食品安全情報blog過去記事

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論文

  • スペインの研究が心血管系疾患予防に朝食が重要であることを確認

Spanish research confirms the importance of breakfast in the prevention of cardiovascular disease
2-Oct-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-10/cndi-src092717.php
Journal of American College of Cardiologyに発表されたPESA-CNIC-Santander研究。この研究は4000人以上の中年オフィスワーカーの前向きコホートで、6年にわたって最新画像技術で臨床症状が出る前のアテローム動脈硬化の兆候をモニターされている。この研究で朝食が1日のカロリー摂取量の5%以下(2000カロリーなら100カロリー)の人のアテローム動脈硬化病変が高エネルギー朝食を摂る人の平均2倍であることが示された。

  • 男性がエプソム塩摂取後重症肝障害になった

Man develops severe liver damage after taking epsom salts
2-Oct-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-10/b-mds092817.php
BMJ Case Reportsに発表された症例報告。38才の男性が胆石治療目的でエプソム塩を使用し重症肝障害になった。
ナチュロパスに薦められて15日間エプソム塩をテーブルスプーン3杯摂っていた
(主成分水和硫酸マグネシウム

  • GM大豆油は肥満とインスリン抵抗性になりにくいが肝機能に有害

GM soybean oil causes less obesity and insulin resistance but is harmful to liver function
2-Oct-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-10/uoc--gso092917.php
カリフォルニア大学リバーサイド校のマウス実験がPlenishと普通の大豆、ココナツ、オリーブ油を比較
2014年にDuPontが発表したリノール酸の少ないGM大豆油Plenish®の長期代謝影響を比較した研究がNature Scientific Reportsに発表された。この実験ではPlenishの影響は基本的にオリーブ油と同等だった。
(いろいろ想像が書いてあるけれど実験条件なし。論文のタイトルとプレスリリースのタイトルがかけ離れているのでは?
マウスの大豆油誘発肥満にオメガ-3とオメガ-6オキシリピンが関与
Omega-6 and omega-3 oxylipins are implicated in soybean oil-induced obesity in mice
http://www.nature.com/articles/s41598-017-12624-9
C57BL/6雄マウスにカロリーの40%が脂肪の餌を24週間与えて各種検査。メタボロミック解析。)

  • 牧草を食べさせた牛は気候を救わない、報告が発見

Scienceニュース
Grass-fed cows won’t save the climate, report finds
By Jacquelyn TurnerOct. 2, 2017
http://www.sciencemag.org/news/2017/10/grass-fed-cows-won-t-save-climate-report-finds
もしあなたが「グラスフェッド(牧草で育てられた)」ハンバーガーだけを食べれば気候変動の罪から放免されると思っているのなら、考え直した方が良い。英国オックスフォード大学をベースにした独立科学者グループである食品気候研究ネットワークの新しい報告によると、一部の環境保護主義者達や田園詩人賛同者達が主張する、牧草を食べる家畜(牛や羊や山羊など)の二酸化炭素排出量が穀物を食べる場合より少ないという根拠はない。
「グラスフェッドの牛肉や乳製品に変えても気候問題は解決しない−家畜製品を食べる量を減らすことだけが解決方法である」と著者の一人であるAberdeen大学Pete Smithは言う。
家畜は世界の温室効果ガス排出の14.5%に寄与すると研究者らは推定している。動物は亜酸化窒素、二酸化炭素、メタンを相当量排出しその影響は増加している。世界中で貧困から脱する人が増えると肉を定期的に食べられる人が増える。世界の動物製品需要は現在1人一日あたり14gだが、2050年までには二倍以上になると予想されている。

  • 質素なメロン様果実から装飾性の高い瓜類の季節が始まった

Scienceニュース
Decorative gourd season started with a humble melonlike fruit
Sep. 29, 2017
http://www.sciencemag.org/news/sifter/decorative-gourd-season-started-humble-melonlike-fruit
装飾性の高い瓜類の季節である。でも何のおかげだろう?Molecular Biology and Evolutionに発表された新しい研究によると、それは9000万年から1億200万年前にウリ科のメロンの様な植物の染色体が2倍になり、それがキュウリやスイカや食用カボチャ(squash)やカボチャ(pumpkin)やズッキーニ、瓜に変化した。このプロセスは「ウリ科共通4倍体化」という。時間とともに追加の変異がおこってこの時期に装飾につかうウリ類ができた。ありがとう4倍体化!

