食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • ワクチンはあなたの子どもの免疫系に過剰な負荷をかけない−あるいは他の感染症のリスクを増やさない

Scienceニュース
Vaccines won’t overload your child’s immune system—or increase their risk of other infections
By Kimberly HickokMar. 6, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/03/vaccines-won-t-overload-your-child-s-immune-system-or-increase-their-risk-other
世界的に反ワクチンムーブメントが大きくなっていて、子どもに予防接種を受けさせない米国の保護者の数も同様である。2015年時点で2才未満の推奨予防接種スケジュールに従っていないのは10-15%と推定されている。今回新しい研究が彼らの恐れる一つの要因、ワクチンが免疫系に過負荷をかけて他の感染症になりやすくなる−には根拠がないことを示した。研究者らは2003年から2013年の間の米国西部の6つの病院での900人以上の乳児の医療記録を検討した。JAMAに発表。
この研究に参加していないフィラデルフィア子ども病院のPaul Offit医師はこの結果は驚くことではない、という。新生児は無菌の子宮から細菌だらけの世界に出てきたときに「お膨大な細菌ショック」を経験する。予防接種由来の影響はそれに比べれば僅かなものだ。

Exploiting science? A systematic analysis of complementary and alternative medicine clinic websites’ marketing of stem cell therapies
Blake Murdoch et al.,
BMJ Open / Volume 8, Issue 2
http://bmjopen.bmj.com/content/8/2/e019414
英語サイトの解析。243のウェブサイトが幹細胞療法を提供していた。脂肪由来(112)、骨髄由来(100)、血液由来(28)、臍帯由来(26)幹細胞の他に植物由来幹細胞(20)も宣伝されていた。治療対象の病気は広範にわたる。治療を行うのは医師(130)、カイロプラクター(53)、ナチュロパス(44)。重要な情報である、効果がないという根拠があるという情報がウェブサイトに記載されていたのはわずか12.76%、有効についての根拠が限られる、は18.93%、一般的リスクについての言及は24.69%、その治療法のリスクについては5.76%、規制の状態については30.86%、証明されていないあるいは実験的治療であることは33.33%。一方誇大宣伝は31.69%。
(scienceploitation(科学の悪用)という言葉が使われている。最先端とみなされる幹細胞が現代医療否定のナチュラル志向の人たちによって誇大宣伝される、というのはカオス。もともと理論的整合性なんてない業界だけど。)

  • 単発のPSA前立腺がん検診は命を救わない

One-off PSA screening for prostate cancer does not save lives
6-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/cru-ops030518.php
Cancer Research UKが出資した10年以上に渡る過去最大規模の前立腺がん試験の結果がJAMAに発表された。症状のない男性にPSA検査をすると、害をおこす可能性のない何らかの病気を検出する一方で、進行性の命に関わる前立腺がんの一部は見逃す。
英国の50-69才の男性40万人以上の参加したCAP試験。
症状のない人にはPSA検査を薦めない
(検査しないほうがいいものはたくさんある)

  • 研究は各種ダイエット計画の長期の有効性にはほとんど差がないことを発見

Research finds little difference among diet plans' long-term effectiveness
6-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/tes-rfl030618.php
内分泌学会の科学的声明は肥満管理の課題を検討する
内分泌学会の発表した肥満管理についての科学声明によると、低炭水化物だろうと低脂肪だろうと、あるいは他のダイエット法だろうと、どれでも一部の人が健康リスクの改善可能性の少しの長期減量を達成するのに役立つ。地中海食やDASH食は心血管系疾患に利益があり、その低カロリーバージョンは減量にも役立つ可能性がある。
肥満治療には各種ダイエット法、医薬品、手術が利用可能で、個人にとってベストな方法は遺伝子や健康状態や特定の方法にどのくらい従えるかによる、と著者は結論している。しかし長期に減量を維持することは相変わらず課題で、肥満の人は治療を止めると再び体重が増える。
科学声明を作るための専門委員会の座長を務めたルイジアナ州立大学のPennington 生命医学研究センターGeorge A. Bray医師は「この病気にまつわる烙印が肥満を公衆衛生上の問題として対策することを難しくしている。」という。「患者の美容上の目標と、食事と運動で達成できる現実的目標との間にしばしばミスマッチがある。5-10%の少しの減量は相当な健康上の利益になるが、それは患者が求めるような見かけの変化にはつながらないかもしれない」
この声明で各種ダイエット法や市販のダイエットプラン、医薬品、各種肥満手術についての最新の科学的根拠を検討している。400異常の研究と論文をレビューし、すべての肥満介入は有効性に関しては大きくばらつくことを発見した。
「個々の減量法は一部の人には効果があり一部の人には効果がない」。Brayは言う。「現在特定の人にどの介入方法が効果があるかを予想できるような遺伝子やその他の情報は乏しい。」
手術は他の方法より大きく長い効果がある傾向がある。
多くの消費者がFDAが評価していないダイエタリーサプリメントを使用しているが、これらに効果があるという根拠はほとんど無く、安全性すらわからない。FDAにダイエタリーサプリメントを監視する権限を与えこれらの製品の安全性と有効性に関する標準をもっと高く引き上げることが公衆衛生にとって利益があるだろう。
The Science of Obesity Management: An Endocrine Society Scientific Statement
https://academic.oup.com/edrv/advance-article/doi/10.1210/er.2017-00253/4922247
オープンアクセス
(面白いのでオススメ。
各種医薬品の試験のまとめの図など、全ての試験でプラセボ群も体重が減っている。試験期間110週でも。これをトクホの製品のデータと比べると期間も人数も少ないのにトクホはプラセボ以下ってことに(介入の密度が違うからだと思うが)。
サプリメントについてのまとめもある。1994 DSHEAは安全でない、効果がない、根拠のない宣伝をする製品をプロモーションすることを可能にしたことにより、合法的な体重管理方法への信頼性を失わせる一因となっている、と書いている。そのアメリカのダイエタリーサプリメント以下なのが日本の「健康食品」なのだが。
「あなたにあったダイエット法がわかる遺伝子検査」なんて嘘。)