食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 心理学:無自覚の科学

Nature書評
Psychology: Science in spite of itself
Barbara A. Spellman Nature 544, 414–415 (27 April 2017)
http://www.nature.com/nature/journal/v544/n7651/full/544414a.html
「心理学の7つの大罪:科学の実践の文化を改革するためのマニフェストThe Seven Deadly Sins of Psychology: A Manifesto for Reforming the Culture of Scientific Practice」
Chris Chambers Princeton University Press: 2017
の書評
著者のChris Chambersは認知神経科学者で心理学者で、再現性の危機にどう対応するのかを検討している。多くの科学の分野で論文の結果に再現性がないことが問題になっているが、心理学は早期に問題になった。この本ではその歴史と自叙伝と改革のための方法を記す。「罪」には先入観による推論からとんでもない詐欺まである。そして罪の多くは科学者個人のものではなく科学という分野におけるインセンティブ構造とプロセスにあることを示す。Chambersは少なくとも58回もデータ丸ごと捏造した一人の心理学者を紹介している。職を得るため、昇進するため、研究費をとるため、科学者は有名雑誌に論文を出さないといけない。最も正直な科学者でも結果をより良く見せようと無意識のうちに何らかの罪を犯している。先入観で理由付けをしたりデータの収集に隠された柔軟性をもっていたり結果の一部だけを報告したりデータを見てから仮説を修正したり。これらは科学者個人にとっては短期的にメリットがあるだろうが科学にとっては良くないことである。Chambersは対策として事前登録を薦める。最初に実験計画の詳細を説明し、実験後はデータを公開する。そして提案を満たした論文はその結果のデータがどうであろうと発表する。これは多くの罪を減らすだろう。事前登録だけでは全ての罪は無くならないがChambersは他に多くの関係者がとれる対策を提示する。この本は研究法についての大学の履修項目にすべきである。

  • 発表:nature雑誌は研究評価についてのサンフランシスコ宣言を支持する

Natureエディトリアル
Announcement: Nature journals support the San Francisco Declaration on Research Assessment
http://www.nature.com/news/announcement-nature-journals-support-the-san-francisco-declaration-on-research-assessment-1.21882
今週Natureは研究評価についてのサンフランシスコ宣言(DORA)に公式に署名する。
これは雑誌のインパクトファクターの不適切な使用を止める必要があるということである。2005年からNatureは科学者個人を研究所や資金提供者が評価するのに雑誌のインパクトファクターに問題のある依存をしていることに懸念を表明してきた。雑誌の引用はごく少数の極めて多く引用される論文に影響されるためそのようなものを研究者の評価に使いのは有用ではない。さらに論文の科学的価値は引用数のみで測定できるものではない。

  • それは私におこった 私はフェンタニルの危険性を警告するために、この死にゆく息子の写真を投稿する

It Happened To Me
I posted this photo of my dying son to warn of the dangers of fentanyl
Apr. 26, 2017
http://www.theglobeandmail.com/life/health-and-fitness/health/i-posted-this-photo-of-my-dying-son-to-warn-of-the-dangers-of-fentanyl/article34820325/
4月19日、カルガリーのSherri Kentが病院のベッドで息子と横たわる彼女自身の写真をシェアした。102000以上シェアされた。
私は3月15日に病院に到着した。マイケルはフェンタニル入りヘロインを過剰使用した。マイケルは6月2日で23才になるはずだった。

  • レバー:愛すべきか離れるべきか?

Liver: Love It or Leave It?
by Berkeley Wellness | April 26, 2017
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food/article/liver-love-it-or-leave-it
レバーについて
良いニュース:栄養豊富。ビタミンB類が多く含まれる。タンパク質、亜鉛、銅、鉄なども多い
悪いニュース:ビタミンAが多すぎる。コレステロールも多い
別の問題の可能性:レバーには抗生物質や動物用医薬品、農薬が他の肉より多い可能性が高い
基本:たまに少量食べるなら問題ない
他の臓器肉は?
肝臓同様栄養豊富で比較的飽和脂肪が少なくコレステロールが多い。舌、心臓、胃袋は他の肉よりコレステロールが多いことはない。胸腺、砂嚢、脾臓は肝臓同様コレステロールが多い。腎臓は二倍、脳は十倍多い。食事由来のコレステロールを理由に臓器肉を怖がることはないが何事もほどほどに、が賢明である。

Claim Check  Ginger Ale for an Upset Stomach?
by Densie Webb Ph.d., R.d. | April 26, 2017
http://www.berkeleywellness.com/self-care/home-remedies/article/ginger-ale-upset-stomach
クレーム:ジンジャーエールは胃の調子がおかしい時に役立つ
事実:ショウガとショウガ抽出物が、つわりのようなある種の吐き気や嘔吐に有効であることを示す研究はあるが、それらの研究で使われている用量はジンゲロール250mgから1gを1日1-4回である。それ以外の胃の不調へのショウガの有効性の研究はあまりない。たとえショウガが有効だったとしても、だからといってジンジャーエールが有効だということではない。カナダドライのような主要ブランドのジンジャーエールのいくつかはショウガ抽出物を含むが(天然香料と表示されている)その量は不明で多分ほんの少しである。
それでも多くの人にジンジャーエールが有効である。一部は小さいときからそうやって使ってきて効果があると思っているから。ショウガがきくならショウガにお湯を入れたショウガ茶のほうがいいかもしれない。

  • ハーブが肥大した前立腺を小さくできるか?

