食品安全情報blog過去記事

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赤肉を含まない食事が大腸がん全般のリスクを低減する保証はない

Red-meat-free diet not proven to reduce overall bowel cancer risk
April 3 2018
https://www.nhs.uk/news/cancer/red-meat-free-diet-not-proven-reduce-overall-bowel-cancer-risk/
「赤身肉を摂らないようにするとヒトにおける大腸がんのリスクが有意に減少することが、研究から明らかになった。」と英国の新聞社サイトMail Onlineは報じているが、これは幾分誤解を招く見出しである。
このウェブサイトは、様々な食事について女性における結腸や直腸のがん(大腸がん)との関連性を調べることを目的とした、英国の新しい研究に基づいて報告を行っている。
大腸がん(結腸直腸がん)*1は、世界的に見て女性においては2番目に多いがんである。これまでの研究では、赤身肉の摂取と大腸がんを発症するリスクの上昇が関連付けられてきた。国際がん研究機関(IARC)は、赤身肉を「おそらくヒトに発がん性を示す(がんを引き起こす可能性がある)」ものとして分類している。
しかし、菜食主義や肉の量を抑えた食事が大腸がんを発症するリスクの低減に関連しているかどうかは不明確である。
Mail Onlineの見出しでは明らかになったとしているが、この研究は、赤身肉を除いた食事が「ヒトにおける大腸がんのリスクを有意に減少させた」ことを示してはいない。大腸の最後部に生じる遠位結腸がんについてのみ関連性が認められているが、この種類のがんが生じた女性の数は少なく、関連性が認められたのは偶然である可能性がある。
ただし、赤身肉に関する英国の現行のガイドラインに変更はない。このガイドラインでは、赤身肉または加工肉の1日摂取量を70 gを超えないようにすることを進言している。これは大体骨付きラム肉なら1切れ、ハムなら3枚に相当する。
*1: https://www.nhs.uk/conditions/bowel-cancer/
*2: https://www.nhs.uk/livewell/goodfood/pages/red-meat.aspx