食品安全情報blog過去記事

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その他

  • パブリックエンゲージメント(一般参画):実践的ガイド

Senseaboutscience
Public engagement: a practical guide
Published: 7 November 2017
http://senseaboutscience.org/activities/public-engagement-guide/
人々と関係せよ。そして早期に関係せよ
研究者が研究知見をコミュニケートするために人々と関わり合うための実践的ガイド
プロジェクトの初期から、最も困難な課題についてコミュニケーションをとるためのガイド
「子どもの心臓手術アウトカムを理解する」プロジェクトの経験から。
5段階のアプローチ
ステップ1 スコーピング(事前調査)
人々が何を言っていて背景となる想定を調べる
ステップ2 参加させるべき人
誰が関心がある?関心が無くても参加すべき人は?
ステップ3 計画
妥当な人に届くような形で内容を提案
ステップ4 ユーザーテスト
一緒に開発
ステップ5 ひろめる
この知見を知るべきなのは誰?広報してくれる人は?どうやってシェアできる?

  • がん詐欺:もぐらたたき

Cancer Quackery: Whack-a-Mole
by Berkeley Wellness Published November 07, 2017
http://www.berkeleywellness.com/supplements/other-supplements/article/cancer-quackery-whack-mole
もしあなたががんと診断されているあるいはかつてがんだった、家族ががんだとしたら、無数のダイエタリーサプリメントが広告する「抗がん作用」という宣伝に魅力を感じるのは避けられない、特にオンラインやソーシャルメディアでは。抗がん作用やその他の治療効果を宣伝するのは違法である。そのような製品はFTCやFDAが取り締まるが、彼らのリソースは足りない。特に何千もの日々変わるインターネットサイトについては。それはまるでもぐらたたきのようで、規制機関がどこか一ヶ所を叩くと他のどこかに3つ現れる。どれひとつとして、少なくとも我々がみかけた範囲では、その宣伝を裏付ける臨床的根拠はない。あるのは一見科学っぽい無意味な言葉の羅列と個人の体験談とあなたからお金を取るためにデザインされたその他の曖昧なものだけである。
最近FDAは14の企業に65のサプリメントについて警告文書を送った。サプリメントの中身は大量ビタミンCからニンニク、緑茶、キノコ、無数のハーブ、ビタミン、「特許成分」までなんでもありである。警告に対応して企業は宣伝文句をしばらくの間トーンダウンするか、あるいは単に製品名を変えて包装しなおして再び売るだろう。
基本:サプリメントを販売しているコーナーやインターネットにはがんを治したり予防したりできるものは存在しない。実際にはがんサバイバーや治療中の人はサプリメントを特に警戒しなければならない。実際一部の研究では大量の亜鉛葉酸、抗酸化物質はがんの再発を促進したり化学療法に干渉したりすることが報告されている。注意。

  • インドの科学者が疑似科学について正々堂々と意見を述べるように強く求められる

Natureニュース
Indian scientists urged to speak out about pseudoscience
T.V Padma 07 November 2017
https://www.nature.com/news/indian-scientists-urged-to-speak-out-about-pseudoscience-1.22957
占星術のワークショップがキャンセルされ、研究者らに非科学的信仰を撲滅するよう呼びかける
インドの政府機関のサポートで地盤を築きつつある疑似科学に対抗するよう、インドの主導的科学団体が国中の科学者に強く呼びかけている。
11月25-26日に、一流の名高いインド科学研究所(IISc)で同窓会が占星術のワークショップを計画していて、科学者からの強い批判で10月28日にキャンセルされた。
キャンセルの2日前にIIScに数十人の科学者が署名した抗議文書が所長宛に届けられた。所長はワークショップの企画には関与していない。同窓会長のコンピュータ科学者Muthya Ravindraによるとこのワークショップは会員の一人が企画したものでまだ検討中である。
Ravindraは科学者や研究者からは批判されているものの、人々は星占いを信じていて新聞や雑誌やテレビに占いコーナーがある、という。科学者がそれらに対してどういう役割を果たすべきかはわからないという。
インドの政権党Bharatiya Janata Party (BJP)は大学で星占いを教えることを支持している。
インドの科学コミュニティにおける反科学的政策への警鐘はしばしば吹き上がってきた。懸念の一つは保健医療分野でのpanchgavya(牛の尿、糞、ミルク、ヨーグルト、清澄化バターから作った万能薬)の推進である。インド科学技術省、バイオテクノロジー部、科学工業研究評議会の支援でインド工学研究所がpanchgavya研究を評価するための2日間のワークショップが行われた。医師であるインド科学大臣Harsh Vardhanが「panchgavyaのルーチン使用で気候変動や薬剤耐性、栄養不良、世界の健康などの世界的問題の解決に役立つ、と強調した」。そしてワークショップの後インド科学省は国家計画を開始するための委員会を設立した。

