食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

コーヒー論文関連

  • コーヒー摂取と死亡リスクを調査した二つの研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to two studies looking at coffee consumption and risk of death
July 10, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-two-studies-looking-at-coffee-consumption-and-risk-of-death/
Annals of Internal Medicineにコーヒー摂取の多さと死亡リスク低下の関連について評価した二つの研究が発表された
研究についての詳細は「見出しの前の解説」へ
http://www.sciencemediacentre.org/coffee-consumption-and-reduced-risk-of-death/

両方の研究について
Sheffield大学心血管系医学准教授/心臓相談医Tim Chico博士
この二つの研究は何千人もの人々を16年フォローしてコーヒーを飲む人と飲まない人の死亡率を比較した。これまでの研究同様、全くコーヒーを飲まない人に比べて、飲む人の死亡率がほんの少し低かった。この研究は質が高く多くの国でたくさんの人を監察したという利点がある。これらの集団全体でコーヒーと死亡率の関連が同じようであった。
どちらの研究の著者もコーヒーが死亡率の低いことの原因かどうかについては他に原因があるかもしれないと慎重である。どちらの研究も収入については考慮していないようだ。コーヒーは安くはないのでコーヒーを飲まない人の方がお金持ちではない可能性もある。
これらの研究から言えることは?どちらもコーヒーは有害ではなさそうだという以上のことは言っていない。私はしばしば患者からコーヒーについて質問されるが、これらの研究は彼らにコーヒーは安全だと助言するのに役立つだろう。
コーヒーが長生きに役立つかどうかを知る唯一の方法は何千人もの人に無理矢理コーヒーを飲ませ、さらに何千人もの人に絶対コーヒーを飲ませないようにすることである。このような実験が行われることはないだろう。だから我々は決してこの疑問の答えを知ることはない。
この研究を理由に、多分存在しないだろう健康のためにもっとコーヒーを飲むようにすべきではない。運動のメリットと比べるのが役立つだろう。コーヒーショップに20分歩いて行くと、そこに入ったり何も買わなかったとしても多くの証明された健康上のメリットがある。
Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授
どちらの論文も大規模で質が高く異なる人口や人種集団で同様の結果を示す。コーヒーを飲む人間として、これはコーヒーが私にとって悪くないという確認になる。しかしもしコーヒーを飲まない人間だったら、これを根拠に健康のためにコーヒーを飲もうとは思わないだろう。なぜならばあるかもしれない保護作用の大きさがそんなに大きくなく、実際の原因は不明であるから。他の観察研究同様、原因を確認することはできない。また実際のところどちらの研究でも最もコーヒーを飲む人たちが最も死亡率が高い。他の要因を考慮した結果の結論である。これはコーヒーをたくさん飲む人は喫煙者である可能性が高いせいである。研究者が喫煙を統計学的に考慮すると結果が逆になる。しかしこれは他の多くの要因でもおこる可能性がある。どちらの研究グループもいろいろな要因について統計学的処理を行っているが、全てについて適切な処理かどうかは誰も確信できない。
コーヒーの何が保護作用があるのかもわからない。しかしカフェインレスでも同じ結果だったのでカフェインではなさそうだ。さらにコーヒーの量はカップで数えられているがカップの大きさはそれほど明確に定義されておらず、文化により異なることにも注意。
私の意見では、これらの研究を報道する人はこれに伴う非常に良いエディトリアルを読むべきだ

欧州研究のみへのコメント
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
これはナイスな研究であるがこの結論はコーヒーを勧めることにはならない。何故か?コーヒーと心疾患の関連については真の因果関係かどうかははっきりしないからだ。
私が薦めるのは、証明された心疾患削減方法−禁煙、良い食生活、コレステロールと血圧の管理、そして運動である。
Cambridge大学公衆のリスク理解についてのWinton教授David Spiegelhalter卿
これは大規模で注意深く行われた良い研究であるが、それ自体では決して因果関係を確認できない。もしこの推定される死亡率削減が本当に現実なら、毎日コーヒーを1杯余計に飲むことで男性は約3か月、女性は約1か月寿命が長くなるだろう。計算上コーヒー一杯を飲むと男性が9分、女性が3分である。
(もし好きでもないのに飲むのに3分以上かかったら損じゃないか!)

  • 最新のコーヒー研究が誇大宣伝されている

Latest Coffee Study Is Being Hyped
By Chuck Dinerstein — July 11, 2017
http://www.acsh.org/news/2017/07/11/latest-coffee-study-being-hyped-11538
コーヒーを飲むのが良いことだ、多ければ多いほどよい、という報告にメディアが活気づいている。これはAnnals of Internal Medicineに発表された論文のメディアによる解釈である。食品や飲料についてのいつもの事例のように、この研究は自己申告による観察研究で、どちらも信用できないことで悪名高い。だからいつも言っていることがあてはまるのだが、少しデータを見てみよう。
まず結論部分。
「全くコーヒーを飲まない場合と比べて、コーヒー摂取は喫煙と他の交絡要因の調整後、総死亡率の低さと関連した。」
コーヒー支持者は「調整後」というフレーズがなければ素晴らしいと思っただろう。実際のデータとその意味を見てみよう。
(どう調整したかの表。コーヒーをたくさん飲む人のほうが調整の幅が大きい)
ではコーヒーは飲むべきなのか飲むべきでないのか?著者らは「我々の知見は最新の米国食事ガイドラインを支持する。健康的なライフスタイルの一部としてコーヒーを適度に取り入れる」と結論している。行動的視点から考えてみよう。年齢や性別や人種は変えられないので、最初のモデルはこれらベースライン条件を反映すべきだろう。
注意点は毎日4杯以上では死亡率があがること、喫煙の調整で劇的に死亡率が改善していることである。そして疑問は、コーヒー摂取は単独の行動なのかあるいは他のライフスタイル選択の指標なのか?リアルワールドでは、コーヒー摂取は「極端」でない限りあまり大きな影響はないだろうと考える。