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クラトム(kratom)で生じる致命的なリスクに関するFDAの助言についてFDA長官Scott Gottlieb医学博士が発した声明

Statement from FDA Commissioner Scott Gottlieb, M.D. on FDA advisory about deadly risks associated with kratom
November 14, 2017
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm584970.htm
◇要約
FDAは、クラトム(kratom)の使用で生じるリスクへの高まる懸念に対し、公衆衛生の面から助言を発した。
◇声明内容
FDAは、国境を越えてその数を増やしながら入ってくる有害な未承認の製品に関して懸念を持っている。FDAには公衆衛生を守る義務があり、深刻な病状を治療したり平癒させたりする方策として売られる未承認の製品によって人々が被害をうけてることを確認した場合、措置を講じることになる。
過去数年にわたって、kratomとして知られる植物由来物質は、その普及度と安全性リスクの可能性が高まっていることから、重大な懸念を引き起こしてきた。本日、FDAはkratomの使用で生じるリスクに関連してFDAで高まりつつある懸念について、公衆衛生の面から助言を発表した。
Kratomはタイ、マレーシア、インドネシアおよびパプアニューギニアに自生する植物である。様々な癒しの効果を持つ「安全な」治療法として売り込む業者もいて、米国で人気となった。支持者は、それが植物ベースの製品のため、ほとんど安全な物質であると主張する。FDAは、有資格の医療従事者の適切な診断と管理を要する深刻な疾患である、痛み、不安および抑鬱のような症状を治療するためにkratomを使用している人がいることを認識している。我々はまた、この物質がこれらの目的のために積極的に市販されおよび流通していることも承知している。重要な点だが、kratomには、オピオイドのような麻酔薬と似た効果があること、そして同様に乱用、中毒および場合によっては死に至るリスクがあることがエビデンスによって示されている。そのため、kratomがしばしば麻薬による陶酔感を求める人によって、快楽のために服用されていることは驚くべきことではない。オピオイドの蔓延が危機的な状況に達している時期に、オピオイド使用の代わりまたは補助的なものとしてkratomを使用する事例の増加は極めて懸念する事態である。
患者がオピオイド離脱症状を治療するためにkratomを使用してよいと思うことは、FDAにとってとても悩ましいことである。FDAは、オピオイド使用障害の治療を手助けするために、薬物療法の開発の進展とその普及に注力している。しかし、こうした取り組みを行う重要な意味は、一つには、患者が安全かつ効果的と証明された治療を確実に検討することができるようにすることである。オピオイド使用障害に対してkratomが有効であることを裏付ける信頼できるエビデンスは何一つ無い。オピオイド中毒患者は使用上の信頼できる説明なしにkratomを使っており、さらに重要なことは、製品の危険性、副作用の可能性または他の医薬品との相互作用に関して有資格の医療従事者に相談せずに使用しているということである。
Kratomで生じた有害事例は増加しており、それに関する明確なデータが得られている。Kratomに関する米国中毒事故管理センターへの問い合わせは毎年数百件あり、2010年から2015年に10倍に増えた。FDAは、kratomを含む製品の使用に関連して36件の死亡報告例があることを承知している。ヒドロコドンのような他のオピオイドが混ざっているkratom製品の報告があった。Kratomの使用により、発作、肝臓障害およびび離脱症状のような深刻な副作用も生じ得る。
これらすべてを考慮し、我々は快楽、痛みまたはその他の理由でkratomを使用することがオピオイド蔓延の拡大になってしまわないかどうか、我々自身に問わなければならない。あるいは、もし支持者が正しくてkratomがオピオイド中毒治療の手助けのために使用できるならば、患者はこれらの利点の明確で信頼できるエビデンスを当然知るべきである。
