食品安全情報blog過去記事

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SMC UK

  • 栄養表示とカロリー摂取についてのコクランレビューへの専門家の反応

expert reaction to Cochrane review on nutrition labelling and calorie intake
February 27, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-cochrane-review-on-nutrition-labelling-and-calorie-intake/
コクランが食べる施設でのメニューや食品のそばへのカロリー表示が人々の摂取カロリーを減らせるかどうか検討した新しいレビューを発表した
Teesside大学公衆衛生栄養准教授で栄養士で公衆衛生トランスレーショナル研究センターの副所長Amelia Lake博士
一般的にカフェやレストランでの我々の行動を変えるのにどのような介入が有効なのかについての根拠はほとんどない。食行動は複雑でそれに影響する要因を探ろうとするとバイアスだらけである。それでもこのレビューでは栄養表示の影響を検討した。基準を満たす研究は28あったが多くは米国でのものであった。これらの研究から著者らは家の外での栄養情報が購入するカロリーを減らす可能性があると結論した。もとの研究に限界や欠点はあるもののそう結論した。しかしこの介入は他の介入と一緒に使う必要がある。これは肥満危機に対応するのに役立つ可能性のある介入ジグソーパズルのひとかけらである。
Birmingham大学公衆衛生教授Peymané Adab教授
この研究はこれまでの研究をまとめたものとして有用である。全体として表示が役にたつかどうかについて確信するにはより質の高い研究が必要であることを示した。特に表示によりカロリーを減らしたのはそれにより良い影響がある集団なのか、あるいは表示は不平等を拡大したのか、がわからない。カロリーだけでは食事全体の質がわからない。さらに栄養表示により食品提供者がメニューを変えたかどうかも研究する必要があるだろう。
Robert Gordon大学栄養名誉教授Brian Ratcliffe教授
これは特に新しい知見ではないが役にたつ。レビュー対象になった研究のうち英国のものはたった二つである。栄養表示が消費者の選択に影響するという根拠は強くない
英国栄養財団事務局長Judith Buttriss教授
既に大手チェーンで摂られている対策がカロリー摂取に影響するというのは良い知らせだ。他のところも採用するようになることを期待する。注意点はほとんどの研究が米国であること、根拠の質は低く量も少ないとしていること。

  • 英国大麻市場にどのくらい大麻があるのかを調べた論文への専門家の反応

expert reaction to paper looking at how much skunk there is in the UK cannabis market
February 27, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-paper-looking-at-how-much-skunk-there-is-in-the-uk-cannabis-market/
英国大麻市場の大麻の強度の包括的調査がDrug Testing and Analysisに発表された
UCL精神薬理学教授Valerie Curran教授
これは重要で時宜に適った論文で、英国の大麻ストリート市場ではカンナビジオール(CBD)をほとんど含まず約14%のTHCを含む超高強度のものが多いままであることを示した。このような高濃度THCは2005年と2008年にも報告されていて、今回の研究ではこれらが以前よりさらに増えていることを示唆する。これらの知見は大麻依存になる若い人が増えていることに関係する。我々の先の研究では高強度のものは依存に繋がりやすいことを示唆している。従って市場に高強度のものが多いということは依存リスクが高くなる。さらに強力なものは個人の精神疾患リスクも高くなる可能性を示唆している。
King’s College London精神医学心理学神経科学研究所カンナビノイド心理薬理学博士Amir Englund博士
これは質が高くタイムリーな研究である。この研究は英国での大麻の強度をより良く監視刷る必要があることを強調する。さらに最近の研究ではオランダのコーヒーショップの大麻THCが増加すると治療が必要な人が増え、強度が減ると患者も減ることを報告している。CBD濃度が減ったことも有害性を増やす可能性がある(長い解説略)
King’s College London精神医学心理学神経科学研究所薬物依存教授Michael Lynskey教授
この論文は大麻市場の理解について重要な知見を提供する。大麻は英国で最も良く使用されている違法薬物であるが、使用されている種類や強度についてはあまり知られていなかった。
ヨーク大学精神衛生講師Ian Hamilton氏
Exeter大学精神薬理学教授Celia Morgan教授
この仕事は重要である

