食品安全情報blog過去記事

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難燃剤とIVFを行っている女性の妊娠を調査した研究への専門家の反応

SMC UK
expert reaction to study investigating flame retardants and pregnancies in women undergoing IVF
August 25, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-flame-retardants-and-pregnancies-in-women-undergoing-ivf/
EHPに発表された研究で、尿中代謝物濃度でみた有機リン難燃剤(PFRs)とIVF治療の結果を調べた。ある種の尿中のPFR代謝物の濃度とIVFの成功割合に負の関連を報告している。
McMaster大学産婦人科教授Warren Foster教授
著者らはIVFを行っている女性の尿中PFR代謝物の濃度と妊娠の結果の関連の可能性を探った。211人の女性の297のIVFサイクルを含む。つまり一人の女性が複数回寄与している。5つの代謝物の濃度とその合計が、IVFの少なくとも11のアウトカムについて評価された。
これは非常に興味深い研究だが、弱点は一人で一回以上寄与している検体への配慮がないこと、複数の比較をしたことへの調整がないことである。さらに暴露時期とその結果に関する知見がない。さらに不妊の期間やパートナーやその他の介入に関する情報がない。1年以上妊娠できなかった参加者の背景にある健康問題が暴露に関係する可能性があるかどうか明確ではない。そして参加者のリクルート成功率が60%であることなどからこの結果を妊娠にトラブルのないより広範な女性の妊娠に当てはめることの適切性を制限する。
それでも尿中PFR代謝物と一部のIVFの結果の関連は示された。これは因果関係やリスクを示すものではなくさらなる研究のきっかけとなるという科学的意味はある
Sheffield大学男性病学教授Allan Pacey教授
内分泌撹乱物質と呼ばれる環境中化合物がヒトの受精能力の脅威になるかどうかについては非常に高い関心がある。この研究の著者らはIVF治療中の女性の尿中難燃剤代謝物がIVFのたくさんの指標と関連するかどうかを調べた。
簡潔にまとめると一見良くできたような研究で解析の結果一部の代謝物が増加することと妊娠可能性の減少に関連があるように見える。額面通り受け取るとこのデータは女性の難燃剤暴露と妊娠に関連があるという考えを支持するように見える。しかしデータはそれを証明していないし(関連を示しただけ)、私は解釈には注意を求める。
例えばIVFをしていないカップルではどうか、世界中どこでも同じようなことがみられるのかはわからない。そして尿中代謝物濃度は女性の他のライフスタイル要因の代理指標かもしれない。
我々は火事の危険から守られる必要があるので、ヨガマットを捨てる前にもっとデータが必要である。またメカニズムについてももう少し知りたい。
エジンバラ大学生殖健康MRCセンター臨床生殖科学教授Richard Anderson教授
我々が暴露されている化合物が受精能に影響するのではないかという懸念が増加しているが、男女に影響があるという直接的根拠は限定的である。この研究は化学物質が成功率の少なさの原因であると証明することはできないがさらなる研究の基礎となる。

(いつものEHPお得意の多重比較でなんか有意差ついたよ報告だろうけれど。仮に額面通りに受け取って、臭素系難燃剤からリン系に変えても同じなら、化合物関係ないんじゃ、と思うけど。難燃剤って埃に多いので掃除しないと暴露量増える。掃除しないというのは体調悪いとか生活に気をくばらないとかの代理指標になりうるので)