食品安全情報blog過去記事

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その他

  • メタサイエンス:再現性の憂鬱

Nature書評
Metascience: Reproducibility blues
Marcus Munafò
Nature 543, 619–620 (30 March 2017)
Richard F. Harris著「死後硬直:如何にしていいかげんな科学が価値のない治療法、砕かれた希望、何十億もの無駄遣いを生みだしてきあかRigor Mortis: How Sloppy Science Creates Worthless Cures, Crushes Hope, and Wastes Billions」
科学者として、我々は客観的で公平で注意深く根拠を吟味すると考えられているが、実態はもっと複雑である。サイエンスジャーナリストRichard F. Harrisのこの本では過去10年の研究結果の主張がどれだけ虚偽で、少なくともそれほどしっかりしていないかを説明している。最初のエピソードは2012年にGlenn Begleyが明らかにした「画期的」前臨床のがん研究53のうちたった6つ(11%)しかAmgenによって確認できなかったということである。失敗は科学の正常な一部であるが、それを成功と粉飾することは誤解を招くことである。皮肉なことはしばしば利益相反や非難の対象である製薬業界の科学者が最初に懸念を表明したことである。しかしそれは驚くべきことではない。彼らには正しいゴーサインが必要だからだ。それに比べてアカデミックの科学者には論文を出すことや研究費を獲得する動機はあっても正しい答えを出す動機はない。科学者のキャリアにとって良いことは科学にとって良いことではないかもしれない。シミュレーションはこれを支持し、最もいいかげんな科学を発表する研究室が厳密な研究室より「はるかに栄える」
Harrisはこの文化を修正する必要があると言う。これは改善の機会である。

  • 先駆的細胞移植は展望と約束を示す

Natureエディトリアル
Pioneering cell transplant shows vision and promise
31 March 2017
http://www.nature.com/news/pioneering-cell-transplant-shows-vision-and-promise-1.21757
日本の初期の成功は称賛に値するが、iPS治療の商用にはまだ注意が必要である
これまでのところTakahashiは慎重に進めているが日本は有効性確認しないまま販売できる道を開いている、というのが懸念材料

  • 期待の抗がん薬は一部の患者のがんを悪化させるかもしれない

Natureニュース
Promising cancer drugs may speed tumours in some patients
Heidi Ledford 31 March 2017
http://www.nature.com/news/promising-cancer-drugs-may-speed-tumours-in-some-patients-1.21755
初期研究は科学者の、どうして免疫療法がしばしば病気を悪化させるのかを理解する決意を高める
過去5年、免疫療法は一部の手強いがんの治療に革新をもたらした。これら治療法の一部には重大な副作用があるがPD-1阻害剤の望ましくない影響は他の抗がん剤に比べると比較的穏やかである。そのため一部の医師が免疫療法に効果があることがわかっていないがんでも、他の治療法を試したがん患者に投与することにつながっている。しかしPD-1阻害剤治療を行うと普通でない早さで増殖するがんがあることがわかってきた。

