食品安全情報blog過去記事

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アルミニウムと食品―住民のほぼ半数が日常生活でアルミニウムを避けようとしている

Aluminium and food - almost half the population tries to avoid aluminium in everyday life
10/2018, 14.03.2018
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2018/10/aluminium_and_food___almost_half_the_population_tries_to_avoid_aluminium_in_everyday_life-204029.html
食品の包装や容器から溶出する可能性に関し、プラスチックに次いで、ドイツ語圏の住民が最も気にしている物質は、アルミニウムである。アルミニウムに関する「BfR消費者特別調査」では、回答者のほぼ2人に1人はアルミニウムが高い健康リスクを生じると考えていることが判明した。そのため、好適な代替品がある場合、多くの人はアルミニウムの使用を避けている。消費者はすでに食品から多量のアルミニウムを摂取しており、それは、このルートからのアルミニウム摂取が既に最大週間限度量に達している人がいる可能性が高いことを意味している。「アルミニウムのさらなる摂取を減らしたい人は、バーベキューをする際、酸性食品や塩分含有食品をアルミホイルで包むより、ステンレススチール製のトレーを使用するとよい」とBfR長官Dr. Andreas Hensel医学博士は進言している。最新の「BfR消費者モニター特別調査」でも、特定の部分集団がリスクだと信じていることと、科学的リスク評価の見地から本当にリスクを生じるものとの間に、食い違いがあることが明示されている。アルミニウムの摂取を避けたいという欲求が、実際には何の健康リスクも引き起こさない特定の行動も避けるよう消費者を駆り立てることも、想像に難くない。「BfR消費者モニター特別調査は、今後のリスクコミュニケーション活動において、BfRがより明確に説明する必要がある事柄を示している」とHensel氏は述べた。
◇食品分野でのアルミニウムに関する消費者モニター特別調査2017
http://www.bfr.bund.de/cm/364/bfr-consumer-monitor-2017-special-aluminium-in-the-food-sector.pdf
2017年のBfR調査計画では、コーティングされていない食事用トレーから食品へのアルミニウムの溶出が調査された。そして、特に酸性食品や塩分含有食品がトレー上で保温されている場合に、アルミニウムイオンが食品に入り込む可能性があることが判明した。BfRは、このテーマに関する人々の考え方やリスク認識および知識を把握するために、食品分野におけるアルミニウムに関し、標本調査を実施した。この調査では、ドイツの一般家庭に住む14歳以上のおよそ1,000人が、BfRの電話インタビューを受けた。
どの物質が食品包装や食品の容器から溶出するかを消費者に尋ねると、プラスチックの次に回答者がすぐ思いつく物質はアルミニウムである。回答者のおよそ3分の2は、これに関連して可塑剤やミネラルオイルについても同様のことが起きると教わったことがあると述べた。およそ半数は、アルミホイルの使用を減らしたりアルミニウムフリーの防臭剤を選んだりすることに重点を置いて、アルミニウムの摂取を減らす対策をしている。リスク評価の観点からすると、化粧品の部門においては、アルミニウム塩を用いて発汗を減らす発汗抑制剤は、アルミニウム源となり、体が吸収してしまう可能性がある。
回答者の54%は、酸性食品や塩分含有食品は、アルミホイル中に保存すべきではないと述べた。また48%は、ステンレススチールなどの他の素材でできたグリル皿を使用した方が良いと聞いたことがある。アルミホイルやアルミトレーを用いて焼き調理した食品に塩やスパイスをかけるのは、焼いた後だけにした方が良いということは、あまりよく知られていなかった(36%)。
BfRが特に関心を持っていることは、一般大衆の認識が科学的な健康リスク評価結果と乖離しているかどうかである。アルミニウムの取扱いに関する情報で、公式な助言を超えて拡大解釈されているものについて、回答者はどの程度認識しているであろうか?アルミニウムに関するリスクコミュニケーションの「境界線」を大まかに知るために、この調査では消費者に、幼い子供にはアルミニウムといかなる接触もさせないようにと教えられたことがあるかどうか尋ねた。回答者の40%以上があると答えているが、そのような予防手段に科学的根拠はない。別の科学的根拠のない習慣に、アルミ缶に触った後は手を洗うというのがある。根拠が無いにもかかわらず、回答者の5分の1はやはりこの習慣を教えられたことがあると述べた。これらの回答は、リスク評価に基づく助言をより明確かつ体系的に伝えなくてはならないという根拠を一層強く提示している。
アルミニウムに纏わる潜在的な健康リスクについて尋ねた場合、最も頻繁に名前のあがるリスクは、発がんである。それは、その問題に関する全ての公開討論において、アルミニウムを含む発汗抑制剤の使用と乳がんの関連に科学的証拠はないという事実が示されているにもかかわらずである。結果的に、大多数の人は、食品包装材料や食卓用食器類のアルミニウムに関する安全規制を、不十分と認識している。
多くの食品や消費者製品は、アルミニウムやその化合物を含んでいる。アルミニウムの溶出を防ぐために、飲料缶、ヨーグルトカップの蓋、フルーツジュースの容器などの食品の包装や容器は、内側にコーティングが施されている。欧州食品安全機関(EFSA)は、食品を介したアルミニウムの耐容週間経口摂取量を、体重1 kg当たり1 mgと定めている。アルミニウムに関するこの健康リスク評価は、神経系への影響、生殖能力および胎児の生命への影響、および骨格の発達への影響に基づいている。だが、この値を超過する場合がある可能性がある。食品と共に摂取した場合、アルミニウムが急性毒性を示す可能性は低いが、慢性摂取での健康リスクはまだ十分に調べられていない。そのため、BfRは、アルミニウムの余分な摂取は可能な限り防ぐよう助言している。