食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 飲酒と糖尿病リスクを調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at drinking alcohol and risk of diabetes
July 27, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-drinking-alcohol-and-risk-of-diabetes/
Diabetologiaに発表された研究で、飲酒の頻度の多さが糖尿病リスクの低さと関連し、州に3-4日以上飲酒することが最もリスクが低いと報告している
UCL Bayesian医療統計学者Graham Wheeler博士
この大規模研究は飲酒と糖尿病リスクの低下の関連を発見したがそれだけでは因果関係を証明しない。生物学的メカニズムを確立することが重要であろう。
このデンマーク研究では飲酒習慣について尋ねられたのはたった一度で、過小あるいは過剰申告の可能性があり、時間と共に飲酒習慣が変わったかどうかもわからない。
研究者らは糖尿病の発症とたくさんの異なる飲酒関連行動を比較しており、そのことが何らかの統計学的有意差が偶然でる可能性を増やしている。
このニュースを聞いて飲酒者は酒量を増やしたくなるかもしれないが、アルコールは肝硬変やがんなどのリスク増加と関連する。さらなる研究が役立つだろう
UCL臨床データサイエンス上級臨床講師で名誉心臓相談医Amitava Banerjee博士
この研究では頻繁に飲酒することが男女両方で糖尿病リスクの低さと関連すると主張するが、他の研究では関連がない。いろいろな結果になっているのは一部は飲酒パターンの定義が違うことと良い前向き研究がないことによる。この分野のこれまでの研究同様、少なくとも4つの理由で結果の解釈には注意が必要である。一つは一般人は飲酒量の自己申告は正確ではない、二つ目は集団の代表性、三番目は交絡要因、4番目は糖尿病の発症に要する期間を考えると4.9年のフォローアップは不十分であろう。
内分泌学会会員University College of London病院肥満手術医名誉内分泌相談医Nick Finer教授
この研究はほどほど飲酒が糖尿病発症リスクの低さと関連するという先の研究を確認したがいつものように欠点がある。デンマーク人の結果は英国にはあてはまらないかもしれない。糖尿病予防のための努力は健康体重維持と適度な運動に正しく集中すべきである。

  • 精神衛生への砂糖の影響についての専門家の反応

expert reaction to impact of sugar on mental health
July 27, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-impact-of-sugar-on-mental-health/
加齢に関する学際研究であるWhitehall IIコホートのデータを用いた、砂糖の摂取量と精神疾患の発症を解析した研究がScientific Reportsに発表された
英国栄養士会登録栄養士で広報担当Catherine Collins氏
鬱や精神衛生は多くの方法で食生活に影響し、研究者は長い間質の低い食生活は精神衛生問題の症状なのか原因なのか知ろうとしてきた。この研究の研究者は砂糖の多い食事が男性の5年間での自己申告による鬱に寄与すると仄めかす(ただし2年ではみられないない)。食品頻度質問票は砂糖を摂取しているかどうかを知るには適切なツールだが、それを毎日の砂糖の摂取量に換算するのは大きな間違いで、そのためこの研究の知見は面白いがそれ以上ではない。この英国男女公務員の大規模研究は男性でのみ差を報告している。もとの集団の1/3は女性だったので、公務員への採用は典型的英国人集団ではないことを示す。女性のほうが食品にはより大きな情緒的関わりがあるのに女性では短期でも長期でも砂糖の摂取と鬱に関連が見られなかった。
研究者らは「この研究は砂糖の有害影響を確認した」と大胆にも結論し、精神衛生向上のために砂糖を減らすようにという根拠のない助言をしている。
(いろいろ略)
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
これは観察研究であり解釈には注意が必要である。著者らは精神衛生状態の悪さは50才以下の女性、低グレードの雇用状況、喫煙者、痩せている人、その他離婚や睡眠不足などの影響のある人で多いと報告している。砂糖の摂取量は社会経済的地位の低い人で多く、喫煙や運動不足などの健康に悪影響のある行動と関連する。著者らは社会的要因を取り除こうとしているが残った交絡要因もある。また砂糖の摂取量は肥満や過体重の人で過少申告されるという大きな問題もある。(略)
UCL高齢者精神医学教授Rob Howard教授
この研究は、砂糖を多く食べる男性の軽い不安や鬱のようなよくある精神疾患の約1/4のリスクの増加は、既に不安や鬱があってそれを和らげるのに砂糖を使う人では説明できないことを示した点で重要である。砂糖を多く摂る人がその後より重症の鬱になることが明らかにできなかったことも重要で、砂糖摂取に関連する病気に鬱や不安を加えるにはより大規模で代表性のある研究が必要である

  • 現代的ライフスタイル変化、腸内細菌の多様性、慢性疾患についての意見記事への専門家の反応

expert reaction to comment article about modern lifestyle changes, gut microbial diversity, and chronic diseases
July 27, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-comment-article-about-modern-lifestyle-changes-gut-microbial-diversity-and-chronic-diseases/
Nature Reviews Immunologyに発表されたコメントで、研究者が喘息や肥満、炎症性腸疾患などの慢性疾患の増加は現代的ライフスタイルによる腸内細菌の多様性の低下によるのではないかと言う
UCL医学微生物学名誉教授Graham Rook教授
これは最新知見の簡潔なまとめで、しばしばこうした概念に当てはめられる「衛生仮説」という用語で誤解を招かないようにするのに役立つだろう。この記事で明確なように、衛生的であることが腸内の微生物の多様性の減少の原因ではない。多様性減少の要因が良く記述されていて衛生は言及されていない。衛生は一部の例外を除き全体として利益がある。
家庭衛生国際科学フォーラムとLondon School of Hygiene and Tropical Medicine名誉教授Sally Bloomfield教授
これはこの分野で尊敬されている専門家による重要な記事である。近年我々はいわゆる衛生仮説に取り憑かれていて、きれいになりすぎたという考えがアレルギーなどの慢性炎症性疾患の増加の真の原因の理解を妨げてきた。現在の課題は、感染症抗生物質の処方を減らし微生物の多様性を維持する効果的な衛生戦略を開発することである。これは可能であるが、まず最初に「衛生仮説」から抜け出さなければならない
Nottingham大学分子ウイルス学教授Jonathan Ball教授
我々は微生物と免疫系の相互作用に関心があり、「清潔な生活」とアレルギー関連慢性疾患の関連を重要視するようになった。しかしこの関連を証明するのは極めて困難である。
逸話的にはアレルギーは西洋諸国に多く研究はそれが細菌やウイルスや寄生虫への暴露が少ないせいだと示唆している。また我々の体内や表面にいる微生物が健康に重要であることも知っている。しかし微生物への暴露の欠如や組成の変化が広範な病気に影響しているのかどうかは私には明確ではない。関連がないと言っているのではない、強く断定するにはもっと多くの理解と証拠が必要だ。
(疑問:多様性が大事なら特定系統の微生物を毎日摂るのはダメなんじゃないですか?)