  • 自己陶酔的な活動家のせいで赤ちゃんが死んでいる:止めなければならない

Babies are dying because of narcissistic activists. It must stop
Jane Hansen April 1, 2017
http://www.dailytelegraph.com.au/rendezview/babies-are-dying-because-of-narcissistic-activists-it-must-stop/news-story/fd6ae864fe1a4aac11cdd435cf55a56f
あなたの死にゆく赤ちゃんの集中治療室のベッドのそばに為す術もなく座っていることは、親として直面できる最もおぞましい経験である
私は知っている。私はそこにいた。
圧倒的無力感と親としてすべき最も基本的な仕事は子どもを生かすことだったのに無惨に失敗したことがひどく苦しめた。一週間前、小さな一ヶ月の赤ちゃんは大量の、不可逆的な脳出血をおこした−ビタミンK欠乏で。新生児脳集結は1960年代にはNSWで年に15人の新生児を殺していたが1970年代初期にビタミンK注射がルーチンになってほぼゼロになっていた。母乳はビタミンKが少なく、乳児はしばらくの間十分な量を作れないのでこの単純な注射が数千人の命を救ってきた。
ちょうど2週間前、我々は反ワクチンムーブメントがビタミンK欠乏による赤ちゃんの出血増加をおこしていることを書いた。反ワクチン活動家達がナチュラルではないものを危険だと宣伝しているためである。
この赤ちゃんと親は、反ワクチン活動の中心地であるNSW北部に住んでいて、反ワクチン活動家による愚かな無責任な誤情報の犠牲者である。
彼らはインターネットを使って間違った情報、フェイクニュース、ジャンクサイエンスを拡散し恐ろしい逸話で飾り立てる。助産師やドゥーラすらいる。
過去20年に親が注射を拒否した赤ちゃんの死亡が6件ある。NSW健康研究では親が拒否したために注射していない赤ちゃんが数千人いる
NSW北部の反ワクチンムーブメントの創始者であるMeryl DoreyはビタミンKの有害性についての「情報パック」を10ドルで売っている。その中で母乳のビタミンKは少ないが欠乏しないと書いている。彼女には何の資格もない。このようなことは止めなければならない。
(やつらは自然に死ぬのはしかたない、とか言うんだよ)

Dozen overdoses Saturday in Downtown Eastside prompt police warning
Updated: April 1, 2017
http://vancouversun.com/news/local-news/surge-in-downtown-eastside-overdoses-saturday-prompts-police-warning
バンクーバー警察が土曜日の早朝一ダースの人が過剰使用した後安全性警告を発表
12人。幸い死者はいない。

  • 恐ろしい化学

Scienceの特集
Deadly chemistry
Kathleen McLaughlin
Science 31 Mar 2017:Vol. 355, Issue 6332, pp. 1364-1366
中国の地下実験室は米国や中国当局が反応できるより早く強力な新しいオピエートを作り出している
Miller Atkinsonは初めてヘロインを使って依存になった。「私は恋に落ちた。」24才の彼はハイになるのを止められず9ヶ月毎日使った。大学を留年し、他のユーザー同様、ヘロインに耐性がつき、より大量を必要とするようになった。そして約4年前、強力な新しい組み合わせがストリートに出回るようになった、フェンタニル入りヘロインである。「それは強力だった。あまりにも強くてそれを使った友人が死に始めた」。Atkinsonは幸運にも道を取り戻し現在は法律学校の入学試験の勉強をしている。
フェンタニルとその類似体は悪化する災難のニューフェイスである。米国は世界中の天然および合成オピエートの85%を消費し、2015年には33091人の死亡となり前年より4000人増加した。オピオイド過剰使用は1999年から4倍になり、昨年の米国平均寿命がここ数十年で初めて下がったのはオピエートの濫用のせいであると多くの保健の専門家が非難する。
今やストリートで販売されている多くのオピエートの合成原料は芥子ではない。新しい化合物は中国の違法実験室から来る。
(以下中国や米国当局の対応等。薬物をやってみようなんて薦めるのは「友達」じゃないと思うけど)

  • PHEの企業向けの砂糖を減らすことと組成変更の新しいガイドライン専門家の反応

SMC UK
expert reaction to PHE’s new guidelines on sugar reduction and reformulation by the food industry
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-phes-new-guidelines-on-sugar-reduction-and-reformulation-by-the-food-industry/
PHEが子ども達が毎日食べる食品の砂糖を減らすための企業向けガイドラインを発表した
Durham大学公衆衛生栄養士Amelia Lake博士
これはしっかりした研究による根拠を利用した素晴らしいアプローチで、我々が減糖計画において世界のリーダーである。PHEは子ども達の食事の多くの砂糖の摂取源となる食品に焦点を絞っている。それらはビスケット、朝食シリアル、ケーキ、チョコレート菓子、アイスクリーム、キャンデー、シャーベット、朝食用品(ペストリー、パン、ワッフル)、プディング(パイやタルトを含む)、甘いお菓子、甘いスプレッドやソース、ヨーグルト、フロマージュ・フレである。これらは子どもだけでなく家族全員が食べる。小さい子どものいる母親として、栄養士として私はこの変更を歓迎する。ソフトドリンク業界課税に加えて、重要な対策となる。