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トロパンアルカロイドへのヒトの急性暴露評価

Human acute exposure assessment to tropane alkaloids
EFSA Journal 2018;16(2):5160 [24 pp.]. 5 February 2018
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5160
トロパンアルカロイド(TA)は、ナス科などのいくつかの植物で生成される二次代謝産物である。天然に形成されるのは(+)-鏡像異性体であるが、最も研究されているTAは、(–)-ヒヨスチアミンと(–)-スポコラミンである。 (–)-ヒヨスチアミンと(+)-ヒヨスチアミンのラセミ混合物はアトロピンと呼ばれている。2013年にEFSAのCONTAMパネルは、(–)-ヒヨスチアミンと(–)-スポコラミンを合わせた急性食事暴露評価を行い(グループ急性参照用量(ARfD)は16 ng/kg体重とされている)、幼児において潜在的な懸念があることが確認された。この科学的報告書は、欧州13ヵ国で2009年から2016年にかけて採取された39,725件の試料についての31種類のTAに関する分析結果を用いて、TAへのヒトの急性食事暴露評価に関し、より大規模な情報を提供している。この分析結果のほとんど(95%)は、左打ち切りだった(すなわち検出限界以下あるいは定量限界以下)。アトロピンやスコポラミンが高濃度であったのは、茶やハーブの浸出液、シリアルバー、およびスパイスであった。アトロピンとスコポラミンとを合わせた急性食事暴露量は、平均および95パーセンタイル(P95)でみた場合、乳児、幼児、およびその他の子供の群で最も高かった。上限(UB)シナリオとすると、アトロピンとスコポラミンの合計暴露量は、幼児とその他の子供群の平均および、全ての年齢群のP95において、グループARfDを上回っていた。下限(LB)シナリオとすると、幼児のP95で、アトロピンはグループARfDを上回っており、また幼児とその他の子供の群のP95で、アトロピンとスコポラミンの合計暴露量がARfDを上回っていた。どの年齢群においても、LBで推定された暴露量とUBで推定された暴露量との間にかなり大きな差が認められた。概して、加工食品では、アトロピンとスコポラミンを合わせた暴露に寄与していたのは、全年齢群において、主としてUBではパンと穀物ベースの食品で、LBでは茶やハーブの浸出液であった。