食品安全情報blog過去記事

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論文

  • HeLaの幽霊:如何にして細胞系統の同定間違いが学術文献を汚染しているか

The ghosts of HeLa: How cell line misidentification contaminates the scientific literature
12-Oct-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-10/run-tgo101217.php
3万程度の生命科学論文が間違った細胞について報告している
PLOS ONEに発表。
PRINTEGERと呼ばれる、より広範な科学の高潔性(インテグリティ)に関する研究プロジェクトの一環。

  • 何故ワクチンという言葉が多分全くの間違いであるか

Scienceニュース
Why the word ‘vaccine’ is probably all wrong
By Kai KupferschmidtOct. 11, 2017
http://www.sciencemag.org/news/2017/10/why-word-vaccine-probably-all-wrong
1796年に英国の医師Edward Jennerが若い少年に牛痘を感染させた。その後天然痘ウイルスを注射したが彼は病気にならなかった。これが最初のワクチンの誕生で何百万人もの人を救った。ワクチンという言葉は牛を意味するラテン語のvaccaに由来する、と伝説では言う。しかしこの話は多分間違っている。本日NEJMに発表された報告によると、天然痘を予防するのに使われたワクチンは牛痘ではなく馬痘だった可能性が高いと研究者が言う。この最新の根拠は1902年にフィラデルフィアで製造された天然痘ワクチンの古い容器からきた。このワクチンはJennerの革新的発明から1世紀以上経ったものだが、これまで分析されたワクチンのなかでは最も古い。科学者がDNAを解析したところ馬痘ゲノムに最も良く似ていた。Jenner自身が実験には牛と馬の両方の材料を使ったと書いている。新しい知見は最初のワクチンが牛ではなく馬だったろうことを示唆する。あるいはエクシンequusineと呼ぶべきだろうか?

  • 薬物耐性マラリアが拡大している、しかし専門家はその世界へのリスクについて衝突

Drug-resistant malaria is spreading, but experts clash over its global risk
By Leslie RobertsOct. 11, 2017
http://www.sciencemag.org/news/2017/10/drug-resistant-malaria-spreading-experts-clash-over-its-global-risk
東南アジアで広く使用されている医薬品に耐性をもったマラリアが拡大している。さらにThe Lancet Infectious Diseasesの10月号にバンコクのMahidol Oxford熱帯病研究ユニットのチームが書いているのは、このアルテミシニン複合療法耐性マラリアは大メコン圏で他の系統より優位になっているという。これがアフリカに拡大したら悲惨なことになる、とWHOにPHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)宣言を求めている。しかしWHOはこの報告を「何も新しいことはない」と片づけ、狼少年による誇大主張だという。
(いろいろ長い記事。最後は「我々は政治にではなくデータにより注目する必要がある」)

  • 食糧正義と乳児栄養格差解消のための行動をよびかける

Call to action on food justice and overcoming disparities in infant nutrition
10-Oct-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-10/mali-cta101017.php
Environmental Justiceに発表された挑発的論文で、「最初のフードジャスティス運動」として乳児に最初の6ヶ月間は母乳のみを与えその後栄養のある食品を与えることが全ての赤ちゃんに対して達成できていないことへの対策を要求する。
(母乳は正義だとしてミルクを肥満の原因等と非難している。母乳にPCBやDDTが検出されるのは正義ではないからダメとか。Justiceを連呼するペーパー。わりと怖い。こんなやりかたしたら母乳を与えることに苦労している母親達を追いつめるだけだと思う。)

  • 自家製ポピーシードティーは致死的になりうる、研究が発見

Home-brewed poppy seed tea can be lethal, study finds
10-Oct-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-10/shsu-hps100317.php

自家製ポピーシードティーのLC-MS/MSによるモルヒネコデイン、テバインの定量
Quantification of Morphine, Codeine, and Thebaine in Home-Brewed Poppy Seed Tea by LC-MS/MS
Deborah Powers et al.,
Journal of Forensic Sciences
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1556-4029.13664/full
剖検で血中モルヒネ濃度が高い21才と24才の二つの事例が報告された。彼らは自家製ポピーシードティーから致死量のモルヒネを摂取した疑いがある。オンラインで販売されている各種ポピーシードを入手し、ドラッグユーザーフォーラムで提唱されている4つのレシピで抽出しモルヒネコデイン、テバインを定量した。種子のモルヒネコデイン、テバインの濃度はそれぞれ<1–2788 mg/kg, <1–247.6 mg/kg,および <1–124 mg/kgで、抽出条件に関わらず致死量が抽出できる。
アルカロイド含量は製品によって大きく異なる。消費者には知る方法はない。芥子の実は現在麻薬としての規制対象になっていないが状況によっては危険である、と。収穫の時期や方法によっては種にアルカロイドがつくことが報告されている)