食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 砂糖の健康影響についての意見への専門家の反応

expert reaction to opinion piece about the health effects of sugar
January 4, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-opinion-piece-about-the-health-effects-of-sugar/
BMJに発表された意見でGary Taubesが砂糖の健康影響を議論している
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
このアメリカ人ジャーナリストによる砂糖が現在の心疾患と肥満と糖尿病の流行の原因であるという主張には大きな欠陥がある。米国人の多くが大量の加工肉と炭水化物を食べていて、このような食生活が世界中に広がることについての懸念には合意するが、砂糖だけが悪いというのは間違っている。英国では最近50年で砂糖の摂取量にはあまり変化はない。私の先生だったYudkinは1970年に一人あたり年50kgと推定している。英国ではこの量から増えてはいない、そして心疾患による死亡は60%以上減った。一方現在の肥満の流行は1980年代に始まり同時に糖尿病も増えた。もし肥満の原因が砂糖だけなら菜食主義者は野菜や果物由来の糖を多く摂るので肥満や糖尿病になりやすいことになる。実際には菜食主義者は肥満になりにくい。
またソフトドリンクのような形態での添加された糖と固形の食品に存在する糖との区別も重要である。砂糖と肥満リスクの関連についての根拠はほぼ全てが砂糖入り飲料である。
最後にこの記事は食品由来のエネルギーの摂り過ぎと運動しないことが肥満の原因であるというコンセンサスを不公平に嘲っている。実際のところ肥満は、いつでも食品が食べられることとのつきあいかたがうまくいかないことである。
Exeter大学医学部肥満研究者で糖尿病と体重管理コンサルタントKatarina Kos博士
Taubesが言おうとしていることは砂糖は単なる余分なカロリーであるだけではなくそれ自体が有害であるということだろう。その根拠は乏しい。他の栄養素由来のカロリーと全く同じ砂糖の摂取で比較試験をしない限りこれを証明するのは困難である。
新しい根拠は砂糖の摂取が多いこと、例えば砂糖入り飲料の摂取量が多い、は他の不健康なライフスタイルや食生活の指標となるということを示唆する。従ってカロリー全体の摂りすぎを考えずに砂糖の害のみを議論するのは現実的ではない。
チョコレートやケーキやアイスクリームは砂糖だけではなく脂肪も多い。つまり砂糖が多いとカロリーも多く不健康になる。BMIが増えると糖尿病リスクも増えることについてはあまり異論はない。
内分泌学会会員St George’s University of London内分泌名誉教授Saffron WhiteheadTaubesのこの記事は砂糖が肥満の原因だという仮説であるがその明確な実験的根拠はまだない。Taubesは果糖が「悪い糖」だとしている。砂糖入り飲料二缶とチョコレートバー1つが1日のカロリー摂取量の約1/5であることと、砂糖だけが肥満の原因であるという良い根拠はないことを知っていれば、我々は当分カロリー計算すべきだろう。
Warwick大学代謝生化学教授Victor Zammit博士
この記事は果糖の脂肪源遺伝子への影響にもっと注目すべきと言う。これは新しいことではないが注目する価値はある。
UCL心血管系疾患予防とアウトカムのための国立センター名誉臨床教授Nick Finer教授
Taubesのエッセイは肥満と糖尿病の増加が医療システムを脅かしていることを強調する。彼は自分の信念である肥満と糖尿病の原因が砂糖であるという説を繰り返す。彼は国の食事ガイドラインで脂肪を減らすことに集中した根拠には批判的であるが砂糖の特異的役割については根拠がないことを認めている。砂糖の摂取量と肥満に関連があるという根拠は多いが直接的ではない。体重への影響とは独立して砂糖の摂取量の変化が病気の頻度に影響することを示すのは多分不可能だろう。しかし意図せぬ自然の実験の根拠は見られるかもしれない:2017年にEUが高果糖コーンシロップの制限を無くしたので摂取量が増えるだろう。
結局のところ体重の影響についてはたくさんの根拠がある。カロリーを減らすために砂糖の多い食品を減らすことは目標達成の重要な手段であろう。
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
砂糖が糖尿病リスクにカロリー以外に意味のある貢献をすることについては根拠により支持されていない。もちろん虫歯などの理由で砂糖の摂取量は減らした方がいいが、最も大事なのは体重である。

