食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 妊娠マウスの高脂肪高砂糖食と母子の健康を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at high-fat, high-sugar diet in pregnant mice and health of mouse mother and pup
April 6, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-high-fat-high-sugar-diet-in-pregnant-mice-and-health-of-mouse-mother-and-pup/
Journal of Physiologyに発表された研究が妊娠中のマウスの高脂肪高砂糖食の母親の耐糖能とインスリン抵抗性および胎児-胎盤グルコース代謝への影響を調べた
Imperial College London調査医学部研究フェローSimon Cork博士
このマウスの論文は母親の食事や体組成が子どもの代謝に影響することを示唆する増加する文献に付け加わるものである。この研究は妊娠マウスの高脂肪高砂糖食はマウスの子どもが生まれた後の代謝調節能力に影響することと関連することを示す。この論文では餌の組成を明示していないが以前の文献を引用している。その食事はヒトが通常毎日食べるものより脂肪が多だろうが、これまでのいくつかの研究よりは「西洋風食」に近い。
これまでの動物実験でも同様の知見が示されていた。これらの結果はどんな形でもまだヒトで再現されていないことに注意するのが重要である。さらにこの影響をもたらすのが食事そのものなのかあるいは母親の体組成なのかを我々はまだ知らない。しかし文献は人生の後半の体重が生まれる前に事前にプログラムされているかもしれないことを強く示唆する。別の言い方をすると、母親のせい。
食品研究所栄養研究者で名誉フェロー、Ian Johnson博士
この研究の問題は実験的マウス食について脂肪と砂糖が多いこと以外は実質的に何も言っていないことである。普通のマウスの食事とどう違っているのか、健康的なヒトの食事とみなせるものとどう違うのかの説明がなく、ヒトとどう関係するのか判断が極めて難しい

  • 毎月ビタミンDを補充することによる心血管系疾患への影響を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to a study investigating the effect of monthly vitamin D supplementation on cardiovascular disease
April 5, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-a-study-investigating-the-effect-of-monthly-vitamin-d-supplementation-on-cardiovascular-disease29595-2/
JAMA Cardiologyに発表された新しい集団ベースのコホート研究で、毎月高用量のビタミンD補充は心血管系疾患を予防するかどうかを検討した
王立国立整形外科病院小児科相談医Benjamin Jacobs博士
他の研究でビタミンDが心血管系に影響するかもしれないこと、例えば重症のビタミンD欠乏の乳児は心筋症と心不全になる、を知っている。しかしこの研究ではこの集団に影響はなかった。これは対照集団のビタミンD常態が英国人集団より良かったせいかもしれない。プラセボ群でも血中平均ビタミンD濃度は65 nmol/L (26 ng/ml)以上だった。
Queen Mary University of London呼吸器感染免疫臨床教授Adrian Martineau教授
この質の高い研究はビタミンDサプリメントが心血管系疾患予防に役割を果たすかどうかについての議論に対応する。研究デザインは二重盲検RCTでゴールドスタンダードである。相当数の高齢者をリクルートし介入群は血中濃度を上げる十分量のビタミンDを投与し85%以上がフォローアップを完了した。この研究は毎月ビタミンDを投与しても心血管系疾患リスクは下げないという決定的根拠を提供する。しかし著者自身が指摘しているように、別の集団に別の投与方法でビタミンDを与えた場合にはビタミンDに役割があるかもしれない可能性を排除しない。
Surrey大学栄養科学部ポスドク研究フェローAndrea Darling博士
これは全体的に質の高い研究であるがいくつか欠点があり誤解を招く可能性がある。
最初に心疾患リスクが高いのはこの集団の半分のみでこのため心疾患イベントが少ない。二つ目にこの研究は20%のリスク削減を見ることを目指しているが、スタチンの心血管系疾患一次リスク削減が27%であることを考えると、栄養から期待される影響で20%というのは非常に大きい。著者らがディスカッションで仄めかしているように、この結果をもとにビタミンDの心血管系疾患予防作用の利益を止めることには注意が必要だ。
英国心臓財団医務副部長Metin Avkiran教授
この研究の知見は、我々は一般集団がビタミンDサプリメントを摂ることで心血管系疾患を予防するかどうかまだよくわかっていないということを意味する。この研究では毎月与えてもメリットはないことを示したが毎日あるいは毎週ならどうかはわからない。しかしビタミンD欠乏と診断されて処方されている人は、骨の強度など既に確立されている健康上のメリットのために、使用を続けるように。
Sheffield大学心血管系医学准教授&心臓相談医Tim Chico博士
これは重要で質の高い研究である。これまでビタミンD状態の悪い人は心臓病が多いことが知られていて、そのことがサプリメントで心疾患を減らせるのではないかと考えさせてきた。しかしこの研究では毎月ビタミンDサプリメントを与えても利益はないことがわかった。しかしいつものようにさらに疑問が湧く。また単なる推測だが与え方や用量や期間を変えたらメリットがあるかもしれない。
この研究は他のビタミンサプリメントのがっかりする、あるいは有害ですらあるという膨大な数の研究にさらに加わる。ビタミン濃度の低さが病気に「関連」するとしてもそれは病気とビタミン濃度の低さの両方につながる要因のポインターに過ぎない可能性が高い。
私はたくさんの患者が病気のリスクを下げることを期待してビタミンサプリメントを使用するのを見てきた。しかし残念ながら私は彼らに、エビデンスはそれがお金と時間の無駄であることを示唆していると言わなければならない。良い知らせは、ビタミン濃度を改善して心疾患を減らすのに効果がある安い商品が売られているということで、それは野菜というものである。
UCL臨床データ科学上級臨床講師で名誉心臓専門相談医Amitava Banerjee博士
これは5000人以上を対象にした質の高い毎月高用量ビタミンDの試験で、これにより心血管系疾患は予防できない。心血管系疾患とビタミンD濃度の低さの関連は良く知られているが、より低濃度のでのビタミンDサプリメントの試験でも同様の結果だった。従って、さらなる研究は必要であるものの、ビタミンDサプリメントで心血管系疾患リスクが減ることは極めてありそうにない。

