食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 地中海食と脳の容量を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at Mediterranean diet and brain volume
January 4, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-mediterranean-diet-and-brain-volume/
73-76才の3年間の脳のサイズ変化と地中海食の関連を評価した研究がNeurologyに発表された。
UCL医学画像科学教授でIXICOのCEO、Derek Hill教授
これは英国の主要疫学コホートを用いた良いチームからの質の高い研究である。MRI脳スキャンによる脳の容量変化の測定は確立された技術である。脳の萎縮は加齢による自然な変化であるがアルツハイマー病などで萎縮が加速する。この質の高い研究では食事が脳の萎縮速度に影響するかどうかを、1936年に生まれたよく特徴がわかっている集団で調べた(Lothian出生コホート)。
この研究は地中海食が70代での脳の萎縮の速度の有意な低下に関連することを発見した。これは高齢者の脳の健康を地中海食が改善するかもしれないという幾分かの根拠を提供するが、認知症になることを予防するかどうかについてはさらなる研究が必要である。
Queen’s University Belfast加齢と高齢者医学教授Peter Passmore教授食事と脳の健康については関心が高い。この研究は地中海食が脳の健康に良く脳の容量を保持するという幾分かの根拠を提供する。この研究は信頼できるチームが良い材料であるLothianコホートを用いたものでデザインや解析、結論はしっかりしていて関連する交絡要因も調整されている。脳容量の減少は好ましくないものとみなされてはいるがこれが記憶力や認知症にどういう意味があるのかについては完全にわかっているわけではない。著者らはその点を指摘しさらに研究が必要であるとしている。
West London Mental Health NHS Trust精神科相談医Sujoy Mukherjee博士
これは比較的大規模で質の高い研究で地中海食が脳の萎縮から保護する可能性があることを示している。適切な食事が脳の健康に大切であるというますます増える根拠にさらに付け加える。しかしながらこの研究は非特異的脳の萎縮についてであり変性性脳疾患予防についての意味は明確ではない。また生涯にわたる長期間の食習慣は考慮していない。
Alzheimer’s Research UKの主任科学担当官David Reynolds博士
地中海スタイルの食生活は多くの健康上のメリットと関連する。この研究はこれまでの研究に加わるものである。脳のサイズへの小さな影響を示したものの、認知症リスクへの影響は見ていない。フォローアップ研究が必要である。
脳は人体の他の部分同様、生活により影響を受ける。食生活は健康な脳の維持に役立つが、禁煙、精神的身体的活動性、節酒、正常血圧やコレステロールの維持も大切である。

  • 大きな道路の近くに住むことと認知症リスクの僅かな上昇を関連づけた研究への専門家の反応

expert reaction to study linking living close to major roads to a small increase in dementia risk
January 4, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/28987-2/
The Lancetに発表された集団ベースのコホート研究で交通量の多い道路の近くに住むことは小さいが有意に認知症リスクが増加することと関連すると報告した。しかしパーキンソン病多発性硬化症とは関連しない。
アルツハイマー学会研究部長Doug Brown博士
この研究はオンタリオの大きな道路の近くに住む人の認知症リスクが少し上がっているという幾分かの根拠を提供する。これは多数の人での包括的研究だが原因を究明したわけではなく、交通の騒音や汚染を減らせば認知症が減るとは言えない。認知症の原因は複雑で、運動や食生活や禁煙も認知症リスクを減らす。最も強いリスク要因は年齢であるが環境的側面での研究も将来は認知症予防に役立つかもしれない。
University College London HospitalsのNIHR国立認知症研究部長Martin Rossor教授
これは大気汚染が健康に悪いという根拠を加える重要な論文である。黄疸研究から因果関係を推測するのは不可能である。影響は小さいが病気の人が多いため公衆衛生上は重要である。この研究は個人の選択に影響するほどの理由にはならないが公衆衛生上の重要なメッセージである。
Alzheimer’s Research UKの主任科学官David Reynolds博士
英国には認知症患者は85万人いるのでリスク要因への関心は高い。この研究は興味深いが因果関係があるかどうかは確認できない。認知症のような病気には年齢や遺伝子などを含む多くのリスク要因がありこの研究では大きな道路とそれによる大気汚染をリスク要因の可能性があるとしている。結論する前にさらなる研究が必要である
Nottingham大学高齢と認知症センター長Tom Dening教授
興味深い知見である。大気汚染が脳の病理に寄与することはありそうである。オンタリオが世界で最も大気汚染がひどいわけではないので他の汚染のひどい地区ではリスクがもっと大きいかもしれない。しかしながら横断研究では因果関係は確認できない。道路から遠いところに住んでいる人が医者から遠いので診断率が低い可能性もある
UCL高齢者精神医学教授Rob Howard教授
これまでの研究で示唆されているのは認知症リスクを下げるには一般的な健康状態を良くすること−禁煙、血圧と血糖管理、運動−が最良であるということである。健康に良いことは脳にも良い。大気汚染は一般的健康に悪いことがわかっていてこの最新研究で示された小さなリスク増加は直接影響なのか関節影響なのかわからない。因果の経路はわからないが、空気をきれいにする理由にはなる。
UCL神経科学教授John Hardy教授
この研究は表向きは主要道路の近くに住むことは小さいが有意な認知症リスクへの影響はあるがパーキンソン病多発性硬化症への影響はないことを示す。解析は極めて複雑でモデルには多くの共変量が含まれ、解析の複雑さが交絡要因を隠している恐れがある。パーキンソン病多発性硬化症への影響についてはこれらの病気が希であるため検出力が小さく影響の特異性は確実ではない。
道路の近くに住みたくない理由はいくつかあるが、この研究は追加の理由にはならない。