  • 米国政府は病気と闘うための「キラー」蚊を認可

US government approves 'killer' mosquitoes to fight disease
Emily Waltz  06 November 2017
http://www.nature.com/news/us-government-approves-killer-mosquitoes-to-fight-disease-1.22959
EPAは20州とワシントンDCで昆虫を放出することを認めるだろう
EPAが11月3日にバイテクベンチャー企業MosquitoMateに細菌Wolbachia pipientisを野生の蚊に感染させる実験室で育てた蚊を放出することを認めると語った。

  • 遺伝子組換えリンゴが米国で販売される、しかし消費者は食べるだろうか?

Genetically modified apple reaches US stores, but will consumers bite?
Amy Maxmen
07 November 2017
https://www.nature.com/news/genetically-modified-apple-reaches-us-stores-but-will-consumers-bite-1.22969
‘Arctic リンゴ’の成功は新世代合成食品の予兆となる可能性
今月、米国中西部の食品小売店で初めて袋入りスライスリンゴが販売される。このリンゴは空気に触れても茶色にならない。‘Arctic リンゴ’は農家のためではなく消費者を喜ばせる性質のGMOである。まだ販売されていないがこれから可能性があるものとしては組換え酵母の作った大豆タンパク質でできた肉なしのバーガー、シーフード幹細胞から育てた魚の切り身、遺伝子編集マッシュルームなどがある。多くの小規模バイテク企業がArctic リンゴの様子を注視している。
「もしこのリンゴが売れたら、他の多くのものに道が拓かれるだろう」と褐色にならないマッシュルームをCRISPR編集で作っているペンシルベニア大学の植物病理学者Yinong Yangは言う。
消費者団体Center for Food SafetyのBill Freeseはこのリンゴが袋にGMOと表示する代わりにQRコードで情報提供していることを十分ではないという。
開発者にとっての懸念は消費者の反応だけではない。米国の規制プロセスの不透明さも障害である。‘Arctic リンゴ’は評価に5年かかったが同じく褐色にならないGMジャガイモは2年だった。
(リンゴの品種なんてイヤなら買わなきゃいいだけなのに買いたい人の選択肢を奪おうと頑張るのが活動家)

