食品安全情報blog過去記事

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グリホサート

Glyphosate
http://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/glyphosate
2017年9月、グリホサートのEU評価の整合性に疑いをかける記事が、多くの欧州の報道機関で出され、特にドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)がEFSAに提出した評価報告書の内容が取り上げられた。EFSAは、EUの評価の頑健性を守る声明(https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/170922_glyphosate_statement.pdf)を出して応じ、報道の主張がピアレビュー(https://www.efsa.europa.eu/en/discover/infographics/who-assesses-pesticides-eu)方法についての誤解に基づいていることを指摘した。
2017年7月6日、欧州議会からの要請を受けて、EFSAと欧州化学庁(European Chemicals Agency: ECHA)は、Christopher Portier教授からJuncker長官宛に送られた、グリホサートの発がん性評価に関する手紙(https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/170706-glyphosate-letter.pdf)に返答した。
2017年6月8日、EFSAはいわゆる「モンサントの論文」の主張を受けて、グリホサートのEUでの評価に関する声明http://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/topic/20170608_glyphosate_statement.pdfを発表した。この声明は、欧州委員会の要請によるもので、活性物質の評価において公表科学文献を提出することに関するEU法の枠組みの概要を説明し、EU加盟国とEFSAの専門家がピアレビューの過程でそうした文献をどのように検討しているかを説明するものである。
この声明は、2017年5月に公表された声明(http://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/170523-efsa-statement-glyphosate.pdf)に続くもので、この以前の声明では、グリホサートについての議論の場への情報提供が進むように、またグリホサートのEUでの評価が確実に良く理解されるように当局が行ったパブリックコメント募集の結果の多くがまとめられている。
◇関連リンク
・グリホサート: EFSAはリスク評価における生データを公表・共有(09 Dec 2016)
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/161209
・グリホサート: EFSAはリスク評価における生データを公表・共有へ(29 Sep 2016)
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/160929-0
・グリホサート: 批判に対するEFSAの対応(13 Jan 2016)
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/160113

  • グリホサートの改訂評価報告書でなされている主張についてのEFSAの声明

EFSA statement addressing allegations on the renewal assessment report for glyphosate
22 September 2017
https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/170922_glyphosate_statement.pdf
最近の報道において、グリホサートについてEUが評価を行った部分が、この活性物質の再認可を申請する企業が規制機関に提出した情報からの盗用であると主張されている。
これらの主張には根拠がなく、EUの農薬評価の枠組みについての基本的な理解不足に基づいている。
「誤解のないように言うと、グリホサートのEUでの評価の過程は、EFSAを含む他のすべての農薬評価と同じ手法をとっており、市販認可、制限、禁止になるかどうかにかかわらず、適切に透明性をもって行われている。」とEFSAの事務局長Bernhard Url氏は述べた。
EU法に制定されているEUの農薬規制制度では、あらゆるリスク評価の出発点は、活性物質を市販しようとする企業が編集した文書である。」
Url教授は付け加えた:「企業の文書の一部が報告担当加盟国の準備する評価報告案の一節に表れることは、自然で必要なことである。」
企業が規制機関に提出する文書は、企業が委託して行われる必須の安全性試験や、問題とされる活性物質に関するピアレビュー済み文献を含んでいる。
企業は、定められたガイドラインに従って安全性試験とピアレビュー文献を要約し、規制機関にこの情報を提供するよう求められる。最初の段階では、この情報は報告担当加盟国(RMS)が評価するのだが、グリホサートの場合はドイツだった。
RMSは申請者が提出した全ての情報を審査し、関連性があれば、申請者の試験概要と評価を修正し、改正する。RMSが特定の概要や評価を承認した場合、当該文章を直接評価報告案に組み入れる。グリホサートの改訂評価報告(RAR)を精読すると、申請者が提出した文章に、RMSによって非常に多くの修正、改訂、改正例が加えられていることが明らかになる。
この最初の段階が完了すると、RMSが申請者文書を包括的に独立して評価をしたこととなり、この段階で、当該物質の安全性に関するRMS独自の評価が含まれることになる。
RMSが最初のリスク評価を完了した時点で、一般人と専門家の協議を含むピアレビューの行程を始めるために、EFSAにRAR案が提示される。RAR案は2015年11月からEFSAのホームページ上で見ることができる。
「残念ながら、近頃の異議申し立ては組織的なキャンペーンの一部であり、最近のものはグリホサートのEUでの評価の背後にある科学的過程の信用を落とすための一連取り組みであるようだ。」とUrl教授は述べた。
「もちろん我々は我々の作業を精査する全ての関係者を歓迎するが、同時に、法で規定された科学的行程の成果の完全性が、短期間の政治的利用のために意図的に傷つけられないことも重要である。
◇背景
2014年にEFSAは、グリホサートの安全性に関する意見や追加の科学情報を提供するために、全ての関係者と一般人を対象に、ドイツが提出したRAR案についてのパブリックコメントの募集を開始した。パブリックコメント募集は多くの意見を呼び込み、そのすべてが記録され、議論されて、グリホサートのピアレビュー報告としてEFSAのウェブページで閲覧できるようにされている。
パブリックコメント募集に加えて、2015年にはEFSAはRARについての専門的なピアレビューを組織した。その組織には、EFSA自身の科学者と一緒に、EU全28加盟国とノルウェーにある指定公共機関(環境保護庁、食品安全庁、化学物質庁その他)からの人員を加えて70人以上の専門家が含まれている。
パブリックコメント募集と専門家のピアレビューの結果は、EFSAが自身の最終結論に組み込んだ。最終結論は2015年11月に公表され、欧州議会と加盟国に提示され、欧州レベルのリスク管理者として下した判断が伝えられた。

EFSAのホームページで利用できる文書
・EFSAのグリホサートに関する結論
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4302
・改訂評価報告への最終的な追加
http://registerofquestions.efsa.europa.eu/roqFrontend/outputLoader?output=ON-4302
・グリホサートのピアレビュー報告書
http://registerofquestions.efsa.europa.eu/roqFrontend/outputLoader?output=ON-4302
・グリホサートの内分泌の可能性についてのEFSAの結論
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4979
・グリホサートの発がん性評価についての詳細
http://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/4302_glyphosate_complementary.pdf