食品安全情報blog過去記事

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ANSESは3歳以下の子供の食事を精査する

ANSES scrutinises the diet of children under three years of age
30/09/2016
https://www.anses.fr/en/content/anses-scrutinises-diet-children-under-three-years-age
本日、ANSESは3歳以下の子供の多数の物質への食事暴露についての初の概要を発表する。実際、幼児のトータルダイエットスタディ(iTDS)では、赤ちゃんと幼児の食事の95%以上をカバーしおよそ670物質を分析した。この研究では、毒性参照値に関して高水準の健康管理を確認し、評価された物質のほとんどでリスクが除外できた。だが、いくつかの点で特別に注意する必要がある:リスクが除外できなかった物質あるいは物質類の中で、優先的に考慮する必要がある9つを含む16で暴露を減らす必要がある (例えばヒ素のような重金属、あるいはPCBsのような難分解性有機汚染物質)。ANSESはそのため、幼児集団のこれらの物質への暴露を減らす手段を助言し、詳細リスク評価用にさらなる知見を得るよう推奨している。
この研究の知見に照らし、ANSESは、国家健康及び栄養計画(PNNS)の助言に従う重要性と、特に6か月未満の乳児には乳児用粉ミルク以外の食事を導入しないよう、その後いろいろな種類と産地の食事を与えるよう強調している。さらに、ANSESは乳児の需要は母乳と乳児用粉ミルクだけで満たせると繰り返し述べた。生産する動物種に関係なく普通のミルクは1歳以下の子供の栄養としてふさわしくない。
ANSESのトータルダイエットスタディ(TDS)は食品に存在する非常に多くの物質への暴露を監視することを目的としている:残留農薬、環境汚染物質、加熱副生成物、自然毒、添加物、微量元素、ミネラルなど。
本日、ANSESは第三回TDSの結果を発表した。今回は3歳以下の子供の食事、データが少なく特定の食品を摂取する感受性の高い集団、を取り上げている。子供の食事を精査した結果、約670物質を分析し、そのうち400のリスクを検討した。国際レベルでも、これは3歳以下の子供に着目したこのようなスケールでは最初の研究である。
高水準の健康管理、だがいくつかの物質は監視すべき
乳児のTDSの結果から、食品中にありうる化学汚染物質に関し、高水準で健康リスクが管理されていることが確認された。実際に、評価された物質の90%でリスクを除外できた。
だが、9つの物質には、事態は特別な警戒が求められている。無視できないほどの人数の子供たちが毒性参照値を超える暴露にさらされている物質がある(無機ヒ素、鉛、ニッケル、PCDD/Fs、PCBs、T-2 & HT-2マイコトキシン、アクリルアミド、デオキシニバレノールとその誘導体、フラン)。他の7つの物質、特にアルミニウム、コバルト、ストロンチウムメチル水銀、セレン、カドミウム、大豆摂取者のゲニステインで、リスクを除外できない。これらの16物質のうちいくつかの暴露はすでにANSESのこれまでの作業で懸念として認識されていた。
栄養上の関心となる12のミネラルもiTDSの枠組みで分析された。概して必要栄養量は満たされているという結果が示された。だが、子供の年齢によっては亜鉛、カルシウム、鉄の摂取不十分と、亜鉛とカルシウムの過剰摂取が指摘された。これらの過剰摂取に関する潜在的な健康リスクにはさらなる研究が必要である。
ANSESの助言
これらの知見に照らして、ANSESは食品中にこれらの化学物質が存在する原因をさらに理解する重要性を繰り返し述べた。
懸念ありとされる9物質を含む16物質の監視に関し、暴露量を減らすことを目指す管理手段が確率され強化されるべきである(環境への放出を管理する政策、工程管理、規制値の設定あるいは削減)。リスクが除外できないあるいは評価できない物質に関しては、ANSESは追加の知見を入手するよう助言する。
この研究から、乳児用粉ミルクを摂取するよりいろいろな食品を食べることのほうが、必ずしも懸念される暴露量ではないが、ある種の汚染物質により多く暴露されることが示されていて、ANSESは国家健康と栄養計画(PNNS)の助言に従って6か月になってから食事を与え始めることの必要性を強調している。6か月を過ぎたらいろいろな種類と産地の食品を与えるよう、ANSESは一般的な助言を繰り返し述べた。
研究では1歳以下の子どもの一部が通常のミルクを摂取していることも明らかにした。ANSESは母乳と乳児用粉ミルクだけが乳児の需要をカバーできると繰り返し述べた。通常のミルクは、生産する動物種に関わらず、1歳未満の子供たちの栄養要求に適さない。