Can Herbs Shrink an Enlarged Prostate?
by Berkeley Wellness | April 25, 2017
http://www.berkeleywellness.com/supplements/herbal-supplements/article/can-herbs-shrink-enlarged-prostate
男性が年をとると前立腺が肥大し頻尿になる。このくるみほどの大きさの膀胱のすぐ下にある腺は、性機能に重要である。年齢と共に前立腺の細胞が増殖し良性前立腺過形成(BPH)と呼ばれる状態になり、これは前立腺がゆっくり大きくなって膀胱や尿道の一部を圧迫する。大きくなった前立腺のせいで膀胱が空っぽになるのが難しくなり一杯になる頻度が増える。その結果頻尿になる。特に夜、しかし尿が出にくくなる。60才までには男性の約半分、70才までには10人中9人がそうなり80才までには男性の20-30%が何らかの治療を受ける。この状態は困るので高齢男性は何でも試してみようとする。ビタミンショップや健康食品店やドラッグストアが「男性の健康」用サプリメントで溢れているのは驚くことではない。
BPH用の薬は、人々が前立腺を知らなかった何千年も前からある。伝統中国薬や日本の薬は多くのハーブで尿路の症状を治療する。Canadian Journal of Urologyの2015年のレビューによるとおよそ3ダースもの植物化合物がBPH用に使われている。如何にいくつかの前立腺用ハーブについて記す
ノコギリヤシ
ベータシトステロールとその他植物ステロール
アフリカンプラム
ホソムギ花粉
(文献略)
基本
もし排尿に問題があるなら、原因がBPHかどうか確認するために医師に相談すること。もしBPHで助けが必要なら医薬品について相談する。医薬品には効果も副作用もあるが良くわかっている。ハーブを使いたいと考えるなら、それは予測できない結末になる可能性を忘れないこと。サプリメントの成分は標準化されていないので製品の比較は不可能である。サプリメント同士や医薬品を組みあわせて使うことには注意。

  • DSHEAはサプリメントメーカーに23年も恥ずべきがん治療宣伝を許してきた

DSHEA Allowed 23 Yrs of Disgraceful Cancer Claims by Supplement Makers
By Josh Bloom — April 26, 2017
http://www.acsh.org/news/2017/04/26/dshea-allowed-23-yrs-disgraceful-cancer-claims-supplement-makers-11188
私が1994ダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA)は政府による我々への破壊的害の多い悪ふざけであるとみなしているのは御存知の通り。これについては何度も書いてきた。DSHEAは1994年にBill Clinton大統領によって署名されて成立したが、実際にこれは超党派の茶番である。ユタ州のOrrin Hatch上院議員アイオワ州のTom Harkinが提案し、詭弁が科学とFDAを回避した典型的な例である。意図的なものである。
この法律の本質的なたちの悪さとそれがどうやってサプリメント業界に好き勝手をさせているかを示す最良の例が最近FDAが対応した14企業の違法で、非倫理的で、モラルの欠片もない、詐欺的がん治療サプリメントであろう。何故こんなことがおこるのかは、政治家がFDAの手を縛ってサプリメント業界を規制する力を奪ったからである。FDAは問題がおこった後でないと対応できない。それがおこった。再び。これは「いつものこと」で、単独ではない。
がんへの恐怖を悪用することは、役にたたないしばしば有害なゴミを売ることより悪いが、サプリメントを売る人たちにとっては極めて普通のことである。
サプリメントが何かの効果を上げるときは実際の医薬品をいれているときである。当然それは悪いことである。
こんなことができるのはDSHEAの意図的二枚舌の使用による。サプリメントは、たとえそれが調べられたことのない薬物であったとしても、ラベルに断り書きさえすればいい。それは見にくい小さな字でこう書いてある「これらの文言はFDAにより評価されていない。これらの製品はどんな病気でも、診断・治療を意図しない」
この断り書きはサプリメントと医薬品の奇妙な区別をしている。この表示は製品が医薬品ではないと明示しているが、その小さな断り書きの上にはこんな文句が謳われている
・エネルギーをサポートするのに役立つ
・副腎機能をサポート
・精神的身体的パフォーマンスをサポート
・免疫系と全体の健康をサポート
「役立つhelp」とか「サポート」という単語は、DSHEAの意図的にずさんな用語のおかげで、多くの人が「治療」という意味に受け取ることを知っていて、企業がFDAの規制を逃れるのに使われる。これは明らかに法的二枚舌であるが、そのことがこの300億ドル産業を栄えさせている−「医薬品」という言葉を悪者扱いして人々にサプリメントを買わせる。
インチキがん治療効果を謳うサプリメントの取り締まりがこの暗黒業界に幾分かの光をあててDSHEAが政治的議論の対象になるかもしれないが、私はそうは思わない。なぜならこれでお金を稼ぐのはあまりにも簡単で、多くの人が反科学であるため、騙すのは簡単である。
FDAの発表は後で)

  • March for Scienceをメディアがどう報道したか

Scienceニュース
‘Boffins and their VERY academic chants’: How the media covered the March for Science
By Science News StaffApr. 25, 2017
http://www.sciencemag.org/news/2017/04/boffins-and-their-very-academic-chants-how-media-covered-march-science
(日本の読売新聞は東京でのイベントを取材せず朝日新聞は東京でのマーチは約150人でほとんどがアメリカ人と伝えている、とのこと。)