  • 食事脂肪と線虫の寿命を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at dietary fat and lifespan in nematode worms
April 5, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-dietary-fat-and-lifespan-in-nematode-worms/
Natureに発表された研究で、食事中の単価不飽和脂肪酸が線虫の寿命を延ばすかどうかについて研究した。
英国栄養士会広報担当で登録栄養士Catherine Collins氏
彼らは線虫の腸の貯蔵脂肪が飽和脂肪や多価不飽和脂肪酸ではなくオレイン酸由来の単価不飽和脂肪酸が多いと2日寿命が延びることを発見した−あなたの寿命が2週間しかないのでなければ意味のある数字ではない。
他の研究から単価不飽和脂肪酸の多い地中海風食生活がヒトの心疾患やがんなどに保護的であるように見える。
ヒトでの研究から不飽和脂肪と野菜や果物の多い地中海スタイルの食事は健康的な食事の栄養的青写真であることを我々は知っている。

  • マーマイトと脳の刺激応答を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at Marmite and brain response to stimuli
April 5, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-marmite-and-brain-response-to-stimuli/
Journal of Psychopharmacologyに発表された研究で、、神経伝達物質GABAの量を増やすことを目指した食事介入が基本的感覚刺激への神経応答に影響するかどうかを調べた
英国栄養士会広報担当で登録栄養士Catherine Collins氏
鬱から幸福まで、食品が気分にどう影響するかは心理学研究の人気トピックスである。食事成分の脳の量を量るには動物実験が使われるが、サンプルをとる行為が精神や認知機能に影響するので代用の指標が使われる。この研究ではマーマイトを毎日5g食べて、視覚刺激への脳の応答の違いを示すのに脳波記録(EEG)を使った。著者らはこれがマーマイトに多い天然成分グルタミン酸からつくられたGABAの利用度の増加によると示唆している。
研究者らによると5gのマーマイトは140mgのグルタミン酸を提供し、ピーナッツバター(プラセボ)は80mgである。ベースラインのグルタミン酸摂取量を調べようとしていない。うまみを含む食品は多数有り彼らの解析ではそれを交絡要因として調整していない。マーマイト5gより醤油10ml、ロックフォールほんの少し、パスタにパルメザン少々、トマト二つのほうがグルタミン酸が多い。
私は栄養士としてマーマイトの影響より塩が多いことのほうが気になる
オックスフォード大学薬理学名誉教授David Smith教授
観察は明確だが介入はそれほどしっかりしていない。マーマイトの5mLに含まれるビタミンB12の量は1.45マイクログラムで脳に影響するような量とはほど遠い。普通の食事からは約2マイクログラムを摂っている。B12が脳のGABAに影響するという根拠も乏しい
Plymouth大学准講師Martin Coath博士
仮説がビタミンB12のせいだというならビタミンサプリメントで再現すればいい。この結果はサプリメント業界に大喜びで誤用されるだろう
オックスフォード大学発達神経心理学教授Dorothy Bishop教授
良い点は無作為化を採用していることだがサンプルサイズは極めて小さい。独立して再現されない限り疑わしい。
アルツハイマー学会研究部長James Pickett博士
我々の食生活が脳の機能に影響することは根拠が示している。この研究は20代の男性がどう視覚刺激に反応するかを見ただけで、これだけではマーマイトが認知量リスクにどう影響するのかわからない。
認知症リスクを下げるには健康的な食生活と定期的運動と禁煙と血圧チェックである。