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ビクトリア王朝時代の農業労働者のような食事は最善ではないだろう

'Eat like a Victorian farm-hand' may not be the best advice
March 9 2018
https://www.nhs.uk/news/food-and-diet/eat-victorian-farm-hand-may-not-be-best-advice/
「研究者は、ビクトリア王朝時代の農民の食習慣がおそらく最善であることを見出した。」と英国のオンライン新聞Mail Onlineが報じているが、これは誤解を招く見出しである。
Mail Onlineは、他の多くの英国のメディア配信と同様に、ビクトリア王朝時代に実施された調査を利用して、当時の人々の食事の中に地域的な相違を見つけようとした研究の結果を、歪めた形で提示している。1850年の地方居住者は、一般に都市部居住者の同等集団と比べ、より良好な食事を摂っていたかも知れないが、これらの知見は直接2018年には当てはまらない。
この研究が実際に示している者は、英国の都市部の集団でも田舎の集団でも多くの人々は貧しく、わずかな食事しか摂れず、栄養不良であったということである。多くの人々は、精白パン、ジャガイモおよび数種類の野菜に依存していたのであり、場合によってはわずかな肉と牛乳を摂取することができた。
こうした人々が今日の平均的な英国市民より健康的であったとする新しい根拠は無い。実際、調査では多くの人々が伝染病で死亡したことが示されている。心臓血管系の疾患や認知症のような慢性疾患はその調査においてほとんど報告されていないが、それが全てビクトリア王朝時代の食事より健康的であったためとするのはやや言い過ぎである。おそらくこれらの疾患はあまり良く診断されていなかったと考えられるし、そもそも当時の人々はそうした疾患が発症するまで長生きしていなかった。
この研究は、歴史的興味をそそるものではあるが、現行の健康的な食事についての助言を変えさせるものではない。