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Q&A: ネオニコチノイドについての結論2018年

Q&A: Conclusions on neonicotinoids 2018
Parma, 28 February 2018
https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/news/180228-QA-Neonics.pdf
1) 何を根拠にして、ネオニコチノイドによるミツバチへの全般的なリスクが確認されたとEFSAは結論づけたのか?
EFSAは、ミツバチが環境中で暴露されると予想されるネオニコチノイド系農薬について、推定暴露濃度と、ミツバチに影響が及ぶと考えられる濃度を比較した。環境中の汚染物質の推定量がミツバチにとって安全だと考えられる量より高い場合を、高リスクと結論づけた。これらの化学物質を屋外で使用した場合の全てにおいて、高リスクと判断される局面が少なくとも1つあり、そのため全般的にこれらのネオニコチノイド系農薬がミツバチへのリスクを示すという結論につながっている。
「全般的に」と言っているところが重要で、ある特定の使用態様において低リスクが確認された事例もいくつかあるが、そのほとんどで、同じ使用態様でに高リスクの事例も確認されている。例えば以下の表のとおりである。
ネオニコチノイドの種類 ハチの種類 作物 暴露ルート リスク
イミダクロプリド ミツバチ 菜種(冬と春) 花蜜の残留物と処置された作物の花粉 低い
イミダクロプリド ミツバチ 菜種(冬と春) 粉塵の飛散による残留物 高い
イミダクロプリド マルハナバチ 菜種(冬と春) 花蜜の残留物と処置された作物の花粉 高い
リスクの結論は、ハチの種類、その農薬の使用目的、暴露ルート(蜂花粉や花蜜の残留物;処置された種子の種まきや播種中に飛散した粉塵;水の摂取)などの要因により異なっている。だが、全体として、ネオニコチノイド類はミツバチにリスクを生じるという結論が確認された。
2) EFSAが確認したミツバチへのリスクとは何か?
農薬の使用態様により、ミツバチは複数の経路でネオニコチノイドに暴露される可能性がある。この評価においては、畑の中の農薬処理された作物の上で、あるいはその近辺で餌を求め飛び回るミツバチは、多くの場合、有害な量のネオニコチノイド系農薬に暴露される可能性があることが示されている。これは、農薬処理された作物の花粉や花蜜には残留農薬が含まれている可能性があり、また近辺の植物はその畑から舞い込む粉塵に汚染される可能性があるためである。
さらに、その作物が植えられた土壌もこの農薬に汚染される可能性がある。ある状況では、農薬は土壌に残り、蓄積する恐れがある。これらの残留物は、最後には新しく育つ植物の花粉や花蜜に入ることになる。この事象についての情報はやや限られているが、EFSAは、場合によってはミツバチがこのルートにより有害量のネオニコチノイド系農薬に未だに暴露されている恐れがあると結論づけた。
3) 評価担当者は野生ミツバチに関する影響を調べたか?
調査した。評価担当者は、ミツバチ以外に、養蜂用に用いたり野生種でいることもできるマルハナバチと、赤い粘土で巣を作り単独で生息するハチ(ハキリバチ)などのいくつか代表的な野生の単性ミツバチへのリスクも検証した。ただし、得られた情報の多くはミツバチに関するものだった。
4) 野生のミツバチのリスクはより高い?
得られた情報の多くはミツバチに関するものだった。すなわち、野生のミツバチに関する調査データははるかに少ない。そのような状況のため、ミツバチと野生のミツバチに関して行われた評価の結果を直接適に比較することは、適切ではないと考えられた。
一般的に、ネオニコチノイド系農薬の使用はほとんどの場合、養蜂用ミツバチと野生のミツバチの両方に高いリスクを生じると予測されるが、いくつかのシナリオにおいては、3つの農薬で異なる評価結果が得られた。これらの違いに関する特定のパターンはわかっていない。
5) EFSAは新評価のためにどのような証拠を検討したか?
2015年にEFSAは、検討中の使用態様に関連して、試験データ、調査データ、および監視活動データの提示を募った。EFSAは2013年の前回の評価のために行った体系的な文献レビューから得られたデータも検討した。さらに、この体系的な文献レビューを2016年6月に刷新*し、今回の評価に関連する全ての公表科学的文献を収集した。学界、養蜂家協会、化学企業、農業関係者、NGOs、国立機関からデータを受け取った。評価開始に先立ち1500件以上の試験・研究がEFSAによって検討された。*:https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/1378e
6)リスクが確認されたら、EFSAはEU全域でネオニコチノイド類の禁止を助言する?
助言は行わない。EUの規制システムでは、EFSAは科学的リスク評価団体として活動し、農薬を含む規制対象製品の認可に関する意思決定は行わない。これはリスク管理者および法律制定者としての立場にある欧州委員会と加盟国機関の責任である。