食品安全情報blog過去記事

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米国農務省農薬データ計画の2016年次要約書を公表

USDA Releases 2016 Annual Pesticide Data Program Summary
February 8, 2018
https://www.ams.usda.gov/press-release/usda-releases-2016-annual-pesticide-data-program-summary
米国農務省(USDA)の農産物販売公社(AMS)は、2016年農薬データプログラム(PDP)年次要約書を公表した。2016年次要約書は、10,000件を超える試料のデータを収載している。
検体の99.5%において、農薬残留濃度が、米国環境保護局が設定したベンチマーク濃度を良好に下回っていた。また22%では残留農薬は検出されなかった。
毎年、検査対象の食品はローテーションされ、2016年は、果物、野菜、卵などの生鮮食品および加工食品について実施された。25年以上の間、PDPプログラムにおいて、様々な農産物が検査されてきた。対象品目は、生鮮果物および野菜、加工果物および野菜、乳製品、肉、鶏卵、鶏肉、穀物、魚、米、地域特産品および水などである。
2016年次要約書および消費者向けガイドは、AMSのウェブサイト*1から閲覧できる。農薬と食品についてのさらに詳しい情報は、EPAのウェブサイト*2を参照されたい。
*1: https://www.ams.usda.gov/datasets/pdp
*2: https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Pesticides/ucm2006797.htm

  • 農薬データ計画の2016年次要約書

Pesticide Data Program: Annual Summary, Calendar Year 2016
February 2018
https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/2016PDPAnnualSummary.pdf.pdf
2016年度の農薬データ計画(PDP)に参加したのは、以下の10州である。
カリフォルニア、コロラド、フロリダ、メリーランド、ミシガン、ニューヨーク、ノースカロライナオハイオ、テキサス、ワシントン。
検体総数は10,365件で、その内9,363件が生鮮な果物や野菜および加工した果物や野菜であった。また、294件が卵であり、708件は牛乳であった。
果物および野菜の検体については、農薬の親化合物、代謝産物、分解産物および異性体の合計480種類に、22種類の環境汚染物質を加えて検査が行われた。卵については、農薬の親化合物、代謝産物、分解産物および異性体の合計107種類に、16種類の環境汚染物質を加えて検査が行われた。牛乳については、農薬の親化合物、代謝産物、分解産物および異性体の合計425種類に、19種類の環境汚染物質を加えて検査が行われた。
検体の81.2%が米国内産の農産物で、輸入産品が18.3%であり、0.5%が出所不明であった。
検体の99%以上で残留レベルがEPAが設定したトレランスを下回り、23%では検出限界未満であった。
トレランスの超過は、0.46%(48検体)において認められた。これらのうち26検体(54.2%)が国内産で20検体(41.7%)が輸入品であり、2検体(4.1%)は出所不明であった。
トレランスが設定されていない残留物が検出されたのは2.6%(273件)で、これらのうち179検体(65.6%)が国内産で90検体(32.9%)が輸入品であり、4検体(1.5%)は出所不明であった。ほとんどの事例で検出値は非常に低かった。
今回は卵にも焦点を当て、294検体を検査したところ、2検体(0.7%)にシロマジンが検出された。しかし検出値は設定されているトレランスをはるかに下回っていた。
さらに牛乳にも焦点が当てられ、708検体が検査された。18検体(2.5%)においてフルベンジアミドが検出された。しかし検出値は設定されているトレランスをはるかに下回っていた。