  • カエルのオタマジャクシはお互いに自家製の毒を使う

Natureニュース
Toad tadpoles turn homegrown poisons on each other
Christie Wilcox 29 September 2017
http://www.nature.com/news/toad-tadpoles-turn-homegrown-poisons-on-each-other-1.22734
若い両棲類が、自分の種のライバルに毒を使うと考えられる最初の動物
多くのオタマジャクシは強力な毒で捕食者を追い払う−しかしこの毒は自分の仲間との戦いに勝つためにも役立つようだ−新しい研究が発見。
Functional Ecologyに発表された研究によると、ヨーロッパヒキガエル(Bufo bufo)は密集して育てると毒が強くなり、それが競争における優位性になるようだ。

  • The Lancet エディトリアル

飢餓と栄養不良のない世界を想像しよう
Imagine a world free from hunger and malnutrition
Volume 390, No. 10102, p1563, 30 September 2017
9月15日にFAOが年次報告書「世界の食糧安全保証と栄養の状態:平和と食糧安全保証のために回復力を構築する」を発表した。1947年以来毎年発表しているこの報告は「食糧と農業の状態」と四羽照れているが、今年は「栄養」をタイトルに入れた。また国連のパートナー、IFAD、UNICEF、WFP、WHOを含むより広範な著者を含めた。
(略)
世界のフードシステムが健康的でも持続可能でもない食事を提供し続ける限り、我々は持続可能でないフードシステムが環境への壊滅的影響をもたらし、栄養不良と過剰栄養を見続けるだろう。世界の紛争がさらに克服すべき障害ではあるが、先週の報告のショッキングな数字は言葉を実行に移し飢餓と栄養不良のない世界を想像から現実に変えていくことを急がせるべきである。

  • WHO紀要

Bulletin of the World Health Organization
Volume 95, Number 10, October 2017, 665-728
http://www.who.int/bulletin/volumes/95/10/en/
・ワクチンに関する科学に基づいたメッセージを伝える
ワクチンに関する虚偽の情報への公衆衛生対応は時に裏目に出る。この課題に対応する欧州の公衆衛生担当者の援助になることを目的とした一連のワークショップが行われ、Tatum Andersonが報告する
(一部抜粋)
反ワクチンは昔からある−最初の反ワクチンは19世紀の天然痘ワクチン反対である。反ワクチンの主張は時間経過であまり変わっていないがそのメッセージ伝達能力はデジタルメディアやソーシャルメディアの進歩で大きくなっている。公衆衛生当局の最大の課題の一つは間違った情報の増殖への対応方法で、単純に神話を否定するだけでは効果的ではなく逆効果になる可能性すらある。
一つの教訓は神話を繰り返さないこと。反ワクチンに凝り固まった極一部の人のマインドを変えようとしているのではない。彼らによって恐怖を煽られ躊躇している保護者達は科学的根拠に反対しているわけではない。公衆衛生当局は継続的に信頼を構築し公衆を教育していかなければならない。
ワクチン否定論者が使う5つのテクニックがある。一つは不可能な期待。ワクチンは100%安全であるべきと言う。二つ目は虚偽のロジック。例えばナチュラルは良く不自然なものは悪い。三つ目はインチキの専門家と本物の専門家を区別しない。4つめは政府がワクチンを推奨するのは製薬会社のためなどという陰謀論。5つめは選択性。特定の論文のみを根拠にする。
一般の人々の混乱の大きな原因はたくさんの矛盾するメディア報道である。
世界中のワクチン躊躇の理由には信仰、公衆衛生当局への不信、安全上の懸念、ワクチンのメリットがないと思われていること、がある。
公衆衛生当局は定期的にメディアに解説する必要がある。危機の時だけではなく常に予防接種への公衆の信頼を構築し人々の虚偽の情報への耐性を高める必要がある。
我々はワクチンには投資してきたが人々がついてこられるようにすることにはあまり投資してこなかった。人々に注意を払いもっと早くからその懸念を聞く必要がある。
(コミュニケーションへの貢献にはお金も出さず評価もしないことの帰結が嘘情報の氾濫と公衆衛生の毀損)