食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

expert reaction to Michael Gove announcement on neonicotinoids
November 9, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-michael-gove-announcement-on-neonicotinoids/
英国の環境大臣Michael Goveが、英国は欧州全体でのネオニコチノイドの完全禁止を支持すると発表した
Rothamsted研究所長Achim Dobermann博士
この決定で最も心配なのは、何かを禁止するならその結果どうなるかについて完全に知っておく必要がある、ということである。わかっていることとわからないことがある。もし代用品がないのなら、そのせいで古くてもっと悪いものを使わざるを得なくなる、あるいは何か新しいものを使ってあとで実はより悪いものだったとわかることになるかもしれない。農業の実態や現在のアプローチのリスクとベネフィットについての全体的視点が十分ではない。人々はリスクにばかり注目していてメリットが見えていない。
Exeter大学生態学保存センターLena Wilfert博士
この政治的スタンスの変更はミツバチやマルハナバチのような野生の授粉媒介者にとっては歓迎である。害虫や病原体は我々の食糧安全保証にとってリアルな脅威であるが、それは統合的害虫管理(IPM)で対応できるだろう。ネオニコチノイドの使用についてさらに対応すべき重要なポイントは温室の観賞用植物で、現時点では対応されていないようだ。都市の庭が野生のハチにとってますます重要な住処になってきた。
Queen Mary University London (QMUL)病理学名誉教授Colin Berry卿
これは如何にして分極化した主張が肯定派あるいは否定派が科学を参照することを止めてしまうかの非常に良い例である。ネオニコには害はあるだろうがデータは至るところにあり、やるべきなのはリスク/ベネフィット解析である
生態学水分学センター上級生態学者James Bullock教授
ネオニコチノイドを単純に他の有害化合物に置き換えるべきではない。研究者は農家に代用となる自然をもとにした持続可能なアプローチの知識と技術と道具を与えることが重要である。生態学水分学センターではそのようなアプローチの一つを提供している
生態学水分学センター生物多様性科学部長Richard Pywell教授
私は欧州委員会と英国政府がネオニコチノイド殺虫剤の使用をさらに制限する提案を歓迎する。この提案が採択されたら、欧州と英国が、我々のミツバチと授粉媒介者にとってより良い場所になる結果を導くかどうかを評価することが重要である
Dundee大学神経生物学准教授Chris Connolly博士
ミツバチのネオニコチノイド暴露を排除するたった一つの方法が完全禁止なので私はMichael Goveを祝福する
Rothamsted研究所生化学と作物保護部長Lin Field教授
花をつけることのない作物にまで禁止することは英国の農家に問題をおこすだろう、特に甜菜と穀物で。甜菜にはピレスロイドとカルバメートに耐性が広がっているアブラムシとそれが運ぶウイルスへの代用法がない。穀物のアブラムシにはピレスロイドがまだ有効だが耐性遺伝子が発現していてピレスロイドしか使えないとなると耐性が選別されるだろう。
Sussex大学生物学教授Dave Goulson教授
私は政府がネオニコチノイドと野生の昆虫の減少を関連させたことを嬉しく思う。しかし代わりの殺虫剤を使うのでは進歩しない。農家が単一作物の栽培による問題の解決のために殺虫剤を使うことを止めるよう薦める必要がある

  • グリホサートとがんについての専門家の反応

expert reaction to glyphosate and cancer
November 9, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-glyphosate-and-cancer/
大規模前向き研究でグリホサートの使用とがんの発症率の関連を検討した論文がJournal of the National Cancer Instituteに発表された
ケンブリッジ大学リスクの公衆認知Winton教授David Spiegelhalter卿
この大規模で注意深い研究はグリホサートの使用がどんな種類のがんとも有意に関連しないことを示す。関連の可能性があると報告されている急性骨髄性白血病(AML)は22種類の異なるがんを調べた場合に偶然生じることが予想される以上のものではない。実際のところ精巣がんとは統計学的に有意にネガティブの関連になるところだった。つまりグリホサートを使うとリスクが低くなる−これもまたこの種の偶然でおこることが予想される種類のものである。
Glyphosate Use and Cancer Incidence in the Agricultural Health Study’
Gabriella Andreotti et al
https://academic.oup.com/jnci/article-abstract/doi/10.1093/jnci/djx233/4590280?redirectedFrom=fulltext

  • 抗酸化物質の多い食品を食べることと2型糖尿病リスクを調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at eating antioxidant-rich foods and risk of type 2 diabetes
November 9, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-eating-antioxidant-rich-foods-and-risk-of-type-2-diabetes/
Diabetologiaに発表された研究で抗酸化物質の多い食品を食べることと2型糖尿病リスクの低いことが関連していた
Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway博士
統計学的には、これはたくさんの女性のデータを用いた妥当な研究である。しかしこの知見は、論文で明確に言っているように、食事中の抗酸化物質の役割については示唆する以上のことはできない。理由はこの研究が観察研究であって、つまり研究者らが女性達に食事について尋ね、それから糖尿病になるかどうかを追跡した。従って抗酸化物質をたくさん食べたことは一つの可能性としてはあるが、他の可能性もある。多分、抗酸化物質をたくさん食べた人とそうでない人の間には他にも違いあるだろう、そしてその違いが糖尿病リスクを下げて抗酸化物質は全く関係ないかもしれない。研究者らは喫煙やBMIなどのいわゆる交絡については統計的に検討しているがそのような修正では全ての交絡は排除できない。例えば抗酸化物質を多く食べることは別の何かを少なく食べることになる可能性がある観察研究では確実なことは言えない。
さらに論文でも明確に指摘しているが他にも注意点がある。抗酸化物質をたくさん食べる女性の糖尿病リスク削減の程度の大きさである。メディアは27%減ったと報道している。抗酸化物質の摂取量が最も少ない女性に比べて最も多い女性の糖尿病リスクは概ね3/4だという。しかし実際のリスクについてはこの研究では直接言及していない。いずれにせよ研究対象は典型的フランス人集団ではなく、社会的に豊かで健康意識が高い。この結果が典型的フランス人にあてはまるかどうかはわからないし英国人砥用がうだろう、そして男性でも違うだろう。
食事調査は研究開始時のアンケートのみなので時間とともに変化したことは考慮されていない。さらに抗酸化物質が生物学的にどう作用すると糖尿病リスクの削減になるのかもわからない。
Quadramバイオサイエンス研究所栄養研究者で名誉フェローIan Johnson博士
この研究は、既に良くわかっている、食事が糖尿病リスクに影響する、ということへの根拠を追加した。この種の観察研究は関連を見つけるが因果関係はわからない。著者らは抗酸化物質レベルとの関連を示したが、食品は非常に複雑なので、このような方法で定義された食生活は、リスクに影響する他の特徴も持っているだろう
King’s College London糖尿病と栄養学部のポスドク研究者Charlotte Mills博士
そのようなデータを解釈するには注意が必要である。実験室で抗酸化物質として作用したとしてもそれが食べられた後の人体でどう使われるかは必ずしも予想できない。仮にポリフェノールが糖尿病リスク削減に寄与するとしても、それが吸収される前に代謝されることを考えると抗酸化メカニズムによるとは考えにくい。