食品安全情報blog過去記事

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リコールの公的警報や通知を的確に発信するための新しい段階的方策に関するFDA長官Scott Gottlieb医学博士の声明

Statement from FDA Commissioner Scott Gottlieb, M.D., on new policy steps for strengthening public warning and notification of recalls
January 18, 2018
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm592777.htm
先月は、FDAに対しリコール手続きを改善するよう要請した*1。
本日は、より良く、より適時に消費者に情報を届ける取り組みの一環として、リコール対象製品についての市民への警報と通知に関するFDAのポリシーを記載したガイダンス案*2を公表するに至った。このガイダンスの対象には、食品だけでなく、医薬品、医療機器、化粧品も含まれる。
このガイダンス案には、企業がリコールの公的警報を発信するべき状況、そうした警報活動の一般的な時間的経緯、警報の内容、企業の対応が不十分な場合のFDAが取るべき行動などが記載されている。また、リコール案件を、最終的な健康リスク判断が行われる前にFDAの実行レポート(FDAが監視した全てのリコール案件をリスト化)*3に収載することに関するポリシーも記載している。実行レポートの仕組みに加えられた変更については今日のブログ*4を参照してほしい。
*1: https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm590423.htm
*2: https://www.fda.gov/downloads/Safety/Recalls/IndustryGuidance/UCM592851.pdf
*3: https://www.fda.gov/Safety/Recalls/EnforcementReports/default.htm
*4: https://blogs.fda.gov/fdavoice/index.php/2018/01/fda-to-expedite-release-of-recall-information/

 連邦規則21, Part 7, Subpart Cに基づくリコールの公的警報および通知に関する業界およびFDA職員向けガイダンス案
Public Warning and Notification of Recalls Under 21 CFR Part 7, Subpart C: Guidance for Industry and FDA Staff
January 17, 2018
https://www.fda.gov/downloads/Safety/Recalls/IndustryGuidance/UCM592851.pdf
<食品関係の部分のみ抄訳>
I. 序文
このガイダンスは、業界やFDAがリコールを発信する場合の手法、およびその内容や状況に関する説明や助言を記載している。また、リコール警報にどのような情報を含めるかについても議論している。このガイダンスではFDAの考えに基づく助言が示されているのであって、それらが法的拘束力を持つことを意味してはいない。
リコールの対象となることが想定されるのは、ヒトや動物用のあらゆる食品、薬剤および装置・器具、さらにヒト用のあらゆる化粧品、生物製剤およびタバコ製品などである(放射線放出電子機器は別に規制されるため除かれる)。
II. 用語の定義
リコール(Recall)
FDAが管轄する法に違反するとFDAがみなし、差し押さえなど法的措置を発動すると考えられる製品を、企業側で撤去あるいは是正する行為。市場撤収(法的措置を受けない軽度の違反を含む流通品、または違反を含まない流通品に対し企業側が行う撤去または修正)や在庫品回収(未販売品または企業の直接管理下にある製品に対し企業側が行う撤去または修正)は含まれない。(21 CFR §7.3(g)*1)
リコール裁定(Recall Determination)
企業により実施中あるいは完了済みの違反品の撤去または是正が、21 CFR §7.3(g)で定義されるリコールとして認められるかどうかを判定するためのFDAによる審査。
リコール等級分類(Recall Classification)
リコール製品が健康に及ぼす危害の相対的な程度を示すために、FDA特定の製品リコールの場合に付しているI、II、?などの数値表示を指す。(21 CFR §7.3(g)*1, 21 CFR §7.41(b)*2)
公的警報(Public Warning)
一般市民に対し、リコール製品が深刻な健康危害を及ぼすことを知らせることを目的とする。リコール製品の使用を阻止する他の方法が無い場合に発せられる。一般報道メディア、専門誌や業界紙などの特別な報道メディアを介して伝えられる。(21 CFR §7.42(b)(2)*3)
リコールの公的通知(Public Notification of Recalls)
FDAが毎週発行する実行レポート*4に収載している新規のリコール案件の情報。
事業運営上の機密情報(Confidential Commercial Information: CCI)
ある企業の運営で使用している重要なデータおよび情報であって、厳密な機密性が守られるべき種類のもので、公表を免除されるもの。(21 CFR §20.61(b)*5)
III. 詳解
A. 公的警報
1. 企業はどのような場合に公的警報を発信するべきか?
