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ANSESは職業暴露限度の新しい助言を発表

ANSES publishes new recommendations for occupational exposure limits
26/07/2017
https://www.anses.fr/en/content/anses-publishes-new-recommendations-occupational-exposure-limits
2005年以降、ANSESは健康基準に基づく職業暴露限界(OELs)の設定に必要な科学的評価を担当している。2017年上半期にANSESは政府を代表する一組織としていくつかの製品の連帯専門評価報告書を発表した。本日発表された意見ではトリクロロエチレン、フタル酸ジ-n-ブチル(DnBP)、ブチルベンジルフタレート(BBzP)、2-エトキシエタノール(EGEE)、酢酸2-エトキシエチル(EGEEA)、n-ブタノールの大気中制限値設定に関するANSESの助言を示している。2017年2月から六価クロム、アクリルアミド、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ブチルベンジルの生物学的限界値も提案している。

新しい大気中制限値設定の助言
トリクロロエチレン
・この物質の腎毒性防止のために実用的な8時間職業暴露限界(8h-OEL )40 mg.m-3(1983年に通達で設定された405 mg.m-3に代わる)が推奨された。推奨された8h-OELの目的はトリクロロエチレンの発がん性の影響から守るのではなく、作業場所で暴露量を制限するツールを提供するためである。
・8h-OEL推奨量の5倍に相当する濃度が15分間以上超過してはならない:
フタル酸ジ-n-ブチル(DnBP):
・2 mg.m-3の8h-OEL(1987年に通達で設定された5 mg.m-3に代わる)がこの物質の生殖毒性の影響を防ぐために推奨された;
・8h-OEL推奨量の5倍に相当する濃度が15分間以上超過してはならない:
ブチルベンジルフタレート(BBzP):
・この物質の生殖毒性の影響を防ぐために13 mg.m-3の8h-OEL(現在の値なし)が推奨された;
・8h-OEL推奨量の5倍に相当する濃度が15分間以上超過してはならない:
2-エトキシエタノールと酢酸2-エトキシエチル(EGEEとEGEEA):
・この物質の血液毒性防止のために1 ppmの8h-OELが推奨された(2012年に法令で設定された2 ppmに代わる);
・8h-OEL推奨量の5倍に相当する濃度が15分間以上超過してはならない:
n-ブタノール:
・眼の刺激性の影響を防ぐために100 mg.m-3(1982年に通達で設定された150 mg.m-3に代わる)の短期暴露規準(15分-STEL)が推奨された。
さらに、化学物質への暴露評価に皮膚暴露を考慮に入れる必要性を示す「皮膚」表示がトリクロロエチレン、ブチルベンジルフタレート、2-エトキシエタノールと酢酸2-エトキシエチルに助言された。
作業場所の大気のこれらの6物質に薦められる測定方法については、ANSESはブチルベンジルフタレートに推奨できる測定方法がないことを強調した。
生物学的制限値の提案
2017年の初めから大気の制限値の様々な助言に加えて六価クロムとその化合物、アクリルアミド、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ブチルベンジルへの作業者の暴露モニタリングを改善するために、ANSESは生物学的制限値(BLVs)や生物学的基準値(BRVs)も推奨している。
六価クロムとその化合物:
・尿中クロムの生物学的限界値(BLV)は2.5 µg.L-1あるいは1.8 µg.g-1クレアチニン六価クロム1 µg.m-3の8h-OEL暴露に相当する。だが、この値は産業分野(クロムめっき)一種類で行われた唯一の研究に基づいて設定されたので、このBLVは六価クロム化合物への暴露だけに推奨される。混合暴露(六価クロムと三価クロム)の場合は、尿のクロム濃度への三価クロム暴露の寄与を考慮して尿の測定が行われるが、クロムの様々な化合物の大気の濃度それぞれの量を踏まえて解釈されるべきである;
・尿中クロムのBRV は0.65 µg.L-1 (または0.54 µg.g-1クレアチニン);
アクリルアミド:
・BRVは非喫煙者で85 pmol.g-1グロビン、喫煙者で285 pmol.g-1グロビンのアクリルアミドのヘモグロビン付加物(血液で測定);
フタル酸ジ-n-ブチル:
・尿中フタル酸モノブチル(MnBP) のBRVは70 µg.L-1、あるいは50 µg.g-1クレアチニン
フタル酸ブチルベンジル:
・尿中フタル酸モノベンジル(MBzP)のBRVは40 µg.L-1、30 µg.g-1クレアチニン

ANSESは発がん性、変異原性、生殖毒性物質は害の少ない物質や工程に代えることがフランスの労働環境の化学リスク予防の最優先であると繰り返し述べた。