様々な障害に対する有力な治療策としてkratomを使用することの可能性に大きな関心があるのは理解している。しかしFDAには社会的傾向ではなく科学に基づく義務があり、エビデンスに重きが置かれる。FDAには植物性医薬品を評価する進んだプロセスがあり、そこでは関係者が医療上の有用性を示そうとしており、人々の健康を改善するのに役立つ植物性製品開発の促進に尽力している。我々は植物性医薬品の適切な開発に関するガイダンスを発表した。FDAはまた、植物の医薬品申請を適切に進めることを専門とするFDA医薬品評価研究センターの中に、医薬系審査チームを持っている。今まで、どの販売業者もkratomを成分とする医薬品の適切な開発に努めてこなかった。
FDAで実績のある医薬品レビュープロセスを使用することで、すべての利害関係者の間で切望されている議論が提示されると考えられる。その時まで、1つの事実を明確にしておきたいと思う。現在のところ、FDAが認可したkratomの治療的用途は無い、ということである。さらに、FDAは、その使用により重大な安全性の問題が生じることを示すエビデンスを持っている。Kratomが米国において治療的使用として合法的に市販が可能となる以前に、kratomのリスクや利点は、米国議会がFDAに委ねた医薬品の規制プロセスの中で評価されなければならない。さらに、米国議会はkratomのような物質に関する決定の日程を組み込んだ具体的な一連のレビュー手順も作成した。Kratomがオピオイド処方薬の安全な代替物になり得るという一般の認識を考慮すると、これは特に意味がある。
FDAは未承認薬物としてkratomを管轄し、かつkratomを含むダイエタリーサプリメントに対して対策も取ってきた。公衆衛生に関する義務を果たすために、我々はkratom製品に輸入警告が付される2つの場合を確認し、米国へのkratomの入荷を積極的に防ぐために活動している。国際郵便機関において、FDAはkratomの数百の運送物を留置した。我々は押収の権限を行使し、またkratom製品が自発的に廃棄されるのを監督する権限を行使してきた。我々はまた、これらの輸入品によってもたらされるリスクに対処するために、連邦のパートナーと協力もしている。米国麻薬取締局(DEA)からの要請を受けて、FDAはkratomに見られる2種類の化合物の包括的な科学的かつ医学的な評価を実施した。Kratomはすでに、起源国であるタイとマレーシアの2ヵ国を含め、オーストラリア、スウェーデンおよびドイツなど、16ヵ国で規制物質になっている。Kratomはまた、アラバマ、アーカンザスインディアナテネシーおよびウィスコンシン州などのいくつかの州で禁止されており、他の数州では禁止に向けて法律を審理中である。
オピオイド危機からは悲劇的な教訓を得ている。中毒を引き起こす新製品の可能性には初期に注意を払わなければならないこと、および介入するためには強い、断固とした策をとらなければならないことである。オピオイドの蔓延を取り去り、新たな別の薬物が定着するのを防ぐという義務の一環として、FDAは、発生始めから、kratomのような中毒性のある薬物から人々を保護するために権限を行使しなければならない。
医師としてそしてFDA長官として、公衆衛生に脅威を与える違法な薬物がアメリカ人に及ぶことを防ぐため、自分の役割を果たすことに尽力する。我々はkratomの医学的使用の可能性にオープンであり続けるが、その使用は健全な科学に裏付けられ、乱用の可能性が適切に熟考されなければならない。Kratomの使用に関しては、DEAやFDAを巻き込こんだ適切な評価プロセスが適用されなければならない。Kratomを言われているように医学的に使用できると信じている人に対しては、kratomのリスクや利点のデータをよりよく理解できるように調査して、その結果、よく調査されていて有益な可能性ある製品を検討するようお勧めする。それと同時にFDAは、エビデンス重視に基づき、公衆衛生を守るためにこれらの製品に関する対策を取り続ける。
国保健福祉省内にあるFDAは、ヒトおよび動物の医薬品、ヒト用ワクチンおよびその他の生物製剤ならびに医療機器の安全性、有効性および確実性を保証することで公衆衛生を守る。FDAはまた、米国の食品供給、化粧品、ダイエタリーサプリメント、電離放射線を発する製品の安全性と確実性、およびタバコ製品の規制にたいし責任を負っている。