食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

2015年農薬データ計画(PDP)年次要約書Q&A

2015 Pesticide Data Program (PDP) Annual Summary Q&A
November 2016
https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/PDP2015AnnualSummaryQ%26As.pdf
Q:2015年年次要約書の主な結論はなにか?
A:PDP要約書によると、概して、食品の残留農薬は米国環境保護庁(EPA)が設定したトレランスより低く、消費者の健康にリスクとならないということである。
Q:この年次要約書の目的と価値は何か?
A:USDAが毎年発表している農薬データは、規制担当者、科学者、農家、加工業者、製造業者、及び消費者に広く食す食物についての残留農薬の実際の量について重要な知見を与える。EPAは食事リスク評価を行うため、及び食物の残留農薬が安全な水準であることを保証するために、PDPのデータを利用する。
USDAはまた農業の実際と残留農薬の関係をよりよく理解し、USDAの総合的病害虫雑草管理の方針をよりよくするため利用する。USDAは農業方法を改善するため、栽培者と一緒にデータを利用する。USDAは米国から輸出されるものの安全性を示すため貿易相手国とPDPデータを共有する。結果が示していることは、多くの栽培者が総合的病害虫雑草管理において古い農薬の代わりに新しいより安全な農薬を組み込むことに成功しているということである。
Q:成果はどうだったか。
A:2015年のデータ要約書によると、食品に残留農薬が見つかる場合、EPAによって設定されたトラレンスをほとんど毎回下回っている量である。2015年検査された検体の99%はEPAが設定したトラレンスをはるかに下回る残留量で、15%は残留農薬が検出されなかった。設定されたトラレンスを上回る残留物は検体の0.53%(10,187検体中54)に検出され、検体のうち3.9%(10,187検体中394)には検査した特定品目に対してトラレンスが設定されていない残留農薬が検出された。ピーナツバターに関しては、トラレンスを超える残留物も、トラレンス設定のない残留物も検出されなかったことをデータは示している。
Q:いくつの検体が採取されたのか?
A:PDPは総計10,187の検体を検査した。検査した商品は生鮮および加工フルーツと野菜(9,872検体)及びピーナツバター(315検体)である。データは米国の様々な州から一年を通して集められ、検体は米国全体を代表するものである。
Q:子供にとっても買った食品は安全か?
A:はい、PDPのデータとEPAの評価に基づき、いくつかの検体に見られた少量の農薬は健康リスクとはならない。米国食品医薬品局(FDA)は残留農薬は乳児や子供にとって懸念するリスクはないと結論した。
Q:トラレンス基準とは何か?
A:トラレンスは生の農産物1について許容される残留農薬の最大の量である。もし、農薬が作物に使用されれば、EPAは食品中に残っている、もしくは、表面に付着している可能性のある農薬のトラレンスを設定する。トラレンスを設定するとき、EPAは農薬使用に対してヒトの健康や環境に対するリスクを評価するためにハザードや曝露のデータを評価する。様々な食品、水、家庭環境をとおして曝露される農薬に対して、安全な評価を出す必要がある。PDPのデータはEPAの農薬曝露の食事評価における重要な構成要素である。
Q:検体に残留物があるが、EPAによって設定されたトラレンスがない場合どうなるのか?
A:FDAEPAによってトラレンスが設定されていない残留農薬を含む検体は連邦食品医薬品及び化粧品法違反であると考える。FDAは今後のコンプライアンス活動の参考としてこの情報を利用する。例えば、今後の輸入により厳格な審査をする、標的を絞った検査を行う、輸入警告措置を行ったりするような活動である。2015年データで、FDAPDPデータを評価し、EPAと話し合い、即時の健康リスクはないと結論を出した。トラレンス基準のない検体の残留物の量は極めて低く、検体全体の3.9%に見られたということを頭に置いておくことは重要である。
Q:検体にEPAのトラレンスを超える残留物があるときはどうするのか?
A:PDPは、FDAEPA残留農薬の検査についてマンスリーレポートを提出し、検出された残留物がEPAのトラレンス基準を超えるか、もしくはEPAが設定したトラレンスがない場合にはFDAに通知している。PDPの結果が異常なもので、安全性を脅かす可能性がある場合には、FDAEPAに即時報告される。
Q:PDPは水も検査するのか?
A:PDPは2001年から2013年にかけて自治体のシステムから引かれた飲料の未浄化水と処理済水を検査した。検体は29の州とコロンビア特別区から採取された。PDPはまた、(
2007年から2013年)地下水とボトル飲料水も検査した。PDPの水の調査は予算の制約
のため2013年に中止になった。
Q:なぜ、PDPはグリホサート(除草剤)のような農薬を検査しないのか。
A:USDAとEPAは、EPAのデータの必要性に基づいて、検査する食品を共同で特定する。EPAPDPのデータを使って食事リスク評価を行い、食品の残留農薬は食品安全リスクがないと確認する。残留グリホサートは今のところPDPが検査する農薬ではない。現在、FDAが残留グリホサートを調べるため、とうもろこしや大豆穀物を検査している。FDAのグリホサート残留物検査はEPAが追加のデータを必要とするかどうか決めるのに役立つ結果が得られるだろう。FDAの結果が利用できるようになれば、EPAのデータニーズに合わせて質の高いデータを引き続き提供することを確実にするために、USDAはEPAと話し合うだろう。
Q:EPAPDPデータをほかにどのように利用するのか?
A:EPAは、EPAが設定した基準が、法的に規定された安全基準を満たしている量であることを保証するために、設定された農薬のトラレンスについて現在行われている評価のためにPDPデータを利用する。EPAPDPのデータに基づき、様々な農薬の登録を中止したり、使用の変更をしたりしてきた。さらに、1996年食品品質保護法(FQPA)は、すべての農薬の定期的レビューを命じている。EPAの登録レビュー計画によって、米国で販売されているすべての農薬は、EPAによって登録されなければならない。EPAの登録は、商品の表示通りに使われるとき、ヒトの健康、従業員、または環境に不合理なリスクとならないことを示す科学的データに基づかなければならない。リスク評価能力は進化し、また政治や習慣も変化するので、すべての登録された農薬は、不合理な有害影響にならないという法的基準に沿い続けることを、この登録レビュー計画は保証するものである。

1加工品については、PDPの報告しているトラレンスは、その加工品用の特別なトラレンスが設定されていなければ、生の農産物の基準である。