  • 2016年農薬データ計画(PDP)の年次要約書: 消費者が知っておくべきこと

2016 Pesticide Data Program (PDP) Annual Summary: What Consumers Should Know
February 2018
https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/PDP2016AnnualSummaryConsumers.pdf
農薬データ計画(PDP)とは何か?
● 毎年、米国農務省(USDA)と米国環境保護庁(EPA)が共同で実施している食品中の農薬検査で、対象品目はローテーションで替えて行われる。
PDPの年次要約書は、消費者や家族が摂取する食品が安全であることを確認するのに役立つ信頼性の高いデータを提供する。この要約書は、農薬が食品中に検出された場合でも、殆どすべての事例でEPAが設定したトレランスを下回るレベルであるという実態を示している。
2016年度の結果はどのようなものであったか?
● 今年度においてもPDPの結果から、米国では世界でも指折りの安全性の高い食糧供給が行われていたことが示された。
● 2016年度には、生鮮果物・野菜および加工果物・野菜、卵、牛乳などの様々な食品を検査し、検体数は1万を超えた。検体は年間を通じて様々な州から集められ、米国全体を反映するようにされた。またPDPの検出法では、EPAが設定したトレランスを下回る可能な限り低い量の農薬残留物が検出できている。
● 検体の99%以上において、農薬残留レベルはEPAが設定したトレランスを下回っていた。また、23%の検体では、農薬残留物は検出されなかった(検出限界未満)。
EPAが設定したトレランスを超えた残留物が含まれていた検体は、0.46%(10,365件のうちの48件)で、2.6%(10,365件のうちの273件)では、その農作物固有のトレランスの定められていない残留物の検出が認められた。卵と牛乳に関してはトレランスを超える残留物の検出は認められず、トレランスが設定されていない残留物についても検出は認められなかった。
子供に買い与える食べ物は安全か?
● 安全である。PDPのデータとEPAの評価に基づけば、数少ない検体で検出された少量の農薬は、健康リスクを生じるものではない。米国食品医薬品局(FDA)は、農薬残留物が乳幼児や子供にリスクを生じる懸念は無いと結論付けている。
トレランスレベルとは何か?
● ある農薬残留物が食品原料の農産物に存在することが許容される最大量のこと。食糧となる農産物にある農薬が使用される場合、EPAはその農薬について食品中に残留しても良い量であるトレランス設定する。トレランスの設定においては、EPAは、危害と暴露データの分析を行い、その農薬を推奨使用法に従って使用した場合のヒトの健康や環境におけるリスクを評価する。EPAは、その農薬について、様々な品目の食品、水、居住環境を介した暴露を考慮して、安全レベルを設定することが求められている。PDPのデータは、食事を介した農薬への暴露に関するEPAによる評価において、非常に重要な構成要素となっている。
EPAは、定期的に農薬の登録とトレランスを再評価するよう求められており、これにより科学的データが確実に最新のものに保たれている。PDPは、この定期的なトレランスの再評価のためのデータを提供している。
検体に農薬残留物が検出されたがトレランスが設定されていない場合、どういうことになるのか?
● 検体にEPAによってトレランスが設定されていない農薬残留物が含まれていた場合、FDAは、連邦食品・医薬品・化粧品法違反とみなす。FDAは、この情報に基づいて、法令を順守させる活動に乗り出す。例えば、対象を絞った検査の実施、今後の入荷物がより厳密な監視を必要とすることを示す輸入警告の発動などである。
● 農薬残留物がEPAの設定したトレランスを超過していた場合、もしくは検出された農薬残留物にEPAの設定したトレランスが無い場合、PDPFDAに報告する。PDPの残留結果は、月例報告書を通じてFDAEPAに報告される。
FDAは、2016年のPDPのデータを評価し、EPAと協議を行った結果、健康リスクを生じる差し迫った要因は無いと判断した。重要なのは、トレランスのない農薬残留物が検出された検体においても、そのレベルは非常に低いものであり、検体の数も全体のわずか2.6%であるということである。
PDPでは水は検査されているか?
PDPでは現在、ボトル入りの飲料水を検査している。公営水道の原水および処理済飲用水については、2001〜2013年に検査を実施した。この時には29州とコロンビア特別区から試料採取した。2007〜2013年にかけては、公営水道、個人宅、学校、およびデイケア施設が利用する地下水も検査した。PDPの原水および処理済み飲用水、および地下水の調査は、予算的制約のため2013年で中断された。
なぜPDPではグリホサートのようないくつかの農薬について検査していないのか?
● 現在、FDAがトウモロコシ、ダイズ、牛乳および卵におけるグリホサート残留物を検査している。FDAによるグリホサート残留物検査の結果は、EPAが追加データを必要とするか否かを判断するのに役立つ。FDAの結果が入手できるようになった場合、USDAはEPAと協議して、EPAのデータ要件に適合する質のデータをPDPが確実に提供していくようにする。