食品安全情報blog過去記事

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食品と接触する資材中の印刷インクや一級芳香族アミンについてのFAQ

Frequently Asked Questions about Printing Inks and Primary Aromatic Amines in Food Contact Materials
BfR FAQ of 22 June 2017
http://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_about_printing_inks_and_primary_aromatic_amines_in_food_contact_materials-191650.html
印刷インクは、対策が取られていない限り、食品に移行して消費者に摂取される可能性のある物質を含んでいる。このため、ドイツ連邦食糧農業省(BMEL)は、消費財条例改正案、いわゆる「印刷インク規制」を提示した。
BfRは、食品と接触する資材や製品中の印刷インクおよび一級芳香族アミンにより生じ得る健康リスクについて、よく寄せられる質問を編集し、以下に示した。
Q: 食品と接触する製品に使用される印刷インクはどの程度安全?
A: 欧州印刷インク協会が提出した情報によると、印刷インクにはおよそ5,000種類の化学物質が使用されている。たとえあったとしても、これらの物質の90 %については不十分な毒性データしか得られていないため、今のところ食品と接触する資材に使用される印刷インクによる健康リスクを包括的に評価するのは不可能である。
Q: 消費者が直面する健康リスクは?
A: 食品への印刷インクの移行により生じる可能性のある健康リスクは、各化学物質の特性によって異なる。このため健康の観点からそれらの化学物質を評価しなければならず、それに応じて食品への移行を規制しなければならない。
例えば、一級芳香族アミン(PAA)は、印刷された包装材や紙ナプキンでも使用される顔料に不純物として含まれ、食品に移行することがある。いくつかのPAAは発がん性や変異原性を有する。長期間の接触によりPAAは食品に移行する可能性があり、その後、ヒトに摂取される可能性がある。
Q: 一級芳香族アミン(PAA)とは?
A: 「一級芳香族アミン(PAA)」という名称は、化学物質の一群を示すもので、それらの最も簡単な代表例はアニリンとも呼ばれるアミノベンゼンである。アゾ顔料と呼ばれる着色料の製造に用いられ、黄色‐オレンジ‐赤の範囲の色を発する役目を果たす。
Q: PAAはどのようにして印刷インクに入り込む?
A: アゾ顔料は印刷インクの着色成分として使用されるため、それらは紙ナプキンやパンの包みなどの食品と接触する印刷材料や印刷物にも使用されていることになる。インクが製造される際に使用されるPAAの残留物は、最終的にできる顔料に不純物として残っている可能性がある。
Q: PAAはどのように食品に移行する?
A: 印刷が施されたナプキンを使用して食事を出したり食品を包んだりする際、印刷面が長期間食品と接触すると、その結果印刷インク成分が移行し得る。長期間紙で食品を保存する場合にも同じことが当てはまる。
Q: PAAが消費者に引き起こす健康リスクとは?
A: 健康の観点から、PAA化合物類を代表するいくつかの化学物質の発がん性に注意を払わなければならない。多くのPAAは発がん性に関して分類されていないが、いくつかのPAAはヒトに対する発がん性物質として知られている。動物実験を含む研究に基づき、ヒトに対して発がん性の可能性があるとみなされているものもある。カラフルに印刷された紙ナプキンやパンの包みにおいては、食品と接触する他の資材と同様に、いくつかのPAAが食品に移行して健康リスクを引き起こす可能性がある。得られている情報に基づくと、皮膚や粘膜(唇)との短時間の接触では、健康を脅かすPAAの移行は起こりそうもないとみなさざるを得ない。
Q: 食品と接触することを意図した資材や物品からのPAAの移行についてはどのような規制がある?
A: 食品と接触することが意図されているプラスチックの材料や品物に関するEU規則No. 10/2011によると、PAAの移行は、それぞれを特定せずに全体として測定した場合でも非検出でなくてはならない。この要件を実証する場合の検出限界値は、食品1 kg当たり0.01mgとされている。この限界値は他の素材からのPAAの移行を評価するためにも使用されている。
Q: 食品と接触する資材に用いられる印刷インク中のPAAに関してBfRが提言していることは?
A: BfRは、PAAを発がん性有りと分類する際の基準値をレビューするよう提言している。消費者とこれらの化学物質との接触は、できる限り少なくする必要がある。BfRの見解では、これらのPAAにはALARA原則を当てはめるべきで、食品と接触する資材におけるPAAの存在は技術的に可能な限り低くするべきと考えている。PAA全量についての既存の基準値に加えて、BfRは、発がん性有りと分類された個々のPAA化学物質の移行に対して、追加制限を設けることを提言している。食品や食品類似物へのこうしたPAAの移行は、食品ないしは食品類似物1 kg当たり0.002mgという分析的検出限界値でも、すなわちPAA全量についての現行の基準値の1/5でも検出されてはならない、というのが提言である。この提言は、消費材製品規制(「印刷インク規則」)の改正に向けた最新の規制案に準拠している。また、BfRは、発がん性の芳香族アミン成分を含まない顔料だけを使用することも提言している。
Q: BfRが食品と接触する資材の印刷に対して一般的に提言することは?
A: 基本原則として、食品と接触する資材が印刷インク成分の移行の可能性を妨げるバリアを持たない場合、そうした資材の印刷に使われる物質は、健康についての評価が実施済みのものに限られるべきである。BfRは、ドイツ連邦食糧農業省がいわゆる「印刷インク規制」の改定案に含めているリストに対応したポジティブリストを作成した。そのポジティブリストには、リスク評価の結果が得られている化学物質だけが収載されており、それらの化学物質の健康への影響が評価できるようになっており、食品への移行の安全な基準値が導出されている。同等の法規則はかなり以前から存在していて、食品と接触することを想定しているプラスチック製品の製造に使用される化学物質に関して、こうした取り組みが意味あるものであることを証明している。
Q: 消費者ができることは?
A: アゾ顔料からPAAが食品に移行するのを避けるためのBfRの提言は、主に管理当局と製造業者を対象としている。根本的に、選択肢としては、長期間にわたり家庭で食品を保管する際には印刷された包装やナプキン(黄色‐オレンジ‐赤の範囲の色のもの)の使用を避けることが考えられる。

食品と接触する資材中の印刷インクや一級芳香族アミンに関するBfRのウェブサイト上の追加情報
http://www.bfr.bund.de/cm/349/primary-aromatic-amines-from-printed-food-contact-materials-such-as-napkins-or-bakery-bags.pdf