食品安全情報blog過去記事

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食品中の有害金属から消費者を保護するためのFDAの活動

FDA Working to Protect Consumers from Toxic Metals in Foods
April 11, 2018
http://s2027422842.t.en25.com/e/es?s=2027422842&e=73853&elqTrackId=B1F0B909CCF90C71B9C490C37BFE6647&elq=f2a3a54396b5435abde1830d88d49899&elqaid=3126&elqat=1
私たちが手にする食品には、現実問題として、ヒ素、鉛、カドミウム、水銀などの金属が含まれている場合がある。これらの金属元素は天然に存在し、空気、水および土壌の環境汚染物質となり、生育時にそれらを取り込んだ植物を介して食品供給網に入り込む。
これらの金属は、高濃度では毒性を示し、最も脆弱な子供たちにおいて特に高い危険性を示すため、FDAは積極的に監視を行っている。昨年FDAは、食品安全専門家のワークグループを設立し、金属が食品に存在していた際、それらからあらゆる年代の消費者を守るためにFDAが何をすべきかを方向付けするのに役立てている。
ワーキンググループは、「毒性元素ワーキンググループ」と称し、FDAのCFSAN(米国食品安全・応用栄養センター)に属する分析・支援研究室(Office of Analytics and Outreach)の責任者であるConrad Choiniere博士によって率いられている。このグループが発足してから6ヵ月となるに当たり、Choiniere博士は、この仕事の重要性およびこのグループのメンバーが何故この問題を重要視しているのかについて、以下のウェブサイトで語っている。
*Conrad Choiniere博士との会談(和訳別途参照)
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm604173.htm
*食品中の金属について(和訳別途参照)
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/default.htm

  • 食品中の毒性金属から消費者を保護するためのFDAの活動: Conrad Choiniere博士との会談

What FDA is Doing to Protect Consumers from Toxic Metals in Foods: A Conversation with Conrad Choiniere
04/11/2018
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm604173.htm
Q: ここで取り上げる汚染物質は何か?
我々の「毒性元素ワーキンググループ」がまず注目している金属は、食品、化粧品、およびダイエタリーサプリメントに含まれる鉛、ヒ素カドミウム、および水銀である。これらの天然に存在する汚染物質は、多くの食品に存在し、神経学的発達への影響が懸念され、特に子供に有害であると考えられる。最も脆弱とされる子供たちによって通常消費される食品について最も優先して、これら4種類の金属の存在状況を精査している。
Q: それらの金属がどのように食品供給網に入り込むのか詳しく教えてほしい。
これらの金属は環境中に天然に存在し、伏流水、空気および土壌を汚染するため、除去したり低減させることも難しい。これらの汚染物質が土壌や水に存在すると、植物がそれらを吸収し、その植物をヒトが食べたり、食品供給網に入ることになる動物が食べたりする。我々はこの構図をメチル水銀で確認している。メチル水銀は、水に入り込んだ汚染物質から生じ、水から海産物供給網に入り込む。
Q: 地球ができる頃からこれらの元素があったのなら、なぜこのワーキンググループは今になって設立されたのか?
FDAが食品中におけるこれらの金属の存在を注視するのはこれが初めてではない。近年、FDAは、海産食品の摂取や乳幼児の米穀食に関して助言を行っており、業界には、乳幼児が摂取する特定の食品についてヒ素を低減するように上限値を提示している。これらの活動に加えて、FDAはより戦略的で全世界的な方策に取り組んでいる。あらゆる食品において、1つの汚染物質ではなく、すべての金属を同時に検査することである。
Q: ワークグループの活動を説明して欲しい。
一つには、FDAが長年、トータルダイエットスタディなどにおいて収集した大量のデータを分析することである。FDAは定期的に全国から製品の試料を集めている。特定のブランドや店舗のものではなく、米国人の食事の典型例から試料採取している。何百もの食品から試料採取を行い、懸案の4つの金属を含む400種類近くの汚染物質を検査し、大量のデータを得ている。FDAは他の調査のデータも用い、それらの食品が特に集団別にどれくらい摂取されているのかの把握に努めている。そして、どのくらいの汚染物質が年次ベースで各集団の食事に入り込んでいるかを究明するために、それらのすべての情報を活用している。
データの分析中に見つけたことの一つは、これらの金属の暴露源を一つだけ指摘することはできないということである。ある金属の汚染水準が特定の食品で低くても、多くの食品が少量ずつ金属を含んでいるため合計の暴露量は高くなる。
Q: そのデータ収集と分析の後に行われる活動は?
FDAの任務の一つは、リスクに基づいた手法により、これらの汚染物質に対して行うべきことに優先順位をつけ、近代化を行うことである。FDAは、その取り組みをどの分野に向ければ最大の結果が得られるかを明確にしようと試みている。さらに、期待される解決法のそれぞれについて実現可能性を考慮しなくてはならない。もし重金属を高濃度で含む食品を特定したならば、その食品の栽培・製造方法を変えることで低減できるのか、消費者が自分自身で暴露から身を守る方法を知らせた方が良いのかどうかなどを検討する必要がある。問題を絞ることで、FDAは対処法を提示できる。
短期的には、FDAは、乳幼児用米穀およびリンゴジュースにおける無機ヒ素の量について、介入レベルを設定するガイダンス案をまとめている。疾病対策センター(CDC)が血中鉛濃度の許容値を引き下げたことにも留意している。これによって、今度は、FDAが様々な食品で設定してきた具体的な鉛含量の見直しを始めることが迫られる。
Q:これらの元素は以前よりも現在のほうが危険性が増しているのか?
そうではない。金属自体がより危険になったということはないが、科学の進歩により、我々の健康に及ぼし得る影響がより明確になっている。検出法が改良され、以前より微量の金属が検出できるようになっている。これは必ずしも食品中の汚染物質が増えていることを意味するものではなく、より良く検出できるようになったということである。実際、鉛などにおいては、食品供給網全般での濃度は低減している。FDAは、これらの金属のさらなる低減を図るために、改善できる他の分野の特定に当たっている。
Q: 子供以外の高齢者や他の年代の人のことも視野に入っているのか?
もちろん視野に入れている。子供に最初に焦点を当てたのは、体が小さく、大人より代謝が遅いため、上述の金属に対する感受性が高いためである。加えて、これらの金属は、子供の神経学的発達に影響を及ぼすためである。例えば、鉛についての基準値を見直す場合、FDAはまず、子供たちを保護するのに十分な基準値を特定するかもしれないが、同時にそうした基準値が全ての年代の人々を保護するのに十分であることも確認する。
Q: 何らかの方法で市民が参加できるようにしたり、利害関係者が意見を述べられるようにしたりする計画はあるか?
ある。FDAは、消費者、業界、州および地域の連携機関、他の公衆衛生機関など、あらゆる利害関係者から、彼らがFDAに対しこの問題に関して何を考慮して欲しいと考えているのかについて、情報を得る方法を模索している。こうした利害関係者から可能な限りのデータや情報を得るようにする良い機会であり、それにより我々のグループが最良の助言を提示できるようになる。
Q: どうしてこの任務に取り掛かるのか?
私も食べるし、子供もいるからである。15年にわたり公衆衛生の分野で仕事をしてきており、私の妻も公衆衛生の仕事の経験があり、この問題についても非常に熱心であった。子供や脆弱な人々の集団を保護することは、私にとって重要であり、幸運にも、同じように考え、人々と我々が食する食品を保護することに最善を尽くす熱意ある人たちと仕事をすることができている。
◇ さらに詳しい情報
・ リーダーや専門家たちとのさらなる会談
http://wcms.fda.gov/FDAgov/Food/PopularTopics/ucm564446.htm
・ 食品汚染金属(和訳別途参照)
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/default.htm
・食品中の鉛に関するQ&A
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm557424.htm
・ 米及び米製品中のヒ素
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm319870.htm

