食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

フィプロニルで汚染された卵の摂取に関する健康リスク評価

Health risk assessment concerning the consumption of eggs contaminated with fipronil
17/08/2017
https://www.anses.fr/en/content/health-risk-assessment-concerning-consumption-eggs-contaminated-fipronil
ANSESは本日ベルギーとオランダの農場で不正に使用された殺虫剤及びダニ駆除剤の有効成分フィプロニルで汚染された卵の摂取に関する健康リスク評価の結果を発表した。フィプロニルの毒性に関する入手可能なデータと、ベルギーとオランダの農場で現在観察されたフィプロニルの濃度を踏まえ、またフランス人の摂取習慣を考慮して、健康影響の発生リスクはかなり低いと思われる。
7月20日にベルギー当局は欧州委員会に、ベルギーとオランダの農場由来の卵と産卵鳥の肉にフィプロニルが検出されたと伝えた。これらのフィプロニル残留物の存在は家禽の赤いシラミを処理するためにフィプロニルを不正に使用したことに関連している。フィプロニルはペットの動物用医薬品の駆虫薬として認可されているが、製品摂取を目的とした家畜動物の治療には認可されていない。
これに関してANSESは2017年8月7日に、フィプロニルで汚染された可能性のある消費目的の卵の摂取によるヒトの健康へのリスクを科学的及び技術的に支援するための 農業・健康・消費者問題省からの正式要請を受けた。
フィプロニルの毒性
フィプロニルは中程度の毒性がある。フィプロニルを含む製剤への急性暴露を受けたヒトで観察される影響は一般的に軽度である。
摂取した時に生じる恐れのある影響は、フィプロニルの作用機序と実験データを考慮すると、神経毒性影響と、特に痙攣である。だがこの種の影響は、トキシコビジランスミッションの枠組みでフランスの中毒対策センターが記録しているフィプロニルを基にした製品を直接誤飲したケースでは観察されていない。国際的な文献で確認された数少ない痙攣の観察結果は、この種の製品を多量に摂取したことに関連している。急性参照用量の約10倍の用量では、子供を含み主に消化器症状で、軽度で回復する症状だけである。
フィプロニルへの繰り返し暴露は憂慮すべき影響はなく、軽い局所兆候だけを示している。
汚染された卵の摂取に関する健康リスク評価
国家食品摂取研究の枠組みでANSESが集めたデータに基づいて、リスク評価では急性リスク無しに一回に摂取できる卵の最大量を確認した。この評価は様々な年齢で行い、欧州で最近報告された汚染された卵のフィプロニルの最大濃度に基づく (1.2 mg/kg卵)。これを基本として、消費できる卵の最大数は1日当たり1(1〜3歳の子供には)〜10個(成人には)とさまざまである。
平均体重(kg) 最大濃度(mg/kg 卵) 卵の数
成人 70 1,2 ≤ 10
11歳〜17歳の子供 54 1,2 ≤ 8
3歳〜10歳の子供 25 1,2 ≤ 3
3歳の子供 14.5 1,2 ≤ 2
1歳〜3歳の子供 12.4 1,2 ≤ 1

Nombre d’œufs pouvant être consommés pour que l’exposition reste inférieure à la valeur toxicologique de référence aiguë (ARfD de 0,009 mg/kg pc)
(表の説明はフランス語のまま)

慢性リスクの定量評価は行わなかったが、卵と家禽肉への最大残留基準(MRLs)は既に存在する。これらの値に従うことで懸念される物質への繰り返し摂取が引き起こすリスクを防ぐだろう。
フィプロニルによる鶏肉の汚染が今までのところ報告されていないため、この評価は汚染された卵の摂取にのみ関係している。だが、ANSESはこの可能性を調査している。処理された産卵鳥の筋肉について欧州レベルで分析が行われていて結果は以下のようである。分析されたサンプルに観察されたフィプロニルの最大濃度は0.175 mg/kg筋肉だった。これらの知見を考慮して、この肉が摂取された場合、急性毒性参照用量を超えるためには成人では一回で汚染された家禽肉数キロを食べなければならない(子供は1キロ食べなければならない)。
結論として、ANSESに確認された汚染された卵や鶏肉の最大摂取量が超過する場合にはリスクを除外できない。だが、汚染された製品に現在観察されているフィプロニルの濃度に照らして、そしてこの物質のハザードの特性を考慮して、健康影響の発生リスクはかなり低いと思われる。
ANSESの助言
ANSESは最初に最大残留基準(MRL)を超えるフィプロニル濃度の製品を販売してはならず、市場から回収するべきだと繰り返している。
汚染された卵や卵製品を含む可能性のある調理食品のフィプロニルの汚染濃度に対策をする場合には、これらの食品の卵や卵製品の希釈要因を考慮して結果をMRLと比較する必要があるだろう。
汚染された、あるいは汚染されている可能性のある家禽、卵、卵製品を排除する必要がある場合には、実施される工程がフードチェーンの二次汚染をおこさないよう保証する必要がある。