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ANSESはフランス人のための食品摂取ガイドラインを改訂する

ANSES updates its food consumption guidelines for the French population
24/01/2017
https://www.anses.fr/en/content/anses-updates-its-food-consumption-guidelines-french-population
本日、ANSESはフランスの成人のための食品摂取ガイドラインの改訂に関する意見と報告書を発表する。この作業では、初めて、食品中の特定の化学汚染物質の存在に関する課題を考慮したうえで成人の栄養必要量を満たす主な食品グループ用摂取ガイドラインをつくることを目的とした。
ANSESの意見は以前の助言に関して大きく変化した。これは主に豆類、全粒穀物製品、野菜、果物、特定の植物油が果たす役割が大きくなったことに関係している。
逆にANSESは、家禽を除く肉、特にデリカテッセン(総菜販売店)の肉(豚肉店)と砂糖入り飲料の摂取を制限する必要性を主張している。最後に、ANSESは食品中の特定汚染物質(有機ヒ素(注:無機ヒ素の間違いではないか)、アクリルアミド、鉛)の量を減らす必要性を繰り返し述べ、消費者が食事や産地を多様化するようにという助言を繰り返した。
現在の国家健康栄養計画(PNNS)ガイドラインは様々な食品グループ(果物、野菜、でんぷんなど)や運動に焦点を当て、特定の集団 (高齢者、子供、青年、妊婦、授乳中の女性) に分類している。
ここ10年以上の科学的データの進展から食品摂取や運動に関するガイドラインを改訂することが可能になり、より一般的には、公衆衛生目標に関する科学的根拠が確率された。昨年2月に、ANSESは運動と座りがちの生活様式に関するガイドラインについての最初の意見を発表した。本日、ANSESはPNNSの枠組みで食品摂取ガイドラインの改訂に関する意見を発表する。
ANSESの仕事
食品摂取ガイドラインをまとめる作業は栄養必要量をカバーし、特定食品グループの摂取に関する慢性疾患のリスクを防ぎ、食品に存在する汚染物質への暴露を制限する必要がある。開発したガイドラインを効果的に取り入れるためにフランス人の食習慣も考慮しなければならない。
まず第一に、専門家の評価作業は、脂肪、炭水化物、タンパク質のバランスを考慮しつつビタミン、ミネラル、主要栄養素の食事摂取基準を改定した。さらに、革新的なアプローチの一環として成人集団の栄養必要量を満たす32食品グループの組み合わせ摂取を確認するために、41の食品摂取基準と食品に存在する約100の汚染物質を統合して、慢性疾患リスクを予防し汚染物質暴露を制限する総合的最適化ツールを開発した。
以前の助言に関する大きな変化
ANSESの作業は以前の助言に関して大きく変化した。それらは主に豆類(レンズ豆、空豆、ヒヨコ豆など)の強調と定期的な摂取、精製度の少ない穀物製品(全粒小麦パン、半全粒パンやパスタ、玄米など)を選好する必要性、αリノレン酸の豊富な植物油(菜種、ナッツオイル)を好んでとる利益に関している。
果物と野菜の摂取は決定的に重要で、野菜を選ぶことを強化しなければならない。ANSESはまた砂糖入り飲料(ソーダやフルーツジュース)の摂取は一日当たりコップ1杯以下に制限するべきだと強調した。
最後に、ANSESはデリカテッセンの肉(ハム、乾燥ソーセージ、ソーセージ、パテなど)の摂取を一日当たり25gを超えないようできるだけ減らす必要性を強調した。家禽を除いた肉(ビーフ、ポーク、ラムなど)の摂取に関しては、一週間で500gを超えないようにすべきである。脂肪分の多い魚(イワシ、サバなど)を含んで週二回魚を摂取することの利益は再確認された。
過剰にならないようにしつつ事実上すべての集団の栄養必要量をカバーできるガイドライン
いくつかの栄養素を除き、摂取習慣を考慮したこのガイドライン案は、事実上全ての集団の栄養必要量をカバーできる。
ビタミンDの栄養必要量についてはなお非常に多くの科学的議論があるが、主に太陽光線で体が合成するビタミンD量を見積もる難しさによる。これに関して、ANSESはフランス人のビタミンD状況を評価するための研究を行うよう要請している。この研究はふさわしい管理方法を実施するために必要とされる、例えば:
・成人集団向けの医療システムを介した個別のサプリメント補充;
・皮膚がんの予防と両立できる太陽光暴露に関する科学的助言;
・健康問題や予期される利益とリスクの詳細分析を行った上での、公共機関が監視する食品へのビタミンD強化。
特定の栄養素、特にナトリウムと糖類は未だに摂取超過に関連する重要な公衆衛生上の課題となっている。そのためナトリウムについては、多量消費者の摂取を減らす一方で、提案された食品の組み合わせでフランス人の平均摂取量以下にとどめておけるようにしなければならない。糖類については、入手可能なデータからは食品に天然に存在する糖類と添加された糖類の健康影響を見分けることはできない。にもかかわらず、最大摂取限度以上に砂糖を多く摂取する人の有害影響があるという根拠に収束されている。最も暴露量の多い集団の総摂取量を減らすために、添加された糖類の媒体である食品、特に、飲料の摂取を管理することが必須だと思われる。