リコール製品の使用を阻止する他の方法が無い場合やクラスIに分類されるようなリコールの場合。警報を発信することが公衆に有益でない場合は除く(例えばリスクや適切な対処法についての十分な情報が無い場合や、製品が特定の身元が判明した利用者にしか渡っておらず、迅速に連絡が可能な場合など)。
以下に公的警報が必要となる例を示す。
・ ある食品の消費者から病気や損傷(アレルギー反応を含む)の報告を企業が受けた場合であって、その製品や成分に関連した発症の広がりがみられる場合、もしくはFDAが病気や損傷の報告を裏付けた場合。
・ 虚弱な人々(乳幼児、高齢者、妊婦、易感染性の人など)が消費することを企図した食品あるいは虚弱な人々が消費することが多い食品のリコール。
・ 製造工程に逸脱があった食品の場合であって、健康への重大な影響が考えられる場合。例えば、不適切な加工により食べるとボツリヌス症を生じることがある低酸性密閉容器入り食品など。
・ 食品の場合であって、環境検査において食品製造工程で直接食品に接触する外表が汚染されていることが判明し、病原菌(リステリア菌サルモネラ菌など)が検出された場合。
・ 低濃度の薬剤又は安全でない食品添加物で汚染されている可能性のある動物用食品。抗生物質で汚染されたペット用ジャーキーやプロピレングリコールを含む猫用食品など。
FDAは、企業に代わって公的警報を発したり、企業が発した公的警報を補完したりする場合がある。例えば企業が公的警報を発信することを拒む場合、企業による公的警報が迅速でなく、有効性に乏しい場合、リコールが一旦完結したが新たな有害事象が報告された場合など。FDAは通常、企業が公的警報を発信する時間的な枠組みを提示する。この時間枠は事案ごとに異なるが、通常FDAが企業に対して公的警報が必要な旨を通告してから24時間以内である。
2. 公的警報は誰が作成するのか?
まずは企業が立てたリコール対応策に沿って、企業に作成してもらう。それをFDAがレビューし、指摘事項を挙げる(21 CFR §7.42(b)(2)*3)。ただしFDAのレビューを待ってリコールの開始を遅らせてはならない。FDAは必要に応じて企業が発した警報を補完する。FDAが警報が必要と判断しているが企業がリコール対応策に載せていない場合は、FDAが企業に警報の発行を要請する。
FDAが作成する場合もある(21 CFR §7.42(b)(2)*3)。企業がまだ用意できていないが国民に早く知らせる必要がある場合や、企業の作成した公的警報の内容が不十分である場合など。
3. 公的警報にはどのような情報を載せるべきか?
a) リコール対象製品の確認に役立つ情報。例えば画像、識別コード(ロット番号、消費期限、シリアルナンバーなど)、包装に関する情報、ブランド名など。
b) 製品が流通した地域や日時
c) 製品の欠陥の詳細な内容、生じ得る健康危害の詳細な内容、およびリコールの詳細な理由。例えば製品検査や製造環境検査の結果など。
d) リコールを起こした企業の名前と連絡先
e) 消費者・利用者への指示
f) 製品に関連した疾患/損傷/苦情の数や内容
g) 懸念される疾患の一般的な症状・徴候
また、公的警報の見出しには、ブランド名、製品の種類、危害要因を記載する。(例えば、「XYZチョコレートチップクッキーをリコール、サルモネラ菌汚染の恐れあり」)
さらに、関係サプライチェーンの情報も必要となる場合がある。
公的警報に含めない事項
公的警報は簡潔・明瞭であるべき。リコール製品の品質に肩入れしたり、その企業の他の製品の購入を促したり、その企業自体を宣伝するような文言は避けるべき。例えば、「十分な注意」という文言が危害を最小限にしようとして使われることがあるが、病気や損傷が生じていたり、製品や成分に病原体が検出された場合には使用すべきではない。
不十分な公的警報
リコール製品を十分に確認できないもの、健康危害の内容が適切に記載されていないもの、製品の流通に関する情報が十分に確認できないもの、など。また、対象とされる人々に十分に伝わらないもの(例えば、報道メディアによる拡散が不十分なもの、全国的に流通しているのに一部の地域向けにしか発せられていないもの、スペイン語を使う人々が多く使用する製品でスペイン語訳が無いもの)。これらの場合、FDAが修正や補完を行うことになるが、FDAが別途公的警報を発信する場合もある。企業には、メディアによるリコール情報の伝播状況をチェックしてもらいたい。
4. 公的警報はどのように配布され掲示されるか?
