き換わった欧州委員会の新しい科学助言機構(SAM)の7人の科学者が言う。
ScienceInsiderが取材
欧州委員会の歴史上最初で最後の主任科学アドバイザーだったAnne Gloverが欧州委員会に雇用されていたのに対してSAMは彼らの主な仕事は継続し、欧州委員会が彼らに支払うのは毎年最低40日分である。欧州委員会には多くの助言委員会があるがSAMは政策の上位レベルにあるという。委員会の要請でSAMは6月に5ページのグリホサートの一見矛盾する根拠についての「説明文」を作成した。彼らがこの文をつくるのに6週間かかったがどの機関の評価も推薦しなかった
Glyphosate
https://ec.europa.eu/research/sam/index.cfm?pg=glyphosate
(ただ経緯をまとめただけの文書。判断の役にたたないと思うけど。実際全然話題になっていなかった)

  • Science 29 July 2016  Vol 353, Issue 6298

英国のEU離脱とトルコの大学の苦難が特集されている