  • 食事由来トレハロース(糖添加物)とマウスモデルでのclostridium difficile感染悪性度の研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at dietary trehalose (a sugar additive) and virulence of clostridium difficile infection in a mouse model
January 3, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-dietary-trehalose-a-sugar-additive-and-virulence-of-clostridium-difficile-infection-in-a-mouse-model/
natureに発表された研究で腸の病原体clostridium difficileの二つの系統がどうやって低濃度のトレハロースを代謝できるようになったのかをマウスのモデルで調べた。彼らはそれがマウスでの病気の重症度に関連するという
Leeds大学細菌学Edward Brotherton卿議長で医療微生物学教授Mark Wilcox教授
これは興味深い研究である種の食品に存在する糖のトレハロースがある種の悪性度の高いタイプのC. difficileの選択に関与している可能性を示唆する。この研究の生物を使った部分はマウスでのもので、これがヒトでもおこるかどうかは重要な点である。
一部の細菌がより多く繁殖する理由がたったひとつであることは滅多にない。悪性度の高いC. difficileはトレハロースを使うことができるというのはパズルの一部であろう。しかしトレハロースとの関連はなぜ悪性度の高いC. difficileが異なる時期にいろいろな国に増えたのか、そして英国のように過去10年でコントロールに成功できたのかについては説明できない。これまでの研究では悪性型C. difficileには効果がない特定の抗生物質(例えばフルオロキノロン)の使用がその増加と減少に重要な役割を果たしていることが示されている。
London School of Hygiene & Tropical Medicine感染性熱帯病学部長微生物病理教授Brendan Wren教授
この研究はトレハロースの摂取量増加が高病原性C. difficile系統の増加に関与するという状況証拠を提供する。著者らは世界に拡散した特定の系統がトレハロースをエネルギー源として利用できることが感染開始のアドバンテージになることを示した。この研究はマウスでのもので、食品添加物としての使用が2000年代初期に増えたことからヒトに当てはめている。この関連は決定的に証明されてはいないがいくつかの独立した根拠を提示している。

  • マウスにおける血液幹細胞のアルコールによる傷害メカニズムへの専門家の反応

expert reaction to a mechanism in mice for blood stem cell damage from alcohol
January 3, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-a-mechanism-in-mice-for-blood-stem-cell-damage-from-alcohol/
natureに発表された研究でアルコールの代謝物であるアセトアルデヒドがマウスのモデルで血液を作る幹細胞のDNAを傷害することが報告された
Francis Crick研究所グループリーダーRobin Lovell-Badge教授
これは重要な研究である。いくつか説明を加えると:
DNA傷害は、チェックされないままだと細胞死につながるが壊れたDNAの修復メカニズムの引き金にもなって細胞が生き残る。しかしもしDNAの修復が正確でないとがんになる可能性がある。アルデヒドは高濃度だとDNA傷害を引き起こすことがわかっている。例えば飲みすぎは肝がんにつながる。アルデヒドはその排除酵素であるデヒドロゲナーゼがない場合も高濃度になる。著者らはマウスでアルデヒドヒドロゲナーゼをコードする遺伝子aldh2とDNA修復に必要なタンパク質をコードするFancd2遺伝子の両方に変異があると血液幹細胞のDNA傷害が蓄積することを示した。
ケンブリッジ大学ほ乳類の発達と幹細胞生物学教授Magdalena Zernicka-Goetz教授
これは素晴らしい研究で非常に重要である。
Queen Mary University of LondonのBartsがん研究所幹細胞生物学教授Malcolm Alison教授
酒飲みは注意:我々の臓器や組織のほとんどは幹細胞をもっている。多くの人がほとんどのがんは幹細胞から生じると信じている。このあたらしい研究はマウスの造血系幹細胞がアルコールの代謝物で変異することを発見した。さらに保護的作用のある酵素をノックアウトすると傷害は悪化する。ほかのがんにも関係するだろう。世界人口の8%は、特に東アジアでは、生まれつきALDH2が欠損していてそのことが食道がんの多さの寄与因子である可能性がある。