幼児期の食事―ANSES、動画サイトVimeo (フランス語)

展望
この研究の枠組みで得た汚染物質と暴露のデータは、特に混合物暴露と複合暴露の問題について、現在進めている作業に情報を提供している。
iTDSとその結果は、特に今後の評価作業で、ANSESの今後の展望を多数同定している。
まず第一に、パリ公共病院システム(AP-HP)と協力して実施したCONTA-LAIT研究は母乳の汚染物質に関するiTDSの結果を補足し、フランスで母乳で育てることについての利益とリスクを評価するのに役立つだろう。
さらに、ANSESはナノ粒子製品に関するリスクを調べる必要性を強調している。この問題について、ANSESは子供と成人両方の食品に存在するナノ物質に関するリスク評価作業にまもなく着手する予定である。
化学物質の「内分泌かく乱」影響の問題は食品リスク評価の主な課題でもある。ANSESは適切な研究プロジェクトで、関係者である第3次全国環境及び健康行動計画(PNSE3)と国家内分泌かく乱戦略(SNPE)の枠組みで実施される作業同様、特定物質の内分泌かく乱の特性に関するデータを得るための作業を続けるだろう。
最後にANSESは、食品に存在する化学物質への(及び新興の懸念のある新しい物質への)食事暴露の概要を示すトータルダイエットスタディ戦略的価値に注目し、それにより消費者の暴露量の公衆衛生の観点から関連する知見を提供する。

追加情報
・宣伝資料2016年9月28日―ANSESは3歳以下の子供の化学物質への食事暴露に関する研究結果を提示する
Press kit dated 28 September 2016 - ANSES presents the results of its study on dietary exposure of children under three years of age to chemical substances (Soon in English)
https://www.anses.fr/fr/system/files/PRES2016DPA09.pdf
・ANSES意見と報告書―幼児のTDS Volume 1―ANSESの意見―概要と結論(フランス語)
ANSES opinion and report - Infant TDS Volume 1 - ANSES opinion - Summary and conclusions (in French)
https://www.anses.fr/fr/system/files/ERCA2010SA0317Ra.pdf
・ANSES報告書―幼児のTDS Volume 2-パート1−方法、制限、不確実性(フランス語)
ANSES report - Infant TDS Volume 2 - Part 1 - Methods, limits and uncertainties (in French)
https://www.anses.fr/fr/system/files/ERCA2010SA0317Ra-Tome2-Part1.pdf
・ANSES報告書―幼児のTDS Volume 2-パート2−無機化合物 (フランス語)
ANSES report - Infant TDS Volume 2 - Part 2 - Inorganic compounds (in French)
https://www.anses.fr/fr/system/files/ERCA2010SA0317Ra-Tome2-Part2.pdf
・ANSES報告書―幼児のTDS Volume 2-パート3−有機化合物 (フランス語)
ANSES report - Infant TDS Volume 2 - Part 3 - Organic compounds (in French)
https://www.anses.fr/fr/system/files/ERCA2010SA0317Ra-Tome2-Part3.pdf

・ANSES報告書―幼児のTDS Volume 2-パート4−農薬の結果 (フランス語)
ANSES report - Infant TDS Volume 2 - Part 4 - Results for pesticide residues (in French)
https://www.anses.fr/fr/system/files/ERCA2010SA0317Ra-Tome2-Part4.pdf

(報告書はフランス語だけれどかなり膨大なデータ。光開始剤とかBPA代用品とか各種ステロイドテルルゲルマニウムまである)