メディアに対する報道発表、電子メール、FDAや企業のウェブサイト、ソーシャルメディアなど。
報道発表による公的警報の公表
歴史的に、FDAや業界は一般的な報道メディアや、専門誌や業界紙などの特殊な報道メディアを利用してきている。企業はリコール情報が実際に行き渡るように真摯に努力する責務を負う。
製品がオンラインで全国的に購入できる場合、リコールの公的警報はオンラインでも行われるようにし、全国規模にすべきである。製品が地域限定で販売され、外部からの消費者が考えられない場合は、対象を絞った公的警報が考えられる。英語以外の言語を使う消費者の割合が高い地域については、翻訳を用意し、その言語に適した情報提供サービスを活用すべきである。
FDAや企業のウェブページ上での公的警報の公表
多くの場合、企業はFDAがリコールであるかを検討・判断する前に、市場からの製品の撤収や製品の是正について、報道発表などを通じて公表する。FDAはその公表内容が正しく、消費者に有益であると判断した場合、FDAのウェブぺージ*6にその公表についての表示を行う場合がある。このウェブページには、FDAがリコールにならないとみなした案件については、企業の公表を収載しない。全てのリコールが公的警報を伴うわけではなく、全ての企業が報道発表を出すわけではないので、全ての案件がFDAのウェブページ*6に収載されるわけではない。
FDAはこのガイダンスに照らして「公的警報」に値するものは公共サービスとして収載するが、それが必ずしも緊急の事態であったり深刻な健康危害の案件であったりするわけではない。影響などの面から重要なリコールと判断された案件は、「重要な製品リコール」のウェブサイト*7に収載される。企業がウェブサイトに公的警報を収載する場合は、その警報が優先的に表示され、ホームページや検索ページからアクセスできるようにすべきである。
B. リコールの公的通知
FDAは、FDA実行レポート*4における分類、FDAによるものか企業に要るものか、企業が取った行動等に基づいて、リコール情報に一般市民がアクセスできるようにしている。FDA実行レポートは、公的警報と異なり、緊急性のないものや深刻な健康危害のないものも含まれ、必ずしもリコール製品によるリスクや危害に対する注意を一般市民に喚起するために使われるものではない。
FDA実行レポートは、危害のレベルに関係無く全てのリコールを収載するものであるが、FDAが管理できない事情により、収載が遅れることがある。また、とくていの消費者の不安を避けるために怒らせる場合もある(体内に埋め込まれた医療機器に不具合がある等で、担当医からまず説明を受けた方が良いと考えられる場合など)。
公的通知については企業が見直したりコメントを付したりする機会は設けられないが、必要に応じて事実関係を正確にするために企業と連絡を取ることがある。
リコールの公的通知は、21 CFR §7.3(g)*1に定義されるリコールであると判断された場合にFDA実行レポートに収載される。
IV. 参考文書
1. 製品リコール、その撤去と是正など(Product Recalls, Including Removals and Corrections*8): 業界向けガイダンス: 最終更新08/22/2014 (04/2017に内容再確認): FDA
2. リコール、市場からの撤収、および安全警報 (Recalls, Market Withdrawals, & Safety Alerts*9): 最終更新04/04/2017 (04/2017に内容再確認): FDA
3. リコールに関する業界向けガイダンス FDAが規制する製品のリコールに関する情報 (Industry Guidance for Recalls. Information on Recalls of FDA Regulated Products.*10): 最終更新08/15/2014 (04/2017に内容再確認): FDA
4. リコール、是正および撤去(機器)(Recalls, Corrections and Removals (Devices).*11): 最終更新01/03/2017 (5/12/2017に内容再確認): FDA
*1: https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?fr=7.3
*2: https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?fr=7.41
*3: https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?fr=7.42
*4: https://www.accessdata.fda.gov/scripts/ires/index.cfm
*5: https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?fr=20.61
*6: https://www.fda.gov/Safety/Recalls/default.htm
*7: https://www.fda.gov/Safety/Recalls/MajorProductRecalls/default.htm
*8: https://www.fda.gov/Safety/Recalls/IndustryGuidance/ucm129259.htm
*9: https://www.fda.gov/Safety/Recalls/default.htm
*10:https://www.fda.gov/Safety/Recalls/IndustryGuidance/default.htmhttps://www.fda.gov/Safety/Recalls/MajorProductRecalls/default.htm
*11:https://www.fda.gov/MedicalDevices/DeviceRegulationandGuidance/PostmarketRequirements/RecallsCorrectionsAndRemovals/default.htm