食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 裏庭の鶏にはもっと規制が必要

Backyard chickens need more regulation
2-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/uoc--bcn030218.php
歴史的には裏庭で鶏を飼うことは、戦争や不況などの経済危機への準備であった。しかし今や小規模家族経営農家が鶏を放し飼いにする数が増え消費者が都市部や郊外の裏庭で鶏を育てている。自分で育てたもののほうが市販のものより安全でフレッシュで栄養が豊富だと多くの人が考えている。しかしカリフォルニア大学の研究によると地方の条例は裏庭の鶏のヒトや動物への健康に関しては適切に対応していない
Journal of Community Health

  • 食事の結果の栄養モデルによる飼い葉ベースの餌を与えられたミルクの脂肪酸組成の強化

Enhancing the fatty acid profile of milk through forage-based rations, with nutrition modeling of diet outcomes
Charles M. Benbrook, et al.,
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/fsn3.610/full
有機農法の草で育てた乳牛のミルクのほうが栄養上良いと主張したい論文
ただしファーストオーサーは↓
Charles Benbrook:もとワシントン州のオーガニック業界非常勤コンサルタント
Charles Benbrook: Former Washington State adjunct consultant for organic industry
Updated on January 25, 2018
https://geneticliteracyproject.org/glp-facts/charles-benbrook-former-washington-state-adjunct-consultant-organic-industry/?source=acsh.org
農業経済学専攻、オーガニック業界からお金をもらってGMOや農薬が危険だという主張をしている。オーガニック業界がお金を出してワシントン州立大学に「持続可能な農業と天然資源センター」をつくりそこに3年所属していた。この間学術雑誌に利益相反を開示しないでオーガニック製品支持の投稿を続け、ニューヨークタイムスがこの時期のメールについて大学に情報公開請求を行った。その結果反GMO活動家らとの密接な関係が暴露されている
(この手の「工作」は良くある。大学に寄付講座を作ってお抱えのヒトに「教授(特任)」の肩書きを与えて都合の良い「研究」を発表させるのは日本でもある。文科が公立大学へのお金を絞っているので困った「名門」大学は乗る)

Cannabinoid Poisoning by Hemp Seed Oil in a Child.
Chinello M, et al.
Pediatr Emerg Care. 2017 May;33(5):344-345
イタリアの事例。小児科の医師から免疫系強化目的で麻の実オイルを処方されて3週間摂取してカンナビノイド中毒になった就学前児童

  • 極端に「健康的な」食事による栄養不良:新しい摂食障害

[Malnutrition due to an extremely 'healthy' diet; a new eating disorder?].
Nauta K, Toxopeus K, Eekhoff EM.
Ned Tijdschr Geneeskd. 2016;160:A9164. Dutch.
オランダ語
71才の男性。完全菜食主義による心不全、悪液質、生化学的数値の異常。精神疾患の基準にはあてはまらず、健康への熱狂による栄養不良。正しい食事病orthorexia nervosaは一般向けには関心を集めているが医学文献ではほぼ無視されている

  • 禁止は間違った決定だったのか?DMAAの影響を調べた研究の批判的レビュー

Have prohibition policies made the wrong decision? A critical review of studies investigating the effects of DMAA.
Dunn M.
Int J Drug Policy. 2017 Feb;40:26-34.
2012年にオーストラリアではDMAA(1,3-ジメチルアミルアミン)を規制対象薬物にした。他国で禁止されたことと安全でないというのが理由である。この論文ではDMAAの有害影響についての文献をレビューした。
(血圧が上がるのは確かだがヒトでどんな影響が出るのか明確ではないとの趣旨。有害影響がありそうなものをヒトで試験するわけにはいかないので「質の高い根拠」が乏しいのはそりゃそうだろう)

[Confusion caused by dietary supplement lithium orotate].
van Weringh G, et al
Tijdschr Psychiatr. 2017;59(4):234-237. Dutch.
http://www.tijdschriftvoorpsychiatrie.nl/en/issues/512/articles/11300
オープンアクセスだがオランダ語

