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フードチェーンへの塩素酸塩の侵入は減らす必要がある

The entry of chlorate into the food chain should be reduced
Updated BfR Opinion No 007/2018 of 15 February 2018
http://www.bfr.bund.de/cm/349/the-entry-of-chlorate-into-the-food-chain-should-be-reduced.pdf
塩素酸塩は塩素酸HClO3の塩である。塩素酸ナトリウムと塩素酸カリウムは除草剤として用いられてきたが、塩素酸を含む農薬と殺菌剤の使用はEUではもはや許可されていない。だが塩素酸は、洗浄や消毒のために塩素化合物を使用した際に、副産物として生じることがある。入手可能な最新の知見によると、考えられる侵入経路は、消毒目的で塩素化合物の殺菌剤による処理を受けた水であり、こうした水が食品と接触することである。塩素酸は冷凍野菜、果物ジュース、レタス、ハーブなどの製品に度々検出されている。塩素酸塩は、冷凍野菜、果物のジュースおよびレタスやハーブなどで頻繁に検出されている。これらの製品で塩素酸塩が発生する理由は、冷凍の際のグレーズ処理(冷凍製品保護用の氷の皮膜の形成)、濃縮ジュースの希釈、ハーブやレタスの洗浄などの工程において、塩素酸を含む水が用いられるためである。
塩素酸塩への反復暴露は、ヒトの場合、ヨウ素摂取阻害につながることがある。欧州食品安全機関(EFSA)は、耐容一日摂取量(TDI)として、0.003 mg塩素酸/kg体重を導出している。塩素酸塩の単回摂取(急性暴露)は、ヨウ素摂取の阻害に対しては無視できるほどの影響しか示さないが、塩素酸濃度が高い場合には、赤血球に有害影響が及ぶことがある。この影響に基づきEFSAは、急性参照用量(ARfD)として、0.036 mg塩素酸/kg体重を導出している。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、健康を重視したこれらの参照値に同意している。また、BfRは、世界保健機関(WHO)が仮に設定していた飲料水における塩素酸塩のガイドライン値0.7 mg塩素酸/リットル(L)については、引き下げることを支持している。消費者の健康保護の観点から、0.7 mg/Lは、短期間では容認できるとみなされるが、飲料水を介する長期暴露では、濃度をより低くするべきである。
新生児や幼児といった感受性の高い集団では、塩素酸塩を含む飲料水を用いて混和した粉ミルクだけを与えられている場合に塩素酸塩への暴露量が最も高くなることが想定された。この場合、塩素酸塩の摂取はもしかするとTDIを超えている可能性があるが、塩素酸塩のARfDは超えていない。入手可能な最新データによると、感受性の高い集団においても、塩素酸塩濃度が0.7 mg/Lの飲料水を時折摂取しても、健康リスクが生じる可能性は低い。
BfRは、消費者に起こり得る急性健康障害に関しては、それぞれの知見について評価することを推奨する。その評価には、2つの計算モデルが利用できる。すなわち、EFSAの残留農薬摂取モデル(PRIMo)と、ドイツNVS IIモデル(NVS II: 国家栄養調査II)である。BfRは、これらのモデルを、EFSAによって導出された急性参照用量に従って使用するよう推奨している。ただし、それらのモデルで用いられる変動性要因に関しては調整を行った方が良い。
BfRは、フードチェーンへの塩素酸塩の侵入を減らして、消費者の暴露を低減する取り組みが行われることも推奨している。欧州委員会は、これに関して行動計画を提案している。その目標は、農薬、飲料水、ベビーフード、および食品衛生の分野に関わり、塩素酸塩の問題に携わったり影響を受けたりするあらゆる人によって、必要とされる手段について話し合う共同討議の場を設けることである。消費者は基本的に食習慣を変える必要はない。果物と野菜がはやり健康に良いことは明白であるからである。