  • EFSAの発表したネオニコ評価への専門家の反応

expert reaction to assessments of neonics as published by EFSA
February 28, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-assessments-of-neonics-as-published-by-efsa/
サセックス大学生物学教授Dave Goulson教授
EFSAは長く待たれていた三種のネオニコチノイド殺虫剤(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム)のミツバチへのリスクについての三部の報告書をついに発表した。これは2013年のミツバチに的を絞った報告から相当更新されていて過去5年に発表された多くの新しい研究を取り込み、さらに野生のミツバチへの影響についても特に検討している。2年もかかった長い作業で、文献から588の実験を詳細に評価し何度も外部専門家に意見募集をした。EFSAの結論はこの問題について報告されてきた他のレビューと同様である。
本質的にEFSAの新しい報告はネオニコチノイドが野生と家畜の両方のミツバチに有害である可能性が非常に高いと結論した。2013年より根拠は強くなっている。すべての種類のミツバチにリスクが低いと判断されるネオニコチノイドの戸外での使用は存在しないようだ。またこの報告では知識が不足している部分も強調している。この報告は欧州におけるネオニコチノイドの使用を確実にさらに制限することになるだろう
Lancaster大学Lancaster環境センター上級研究員Philip Donkersley博士
EFSAがその評価を野生のハチにも拡大したことは頼もしい。これら3種のネオニコチノイドマルハナバチにリスクが高い、しかしネオニコチノイドの完全使用禁止は正当化できないだろう。温室での管理された条件下での使用はすべての授粉媒介者へのリスクを最小化するという根拠がある。
Dundee大学神経生物学准教授Christopher Connolly
これは重要な発表で、ネオニコチノイドのほとんどの使用はすべてのミツバチのリスクとなる。重要なことは直接暴露がハイリスクではなく、畑の周辺や近傍の作物、後から栽培した作物からの間接的暴露がハイリスクであると同定したことである。環境からの慢性暴露がミツバチにとって大きなリスクである。さらに常に環境中に低濃度で存在することは薬物耐性にもつながる。ネオニコチノイドの使用を高度に制限することで重大事態への重要な害虫管理剤としてのネオニコチノイドを維持することになるだろう。

  • 妊娠中の魚油とプロバイオティックサプリメントと子どものアレルギーリスクを調べたメタ解析への専門家の反応

expert reaction to meta-analysis looking at fish oil and probiotic supplements in pregnancy and risk of allergies in children
February 28, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-meta-analysis-looking-at-fish-oil-and-probiotic-supplements-in-pregnancy-and-risk-of-allergies-in-children/
PLOS Medicineに発表された新しい研究は、妊娠中の食事と乳児のアレルギー又は自己免疫疾患リスクを調べた
ロンドンQueen Mary大学免疫学講師で英国免疫学会広報Louisa James博士
食物アレルギーは乳児、特に湿疹のある子どもでよく見られる。それは免疫系が食品中の各種タンパク質に不適切に反応するとおこる。我々の食事や腸内細菌は健康な免疫系の構築や維持に重要な役割を果たす。従ってどのような食事要因が影響するのかを知るのは必須で、この研究結果は母親の食事が影響することを確認した。この研究はメタ解析でいくつかの研究のデータを組み合わせたものである。根拠の質は入手可能なデータの質やサイズに依存する。入手可能な研究は結論を出すには十分ではなく、多くの場合サイズがあまりにも小さい、あるいは報告されている方法が相互に比較できない。
この研究にはプロバイオティクスと魚油サプリメントのRCT試験も含まれるが参加者はすべてアレルギーリスクが高い人のみで、アレルギーの家族歴がない場合の影響は不明である。使ったサプリメントの細菌の種類や量や形態は多様でどれがベストなのかはわからない。この研究は質の高い研究の価値を強調することになった。
ロンドンQueen Mary大学呼吸器疫学教授Seif Shaheen教授
この研究は妊娠や授乳中の栄養が子どものアレルギーやアレルギー疾患予防になる可能性を示唆するますます増える根拠に付け加わる。母親のプロバイオティックや魚油サプリメントが子どものアレルギー予防に果たす役割についてもっと決定的に答えるためには大規模な質の高い研究が必要である