Rhabdomyolysis and interferon-β: case report and short review.
Jerman A, , et al
Clin Nephrol. 2017 Supplement 1;88(13):32-34
多発性硬化症インターフェロン-βで長期に治療していた若い白人女性がザボン抽出物を飲んで軽い運動をしたところ急性横紋筋融解症になった。ザボンジュースに含まれるフラノクマリン誘導体によるP450活性阻害が関与する可能性

  • がん予防のためのセレン

コクランライブラリー
Selenium for preventing cancer
Marco Vinceti, et al
First published: 29 January 2018
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD005195.pub4/abstract;jsessionid=B29C34BBE584EDDB2BD9A1224F94098B.f03t03
セレンサプリメントががん予防に有効であるという根拠はない

  • 遺伝子を盗むことから足を再生するまで、生命は如何にして生き延びて反映する方法を見つけたか

Science
From stealing genes to regrowing limbs, how life finds a way to survive and thrive
By Science News StaffMar. 1, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/03/stealing-genes-regrowing-limbs-how-life-finds-way-survive-and-thrive
資源が乏しいとき、捕食者、その他の困難に直面したとき、動物や植物や細菌がどれだけ異なったレジリエンス戦略を用いるかを探った
Scienceのレジリエンス特集の一部
他に
・海水面上昇に伴ってバングラデシュの島民は水を排除し続けるか入れるかを決めなければならない
・ハリケーンカトリーナから12年以上経って、科学者は一部のサバイバーが他の人より回復力が強かった理由を調べている
・紛争地域や難民キャンプで、研究者達はレジリエンス介入を試験している
レジリエンスが流行中。リスク管理とは異なる概念

  • 自然は農薬使用と環境影響を減らせる

Nature can reduce pesticide use, environment impact
1-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/msu-ncr030118.php
Agriculture, Ecosystems and Environment に発表されたミシガン州立大学の研究。特に鳥やその他の脊椎動物を引き寄せることで作物の害虫を追い払うことができる
(状況によるとしか。雀なんて圧倒的にコメの食害のほうが大きいと思うけれど。ほんと可愛いのに。そしてコウモリを増やすと近くの住人からの苦情が増えそう。)

  • カルシウムサプリメントは異常な腸の増殖(ポリープ)リスクを増やすかもしれない

Calcium supplements may boost risk of abnormal bowel growths (polyps)
1-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/b-csm022818.php
Gutにオンライン発表された米国の大規模試験結果。
45-75才のポリープの既往症があってフォローアップ(大腸内視鏡)を予定している2000人以上の患者を無作為に毎日カルシウムサプリメント、毎日ビタミンDサプリメント、両方、及びどちらもない群に3-5年(内視鏡検査まで)割り付けた。投与が終わった後さらに3-5年後も記録した。投与期間にはカルシウムもビタミンDも影響は見られなかったが、投与開始から6-10年経った時点でカルシウムサプリメントを摂っていた群(ビタミンD同時も含めて)で鋸歯状のポリープのリスクが高いことを発見した。

  • WHO紀要

Bulletin of the World Health Organization
Volume 96, Number 3, March 2018, 145-224
http://www.who.int/bulletin/volumes/96/3/en/
・2016-2017年のイラン・イスラム共和国でのアヘン使用者の鉛中毒アウトブレイク
世界最大の違法アヘン及びヘロイン生産国であるアフガニスタンに国境を接しているイランにおいては違法薬物濫用が重大な社会的健康的問題である。最もよく使われているのはアヘンとアヘン滓(opium residue)で、2011年の調査では15-65才の5300万人中1325000人が過去1年以内に違法薬物を使った。そのうち1181900人がアヘン使用者と推定されている。これに対応して政府は2002年に治療と害の削減対策をとった。
2016年2月からアヘン使用者の激しい腹痛、貧血、便秘での大学病院中毒センター来院数が増加し、鉛を疑って調査を開始した。(以下調査結果。数十万人が鉛中毒だろうと推定されるが治療を受けているのは一部)