食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

expert reaction to reports of high levels of the radioactive isotope ruthenium 106 detected in Russia
November 21, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-reports-of-high-levels-of-the-radioactive-isotope-ruthenium-106-detected-in-russia/
9月にロシアの一部で高レベルの放射性同位体が発見された
オックスフォード大学病院NHS トラスト医療物理学と臨床工学部長Malcolm Sperrin教授
文脈を知ることが大切である。ルテニウムは非常に希で、それがあるということはなにかがおこったということを示唆するだろう。天然には極めて少なく、自然量の最大900倍でもまだ極めて少ない。Ru (106)はベータ線を放出し半減期は約1年強で、多くの要因によるが同位体はしばらく存在するだろう。ルテニウム源の1つはウラルの鉱山だが天然のルテニウムはRu (102)であり掘った場所で精製されなければ鉱業由来の可能性は低い。原料の出所の一つの可能性ではある。
事故なら同時にあるはずの他の同位体が検出されていないので何故Ru (106)が検出されたのかを理解するのは難しい。従って、根拠が変わらなければ、この放出は大きな事故の結果ではないだろう。
Surrey大学核物理学教授Paddy Regan教授
レベルは特に高いというわけではなく、同位体の崩壊が単独で測定されているようであることから(106Ru -> 106Rh ->106Pd)、燃料/再処理工場あるいは医療/診断用ルテニウム分離場所から漏れたことが示唆される。
もしこれが原子炉からのリークや核爆発なら、他の放射性同位体(144Ce, 137Cs, 125Sb, 95Zr/95Nbやその関連核種)も検出されているはずであるがそれはない。

  • 台湾の大気汚染と精子の質の関連を調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study investigating the association between air pollution and sperm quality in Taiwan
November 21, 2017
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-the-association-between-air-pollution-and-sperm-quality-in-taiwan/
Occupational & Environmental Medicineに台湾での大気汚染暴露と精子の濃度や形との関連を調べた研究が発表された
Sheffield大学男性病学教授Allan Pacey教授
全体としては良い研究で、主な結果は粒子状物質の濃度が増えることと異常な形態の精子の割合が増えることに関連があるようだ。一見興味深いが、我々は精子の大きさや形態は精子について行う試験のなかでも最も困難なものの一つであることを知っている。さらに、多くの科学者や医者は精子の形態はかつて考えられていたほど臨床的意味はないことを今や知っている。従って興味深い生物学的結果が得られたものの、臨床的意味についてはわからない。
さらに興味深いのは微粒子濃度が増加すると精子の濃度も増えることである。
Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授
これは興味深い研究だが限界を知ることも重要である。大気汚染を高分解能(1km2)で検討したのは良いことだが、対象となる50才以下の男性が自宅から1km以上離れたところで働いている可能性が高く、実態を反映していないだろう。観察研究なので因果関係は言えない
Queen’s University (QUB)生殖医学名誉教授Sheena Lewis教授
この研究は非常に大規模だが精子の形への影響は小さい。また精子の質が悪いとそれを補うために数が増えるという著者の主張には科学的根拠はほとんどない。男性の不妊の原因としてはあまり重要ではないが、男性の健康全体の指標だと思うなら公衆衛生上のメッセージになるかもしれない。