食品安全情報blog過去記事

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世界抗菌薬啓発週間, 2017年11月13〜19日

World Antibiotic Awareness Week, 13-19 November 2017
7 November 2017
http://www.who.int/campaigns/world-antibiotic-awareness-week/en/

  • 増え続ける薬剤耐性と戦うために抗生物質を賢く使う

Use antibiotics wisely to combat rising drug resistance
10 November 2017
http://www.who.int/campaigns/world-antibiotic-awareness-week/2017/launch-event/en/
世界抗菌薬啓発週間にあたって、FAO (Food and Agriculture Organization: 国連食糧農業機関)、WHO (World Health Organization: 世界保健機構)およびOIE (World Organisation for Animal Health: 国際獣疫事務局)は、薬剤耐性の出現を減らすために、ヒトや動物における責任ある抗生物質の使用を呼び掛けている。
薬剤耐性菌の出現で抗生物質が効かなくなってきており、感染症治療の脅威になっている。
抗生物質はしばしば過剰に処方され、過剰に使用されている。処方無しで使われる場合もあり、薬剤耐性の状況をより悪くしている。風邪やインフルエンザ等のウイルス感染症に処方したり、成長促進目的で動物に使用したりするのは誤用である。
これらの問題に対処するため、WHO、FAOおよびOIEは、『ワン・ヘルス』(One Health)アプローチの枠組みの中で協働し、薬剤耐性微生物の出現と蔓延を防ぐ最良の実務を推進している。
“WHOの事務局長Tedros Adhanom博士は、「薬剤耐性に取り組まないと、普通の感染症に人々が怯え、ちょっとした外科手術で患者の命を危機にさらす時代に逆戻りしていまう。」と述べている。
FAOの事務局長José Graziano da Silva氏は、「食糧システムにおいて抗生物質の誤用を減らさなければならない。抗生物質は獣医領域において極めて重要なツールだが決してただのツールではない。」と述べている。
そしてOIEの事務総長Monique Eloit博士は、「動物の適切な飼養と予防措置を行い、抗生物質をその有効性を保ちながら責任ある用法で使用することが、動物の健康と福祉にとって重要である。」と述べている。

