食品安全情報blog過去記事

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論文

Use of dietary supplements remains stable in US; multivitamin use decreases
11-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/tjnj-uod100716.php
JAMAに発表された全国を代表する米国成人のサプリメント使用に関する調査では1999-2012の間、成人の半分以上がサプリメントを使用していることに変わりはないがマルチビタミンの使用は減少した。これまでの研究では1980年代から2000年代半ばまでは使用者が増えていた。
Trends in Dietary Supplement Use Among US Adults From 1999-2012
Elizabeth D. Kantor, PhD1; Colin D. Rehm, PhD2; Mengmeng Du, ScD1,3; et al
http://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2565748
エディトリアル:サプリメントパラドックス−メリットはほとんどない、たくさんの摂取
Editorial: The Supplement Paradox - Negligible Benefits, Robust Consumption
http://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2565733
ダイエタリーサプリメントにはビタミンやミネラル、植物、プロバイオティクス、プロテインパウダー、魚油など広範な製品がある。過去20年間、ダイエタリーサプリメントの健康上の利益を評価した質の高い研究が概ね残念な結果に終わり続けている一方で有害であるという根拠は蓄積し続けている。このような科学の発展に消費者がどう反応してきたかはわかっていない。JAMAの今号でKantorらがこの重要な疑問に光をあてた。
Kantorらの研究結果の文脈を理解するには、この研究の前の規制上の変化を理解するのが役にたつ。1980年代後半、男性の36%女性の48%がビタミンやミネラルやその他のサプリメントを使用していた。1994DSHEA通過でそれがさらに増加した。この法律により市場にサプリメントが溢れ、1994年には4000と推定されていたのが2012年には55000にサプリメント製品数が増加した。
Kantorらが調べた1999年から2012年はサプリメントの健康影響についての研究が盛んにおこなわれた時代である。NIHは年に2億5000万ドルから3億ドルをダイエタリーサプリメント研究に費やした。多くの大規模臨床研究が発表されたが、その結果は概ね健康への有用性を示すのに失敗だった。特に有名なのはマルチビタミンのがんと心疾患予防効果、エキナセアの風邪、セントジョーンズワートの大鬱、ビタミンEの前立腺がんなどである。
同時にサプリメントの健康リスクの理解が深まった。1990年代後半から2000年代初期にかけてエフェドラを含むサプリメントが突然死を含むたくさんの重大な有害イベントと関連することがわかった。2002年までに国の中毒センターはエフェドラ中毒に関する電話を年に1万件以上受けていた。さらに長期使用によるリスクもわかってきた。例えばベータカロテンサプリメントは喫煙者の肺がんリスクを増やす。
もちろん全てのサプリメントに有効性の根拠がないわけではない。ビタミンやミネラルの欠乏症にはサプリメントは有効である。しかし特定の状態を治療するのに有効なものであってもしばしば過剰使用されている。そして医師の指導によりサプリメントを使用している人は約1/4である。多くの成人にとってサプリメントはほとんどメリットがない。
サプリメントに関するネガティブな研究と安全性への懸念がサプリメントの使用を減らしたかどうかを調べてそうではなかったというのがKantorらの発見したことである。米国成人のサプリメント使用は一定だった。いくつか注目すべき変化はある。例えばマルチビタミンの使用が37%から315に減った。2006年にグルコサミンコンドロイチン関節炎介入試験(GAIT)のネガティブな結果が発表された後のグルコサミンとコンドロイチンの使用は同じだった。オメガ3やリコペンビタミンD、プロバイオティクスは増えている。全体として研究の知見は個々のサプリメント使用に弱い影響を与えるようだがサプリメント全体の使用には影響がない。
何故消費者は質の高い研究でプラセボと同じことがわかってもサプリメントを使い続けるのか?一つの要因は単に消費者がこれらのネガティブな結果を知らないからだろう。この場合医師は患者に情報提供すべきだろう。消費者の中には科学的プロセスを信頼しない人もいるだろう。もう一つの要因はこれらの知見がこれまでずっと言われてきた十分なビタミンやミネラルを摂るべきだという教えに逆らうように見えることだろう。食品からではなく錠剤から摂るのはメリットがない、と医師は患者に再確認しよう。
3つめの要因はサプリメントの膨大な宣伝である。サプリメントには「これらの宣伝はFDAが評価したものではない。この製品は病気の診断や治療、予防を意図したものではない」と表記しなければならないが消費者の理解にはあまり影響していないようだ。
さらに法律では新しい質の高い研究がサプリメントプラセボに意味のある差はないと示されても製造業者は古い質の悪いデータに基づき宣伝を続けることができる。例えばイチョウがそうである。
この新しい解析の結果からは、医師は全ての患者に医薬品とサプリメントの使用を尋ねその病気がサプリメントの有害影響でないかどうかを検討する必要があることが示される。
またたとえ質の高い研究であってもサプリメントの使用にあまり影響を与えないことを考えると、今後の努力は規制改革と消費者に正確な情報を提供することに集中すべきである。

Calcium supplements may damage the heart
11-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/jhm-cs101016.php
Journal of the American Heart Associationに発表された研究によるとサプリメントとしてカルシウムを摂ることは動脈のプラーク蓄積と心臓傷害リスクを上げるかもしれない、一方カルシウムの多い食品は保護的であるかもしれない。Multi-Ethnic Study of Atherosclerosisのデータの詳細解析。研究者らはこの研究はカルシウムサプリメントの使用とアテローム動脈硬化の関連を記しただけで因果関係を証明したものではないと注意する。しかしながらこの結果はサプリメントの有害影響に関するますます増加する科学的懸念を付け加えるものであり、カルシウムサプリメントを使用し始める前には知識のある医師に相談することを強く薦める。

  • 英国の年次がん症例は20年以内に50万人に急増するだろう

Annual UK cancer cases set to soar to half a million in less than 20 years
11-Oct-2016
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-10/cru-auc101116.php
British Journal of Cancerに発表されたCancer Research UKの研究
現在英国では毎年352000人ががんと診断されているが20年後はさらに15万人増えるだろう。最も多いのは女性の乳がんと男性の前立腺がんと予想される。