食品安全情報blog過去記事

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飽和脂肪と心疾患についてのエディトリアルへの専門家の反応

SMC UK
Expert reaction to editorial on saturated fat and heart disease
April 25, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-editorial-on-saturated-fat-and-heart-disease/
British Journal of Sports Medicineのエディトリアルで、研究者らが、飽和脂肪は動脈を詰まらせることによる心臓発作リスクを上げず、心疾患は健康的なライフスタイル介入で減らせると報告している
オックスフォード大学根拠に基づいた医学センター上級研究者David Nunan博士
コレステロールの高いことと早期死亡の関連がなく、飽和脂肪摂取量を減らすようにとの現在の公衆衛生助言は改訂されるべきだという論文が最近多く発表されている。この最新の意見も同様の主張で、それを支持するものとして特定の根拠を選んでいる。しかし著者らは根拠の質についての懸念には対応せず、矛盾する根拠については強調しない。
著者らが引用した自己申告による飽和脂肪の摂取量と冠動脈心疾患の関連がないという根拠の多くが観察研究で、根拠としては質が低い。
RCTによる質の高いメタ解析では食事中飽和脂肪を減らすことt心血管系イベント削減に中程度の質の根拠があることを見出している。しかしながら全原因及び心血管系が原因の死亡や心筋梗塞脳卒中を普通の食事と比べた場合には統計学的差はない。心血管系イベントの現象は飽和脂肪を多価不飽和脂肪に置き換えた場合に観察された。
このエディトリアルの良い点は運動やストレス管理を含むライフスタイル介入についての現在の合意が繰り返されていることである。
個々の栄養素に注目するのではなく食事のパターンや行動についてのバランスのとれた議論が必要であるというのが現在合意が増えつつあることである。
University College London臨床データサイエンス上級臨床講師で名誉心臓相談医Amitava Banerjee博士
これは新しいデータや研究は提示しない一つのエディトリアルである。残念なことに著者らは根拠を単純化して選択的に報告している。
健康的な食事とライフスタイルが心臓の健康に重要なことについて議論の余地はない。心臓発作予防のために食事と運動の重要性に注力する必要がある。しかし個人個人のリスクは多くの要因の相互作用による。多方面からのアプローチが必要である。治療と予防を対立させたり相互に排他的に扱ったりするのは役にたたない。
Reading大学ヒト栄養教授Christine Williams教授
最近British Journal of Sports Medicineや British Medical Journalに有名な心臓医による飽和脂肪は無害だと主張するエディトリアルが掲載された。特に新しい研究がでたわけでもないのにこれらの不完全で限定的根拠を出版する動機は不明だ。
以下略
Reading大学ヒト栄養准教授Gunter Kuhnle博士
著者らは「リアルフードreal food」が心血管系疾患予防にはベストだという。しかし誰も「リアルフード」とは何か説明しない。実際のところ「リアルフード」とは「クリーンな食生活」と同様のファッショナブルな用語以上のものではない。
Essex大学臨床生理学(心臓病学)准教授で研究部長のGavin Sandercock博士
このエディトリアルは良い根拠に基づいていない。「リアルフード」などというものは存在しない−著者が定義していないので意味がない。
Ulster大学健康科学部長Mary Hannon-Fletcher博士
私が近年読んだ中で最良の食事と運動についての助言:毎日22分歩いてリアルフードを食べること。これは素晴らしい公衆衛生メッセージで、低脂肪低カロリーの食品が健康的だという現代の考えは健康的ではない。
(この人だけどういうわけか称賛のコメント。あとはみんな批判的)
UCL心血管生理学と薬理学教授で生涯の健康と加齢のためのMRCユニット副部長Alun Hughes教授
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
英国栄養士会会員で栄養士のGaynor Bussell
英国心臓財団医務副部長Mike Knapton博士

問題のエディトリアル
オープンアクセスで、多数報道されている
Saturated fat does not clog the arteries: coronary heart disease is a chronic inflammatory condition, the risk of which can be effectively reduced from healthy lifestyle interventions
Aseem Malhotra, Rita F Redberg, Pascal Meier
http://bjsm.bmj.com/content/early/2017/03/31/bjsports-2016-097285