  • 世界で最もよく使われている殺虫剤を巡る苦い戦い

Natureニュース特集
The bitter battle over the world’s most popular insecticides
Daniel Cressey 08 November 2017
https://www.nature.com/news/the-bitter-battle-over-the-world-s-most-popular-insecticides-1.22972
規制担当者がネオニコチノイドの禁止を検討しているためそのミツバチへの害を巡る議論が大荒れ
Maj Rundlöfはネオニコチノイドについての考えを変えたときのことを覚えている。2013年12月にスウェーデンのLund大学のオフィスで、ポスドクのGeorg Anderssonと一緒にデータを見ていた。それはネオニコチノイド処理した作物をミツバチに与えたらどうなるのかを調べるもので、「正直何の影響もないだろうと思っていた」。ミツバチの巣への影響はあまりなかった、しかしマルハナバチでは違っていた。この研究が2015年に発表されると世界中でニュースになった。
ミツバチが多くの地域で減っていて、寄生虫や病気や食糧源の減少などが疑われているが最も注目されているのはネオニコである。Rundlöfの研究が発表される前に既にEUは最もよく使われている3種のネオニコに厳しい使用制限をしていた。しかし農家や農薬業界や一部科学者はこれは予防的措置であって根拠は主に実験室でのもので限定的であると言っていた。現実世界での害についての根拠を示したRundlöfの研究以降、野外での根拠が増えて環境団体は広範な使用禁止を要求している。規制機関は間もなく決定を予定している。今月EFSAがネオニコの使用制限の根拠の再評価を完了する予定で、EUはどうするか決める必要がある。EPAは独自のレビューを来年完了する予定である。フランス議会は一部例外はあるものの2018年にネオニコを禁止する法案を成立させた。
しかし業界と一部科学者は根拠は決定的ではないという。状況は複雑で、一部の研究が一部の条件で一部のハチに害があるが他の研究では害がない。結果はいろいろな要因に影響されている可能性がある。この問題に取り組んでいる科学者は、状況は悪化しているという:つまり何らかの新しい研究は直ちに激しく両側の凝り固まった活動家によって宣伝される。この問題についての過去最大の研究ですら合意を形成できなかった。最後は反対派の合意がないまま政治的あるいは規制的決定がなされるだろう−「異論の多い政治的な議論になった問題についてはよくあるパターンで」とミツバチの健康を研究しているSainath Suryanarayananは言う。
世界で最も愛された殺虫剤
1980年代初期、東京のNihon Tokushu Noyaku Seizo(バイエルの傘下)の科学者が、10年前にカリフォルニアで作られた殺虫剤ニチアジンの改良をはじめた。彼らは害虫を殺す能力が100倍以上の新しい化合物を発見し、1990年代にイミダクロプリドとして発売し、間もなく世界で最もよく使われる殺虫剤になった。2000年代半ばまでに同類の化合物が全ての殺虫剤の1/4を占めるまでになった。(図と説明有り)
フランスでは1994年にひまわりの種子をイミダクロプリドで処理したものが販売されたときに養蜂家が警鐘を鳴らした。その懸念により1999年にイミダクロプリド処理ひまわり種子が禁止され今でも継続している。これは有害であることが証明されたからというより予防原則に基づくものであるが。科学者はその根拠を探すのに急いだ。研究者は高用量のネオニコチノイドを与えたハチが死ぬことをすぐに発見した。それから致死量以下でも行動異常になることなどを示した。全ての段階で批判者はその実験はどのくらい現実的なのかを問うた。
野外へ
実験室での研究が続く一方で研究者らはフィールドにも向かいはじめた。2012年にDecourtyeらが「チアメトキサム中毒」と呼ぶミツバチが巣に帰るのが困難になる症状を報告した。それでもこの研究はまだミツバチに餌としてネオニコを与えたものであった。同時期英国のチームがリスクに晒されているのはミツバチだけではない可能性を発見した。マルハナバチイミダクロプリドを与えると成長が遅い。サセックス大学のミツバチ研究者Dave Goulsonらはマルハナバチ保存団体を立ち上げ、ネオニコへの懸念を指摘した。Rundlöfの研究は中でも最も現実的なものだった。
2017年半ばには過去最大の野外研究が長く待たれていた結果を報告した。この研究は学者側と企業側で異なる解釈をされた。(詳細略)
複合影響
研究者達は単一の殺虫剤とミツバチの害という単純な関連以上のものを探している。ピレスロイドとの同時影響など
研究者の中にはネオニコを使うことには全く利益がないのではと疑う人もいる。予防的使用は収量に影響しなかったという研究がある。一方EUでのネオニコ制限以降菜種の収量は4%減ったという研究がある。制限の影響があるかないかに関わらず、農家は使用制限に怒っている。逸話的報告ではネオニコ(種子処理)の代わりにピレスロイドの使用(散布)が増加したという。ピレスロイドは水棲環境に有害で大量に使うことにはリスクがある。
Bという言葉
一部の国の規制機関はネオニコについてのさらなる対応をまもなく決定するだろう、そしてそこでも研究者は分かれるだろう。グリーンピースや農薬アクションネットワークなどの活動家達は全ての作物への使用禁止を主張している。
しかしたくさんの農家がネオニコに依存している。一化合物を厳しく制限すれば他の有害化合物をもっとたくさん使うことになる。それが良いことだろうか?
多くの研究者は完全禁止を主張するには躊躇がある。Rundlöfのような一部の科学者は政策に助言をするのは自分の仕事ではないという。
規制がどうなろうと、Goulsonはこの問題について合意ができる可能性にはますます悲観的になっている。「ここまでくると、みんなが落ち着いて答えを出すために、科学者ができることはないと思う」