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新しい報告書は効果的科学コミュニケーションのための研究課題を薦める

New Report Recommends Research Agenda for Effective Science Communication
Dec. 13, 2016
http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=23674&_ga=1.208670994.147430040.1465349714
NASの新しい報告書は科学を、特に議論の多い問題について、効果的にコミュニケートすることの複雑性を強調し、サイエンスコミュニケーターや研究者が効果的方法を同定するのに役立つ研究課題を提案している。
サイエンスコミュニケーションに影響する複雑な要因を理解するための大々的な研究が必要である。例えば人々が科学的情報を聞いたときにそれをどう処理するのか、科学や情報源への信頼に影響する個人的社会的要因など。サイエンスコミュニケーターがその特定の目的を果たすための正しいコミュニケーションアプローチを同定する、誰に、いつ、どんな条件でどのアプローチが有効なのか決めるのに役立つための研究も必要である。
「サイエンスコミュニケーションは複雑な仕事で習得するスキルである。科学を、特に気候変動や幹細胞やワクチンや水圧破砕のような議論の多い問題については、効果的にコミュニケートする明確なアプローチはない。」と委員会の委員長のAAASの主任名誉事務局長Alan Leshnerはいう。「サイエンスコミュニケーションの科学を強化し根拠に基づいた実践に向かって働くためのさらなる研究を行う必要がある」。
よく使われる欠如モデルでは、しばしば科学的知見を人々が受け入れないあるいは科学的根拠に従った選択をしないのは情報の欠如あるいは科学の不完全な理解によるとみなされる。しかしながら聴衆は既に科学を理解しているが多様な理由で合意しないあるいは科学に従った行動をしない可能性があることを研究が示している。人々は科学的情報のみで意志決定することは滅多になく、通常自分自身の目的や関心、知識、スキル、価値観、信仰も考慮する。知識のみに焦点を絞るのではコミュニケーションの目的を達成するのに十分ではない、と報告書は言う。
議論のある場合に、矛盾した信仰や価値観、関心が議論の中心になっているときにコミュニケーションするのは特に複雑になる。組織化された特定の関心団体の声が増幅されて大きくなり、科学からの正式な声を聞いてもらうのが困難になる。また科学的コンセンサスや科学の不確実性を効果的に伝える方法も知る必要がある。
人々を公式な科学についての対話に参加させるのは決定のために必要な情報を共有し多様な関係者の中での共通の土台を見つけるのに重要である。研究では一般の参画は可能な限り早く、何度も繰り返すことが信頼を構築し効果的な参加に繋がる可能性があることが示されているが、科学を一般の人に最も効果的仁コミュニケートする方法についてはさらなる研究が必要である。
サイエンスコミュニケーションはまたメディアの変化に調子を合わせる必要がある。今日人々はブログ、ソーシャルメディアポッドキャストを含む多様なメディアから科学的情報に出会う。個人や集団が各種メディアからの情報をどう入手して評価しているのかを理解する研究が必要で、コミュニケーターは新しいメディアを利用しこの競合的で複雑な環境に有効なアプローチをみつけなければならない。
前進のために、研究にはシステムアプローチが必要で、科学コミュニケーションは多くの相互に関係する部分−伝えるべき中身、コミュニケーター、聴衆、コミュニケーションチャンネル、の複雑なシステムである。研究は現実世界でのコミュニケーション環境をシミュレートすること、特定のアプローチの影響を評価するための無作為化対照野外実験、サイエンスコミュニケーションへの反応の変化を評価するための大規模データセットの利用に集中すべきである。
また報告ではさらに研究が必要ないくつかのコミュニケーション方法について同定している。例えばどうやって科学コミュニケーターが間違った情報を正し科学的根拠に基づいた情報に修正するか。ほとんどの場合それは難しい。間違った情報を繰り返すことは、たとえ修正が伴っていても、その情報への信仰を強化する可能性がある。誰がどんな状況で間違いを修正できるのかを決める研究が必要である。研究が必要な他のやりかたは人々の考え方、信仰、あるいは行為に影響するものに光をあてる情報を提示するフレーミング、そして複雑な問題を説明するのに物語を使うこと、などである。
委員会はサイエンスコミュニケーション研究のためのインフラ強化の必要ないくつかの分野を同定した。研究者やサイエンスコミュニケーションの実践者は研究や実践で学んだことをお互いに伝えあって協力して詳細な研究課題を開発すべきである。さらに多様な専門分野の研究者が一緒に働く必要がある。新しい、あるいは目的を変更した科学コミュニケーション研究雑誌やその他のフォーラムがそうした協力を支援するだろう。この報告ではより多くの科学者、特に社会学や行動科学がサイエンスコミュニケーションの研究に参加することをよびかける。同時に、ジカウイルスのように突然重要な科学メッセージを伝えなければならない問題に対しては迅速なレビューと資金提供が必要である。