  • 薬剤耐性に関するファクトシート

Fact sheet on antibiotic resistance (AMR)
November 2017
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/antibiotic-resistance/en/
◇重要な事実
・薬剤耐性は、世界的な健康、食糧の安全、および今日の発展に対する重大な脅威の一つでとなっている。
・薬剤耐性は、誰に対しても、年齢や国によらず影響を及ぼす。
・薬剤耐性は自然発生する。しかし、ヒトや動物における抗生物質の誤用は、薬剤耐性出現プロセスを加速させる。
・肺炎、結核、淋病およびサルモネラ症をはじめとする感染症が次々と、それらを治療する抗生物質の効果が低下してきたため、治療困難になってきている。
・薬剤耐性は、入院期間を長くさせ、医療費を高額にし、死亡率を増加させる。
◇薬剤耐性の抑止と制圧の方法
◊個人
・認定された医療関係者が処方した場合以外は抗生物質を使用しない。
・担当の医療従事者が必要ないと言う場合に決して抗生物質を要求しない。
抗生物質を使用する際は、担当の医療従事者の助言に従う。
・飲み残りの抗生物質を他人に分けたり使用したりしない。
・日常的に手洗いをする、衛生的に調理をする、病人との密接な接触を避ける、性行為はより安全に行う、およびワクチン接種状況を最新に保つことにより、感染症を防ぐ。
・安全な食品のためのWHOの5つの鍵(清潔にする、生ものと調理済み品を分ける、十分に加熱する、安全な温度に食品を保つ、安全な水と原材料を用いる)に従って、衛生的に食品を調理し、成長促進や疾病予防のために健康な動物に抗生物質を使用しない方法で生産された食品を選ぶ。
◊政策決定者
・薬剤耐性に対処する確固とした国家活動計画の実施を保証する。
・薬剤耐性感染症の調査を強化する。
感染症の予防策および管理策の指針、計画、推進を堅牢化する。
・質の高い医療の利用と配備を促進し、そのための規制を行う。
・薬剤耐性による影響に関する情報を入手できるようにする。
◊医療従事者
・自分の手、器具、環境を確実に清潔なものにし、感染を防ぐ。
・現行のガイダンスに準拠して、抗生物質が必要な場合に限り、それらを処方・投薬する。
・薬剤耐性感染症の事例を調査チームに報告する。
・患者に抗生物質の服用の仕方、薬剤耐性、および誤用の危険性について正確に伝える。
・患者に感染症防止策について話をする(ワクチン、手洗い、より安全な性行為、およびくしゃみが出る時に鼻や口を覆うことなど)。
◊医療産業
・新たな抗生物質、ワクチン、診断技術および他の手段の研究・開発に投資する。
◊農業分野
・動物に抗生物質を与える時は、必ず獣医師の管理の下で行う。
・健康な動物に対して成長促進や疾病予防の目的で抗生物質を使用しない。
抗生物質の需要を減らすために動物にワクチンを施す。また、できる限り抗生物質に代わる方策を採用する。
・動物や植物を原料として食品を製造・加工するすべての段階において適正な規範を促進・適用する。
・農場のバイオセキュリティを強化し、衛生状態と動物福祉の改善を通して感染症を防ぐ。
◇最近の開発状況
いくつか新しい抗生物質が開発中だが、最も危険な薬剤耐性菌に対しでは有効性が期待できない。
人の行き来が簡単かつ頻繁になっており、薬剤耐性は、すべての国の多くの分野の努力を必要とする世界的な問題となっている。
◇影響
より高額な抗生物質が必要になる、治療期間や入院期間が延びるなどのため、健康維持費用が家族や地域に重くのしかかるようになる。
臓器移植、化学療法、外科手術などの先進医療が、感染症を防げなくなることからリスクに晒されることになる。
◇WHOの対応
2015年5月に、以下の5つの戦略的目的を掲げた世界的行動計画が世界保健総会で是認された。
1. 薬剤耐性に対する認識と理解を深めること。
2. 調査・研究を強化すること。
3. 感染症の発生率を減らすこと。
4. 抗菌剤の使用を最適化すること。
5. 薬剤耐性への対処に対する継続的な投資を確保すること。
その他、WHOは、加盟国の国家活動計画の策定を支援している。また、以下のような構想・戦略を立案している。
◊世界抗菌薬啓発週間
抗生物質: 慎重に扱うべきもの』をテーマに2015年以降毎年11月に実施。
◊GLASS (Global Antimicrobial Resistance Surveillance System: 世界薬剤耐性サーベイランスシステム)
WHOが支援。データの収集、分析、共有の方法の標準化を通して意思決定への示唆を与え、地方、国、地域の活動を推進する。
◊GARDP (Global Antibiotic Research and Development Partnership: グローバル抗菌剤研究開発パートナーシップ)
WHOとDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative: 顧みられない疾患のための新薬開発戦略)との共同立案。官民の提携を介して研究・開発を促す。2023年までに既存の抗生物質の改良などにより4つの新たな治療法を開発・提供する予定。
◊IACG (Interagency Coordination Group on Antimicrobial Resistance: 薬剤耐性に関する組織間連携委員会)
国連事務局が設立。国際機関の協調を強化し、薬剤耐性の保健上の脅威に対抗する有効な活動を確保する。

  • その他の情報へのリンク

◊ 薬剤耐性に関する10の事実
10 facts on antimicrobial resistance
http://www.who.int/features/factfiles/antimicrobial_resistance/en/
◊ 薬剤耐性について
Antimicrobial resistance
http://www.who.int/antimicrobial-resistance/en/
◊ 世界各国の状況分析: 薬剤耐性への対応
Worldwide country situation analysis: response to antimicrobial resistance
http://www.who.int/antimicrobial-resistance/publications/situationanalysis/en/
◊ 薬剤耐性をくい止めるには? WHOの出した処方箋
How to stop antibiotic resistance? Here's a WHO prescription
http://www.who.int/mediacentre/commentaries/stop-antibiotic-resistance/en/
◊ 薬剤耐性: 複数の国における国民意識調査
Antibiotic resistance: Multi-country public awareness survey
http://www.who.int/antimicrobial-resistance/publications/baselinesurveynov2015/en/
◊ クイズ: 薬剤耐性についてどのくらいご存知ですか?
Quiz: How much do you know about antibiotic resistance?
http://www.who.int/campaigns/world-antibiotic-awareness-week/quiz/en/