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ヒトと食用動物における抗菌剤耐性と抗菌剤消費の状況調査で用いられる成績指標のリストについてのECDC、EFSAおよびEMA共同の科学的見解

ECDC, EFSA and EMA Joint Scientific Opinion on a list of outcome indicators as regards surveillance of antimicrobial resistance and antimicrobial consumption in humans and food-producing animals
EFSA Journal 2017;15(10):5017 [70 pp.]. 26 October 2017
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5017
ECDCとEFSAとEMAは共同で、抗菌剤の使用や抗菌剤耐性(AMR)の出現をヒトと食用動物の両方で減少させる活動の進捗状況をEU加盟国が自ら評価する際に役立つ、EU内で統一された成績指標のリストを既に確立していたところである。そこで提示された指標は、公表時点までに加盟国によって集められデータに基づいている。ヒトにおける抗菌剤の消費に関して提示された指標は、抗菌剤の総摂取量(全身的に用いられた抗菌剤に限る)、広域スペクトルから狭域スペクトルに至る特定の種類の抗菌剤についての地域別摂取率、および医療の場で用いられる一部の広域スペクトル抗菌剤の消費量である。ヒトにおけるAMRの指標として提示されたものは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ならびに第三世代セファロスポリン耐性大腸菌、アミノグリコシド類やフルオロキノロンや第三世代セファロスポリンに耐性の肺炎桿菌、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌ならびにマクロライド系耐性肺炎連鎖球菌、およびカルバペネム耐性肺炎桿菌である。食用動物における抗菌剤消費の指標としては、獣医用抗菌剤の合計販売量、第三および第四世代セファロスポリン系抗菌剤の販売量、キノロン系抗菌剤の販売量、およびポリミキシンの販売量などが提示されている。そして、食用動物におけるAMRの指標として提示されたのは、所定の薬剤すべてに対する大腸菌の感受性、ESBLやAmpCを産生する大腸菌を含む試料の割合、3系統以上の抗菌剤に耐性を持つ大腸菌の出現、およびシプロフロキサシンに耐性を持つ大腸菌の出現である。調べる対象がいずれの場合にも、選ばれた指標は、少なくとも5年ごとに再検討すべきではあるが、抗菌剤の消費やAMRを監視するためには妥当なものであると考えられる。ヒトにおけるAMRの指標を除き、示された指標は全般的に、1種類の動物や1つの動物生産部門などの特定の調査対象において、本来の目的である治療の効果を調べるのには適したものではない。管理における判断は、決してこれらの指標だけに基づいて行われるべきではないが、これらの指標に係る基礎データとそれらの分析結果を考慮する必要はある。