食品汚染物質量を減らすための継続的努力
ANSESの作業は、汚染物質への暴露を制限しながら集団の栄養必要量をカバーできる食品の組み合わせを見極めることの難しさも強調した。限られた少しの汚染物質、特に無機ヒ素、アクリルアミド、鉛では、暴露量に懸念が残る。トータルダイエットスタディ(TDS2, Infant TDS)の最近の結論で述べたように、懸念される汚染物質の量を削減するための努力は必要なままである。最終的には食品中の汚染物質量によってではなく、栄養的な制約によって人々の食品選択を管理できるようになるだろう。
これに関してANSESは消費者に対し食事と供給源を多様化するよう助言を繰り返し述べた。
続けるべき作業
ANSESが行った専門家評価は食品摂取ガイドラインの開発を可能にした。それを公共機関が消費者へ伝えるために、最もふさわしい表現形式を特定する作業を続けるよう求められている。
さらに、ANSESの作業に使われたアプローチは生理的基準 (年齢、性別、身体活動の程度など)、あるいは特定の食事習慣(回避、アレルギー、食習慣など)で規定される他の集団に適用されるだろう。ANSESはそのため、一日の食品摂取の頻度・構成や様々な摂取事情の健康影響評価を伴う作業を追加する計画を立てている。
より長期間では、包括的かつ持続可能なアプローチの一部として、食品ベンチマークを設定するために特定の栄養問題や他の問題が検討されるかもしれない。特に、ANSESは最終的に摂取ガイドラインの基礎として環境問題(二酸化炭素排出量など)や社会経済(製品コストなど)の性質を考慮するだろう。
追加情報
・PNNSガイドラインの改訂に関するANSESの意見と報告書:食品摂取ベンチマークの改訂
ANSES's OPINION and REPORT on the updating of the PNNS guidelines: revision of the food consumption benchmarks (Soon in English)
https://www.anses.fr/en/system/files/NUT2012SA0103Ra-1.pdf
・PNNSガイドラインの改訂に関するANSESの意見と報告書:砂糖摂取に関する助言の設定(フランス語)
ANSES's OPINION and REPORT on the updating of the PNNS guidelines: the establishment of recommendations on sugar intake (in French)
https://www.anses.fr/en/system/files/NUT2012SA0186Ra.pdf
・PNNSガイドラインの改訂に関するANSESの意見:砂糖摂取についての助言の制定
ANSES's OPINION on the updating of the PNNS guidelines: the establishment of recommendations on sugar intake
https://www.anses.fr/en/system/files/NUT2012SA0186EN.pdf
・PNNSガイドラインの改訂に関するANSESの意見と報告書:栄養ガイドラインの開発(フランス語)
ANSES's OPINION and REPORTS on the updating of the PNNS guidelines: development of the nutritional guidelines (in French)
https://www.anses.fr/en/system/files/NUT2012SA0103Ra-2.pdf
・PNNSガイドラインの改訂に関するANSESの意見:特定食品グループの摂取と慢性非伝染病リスクの関連性の研究(フランス語)
ANSES's OPINION on the updating of the PNNS guidelines: study of the relationship between the consumption of certain food groups and the risk of chronic non-transmissible diseases (in French)
https://www.anses.fr/en/system/files/NUT2012SA0103Ra-3.pdf
・Annexe 2 - Fibres and et metabolic diseases, from ANSES's Report on macronutrient ratios - Fibre intake recommendations (in French)
・Annexe 3 - Fibres and cardiovascular disease, from ANSES's Report on macronutrient ratios - Fibre intake recommendations (in French)
・Annexe 4 - Fibres and cancer, from ANSES's Report on macronutrient ratios - Fibre intake recommendations (in French)
(エクセルファイル)

(まだフランス語なんだけど、この報告書すごい)