  • 食品中の金属について

Metals
04/11/2018
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/default.htm
ヒ素、鉛、カドミウム、水銀などの金属は、特定の食品で検出され、暴露量が多いと毒性を示すが、完全に食品供給網から除去することは難しい。それはこれらの金属が空気や水や土壌に存在し、植物がその生育中に取り込んでしまうからである。FDAは、食品供給網におけるこれらの金属の濃度を監視し、リスクを低減するための体系的な取り組みを行っている。幼児や子供は、これらの金属による神経学的影響および発達に及ぼす有害影響に敏感である。
金属への暴露源は食品に関しては単一ではないため、そのリスクを理解するには複雑さが伴われる。これらの金属を低濃度で含む様々な食事から暴露を受ける。それぞれの暴露を合計すると、懸念すべき暴露レベルに達する場合がある。
FDAの「毒性元素ワーキンググループ」は、食事、化粧品およびダイエタリーサプリメントによる毒性元素への暴露を低減することを任務としている。このグループは、米国食品安全・応用栄養センター(CFSAN)のシニアリーダーやリスク管理者で構成されている。彼らは、微生物学、毒性学、化学、医学、疫学、政策や法律の作成の経験者である。CFSAN全体の科学者たちが協同する形で、このグループは、以下の手法で食品中の金属の問題に取り組んでいる。
・ 毒性と検出率に基づいて金属に優先順位を付ける
このワークグループはまず、鉛、ヒ素カドミウムおよび水銀に着目した。これらの金属への高用量暴露が、公衆衛生上最も大きな影響を持つと考えられたからである。優先順位付けには、長年にわたって収集した膨大なデータを分析することが必須である。FDAは、トータルダイエットスタディーにより何十年間も食品中の汚染物質や栄養素に関するデータを収集してきた。トータルダイエットスタディーでは、米国中の食料品店の製品から定期的に試料採取を行い、上述の金属を含めた何百もの汚染物質を検査している。これらのデータは、消費者がどのようにしてこれらの汚染物質に暴露されているかをより良く知る上で重要である。データはリスク評価にも用いられ、米におけるヒ素や魚における水銀の評価を行った際にも用いられた。
・ 最も脆弱な集団を明らかにする
食品中に含まれる金属の有害影響に対して脆弱な人々は、乳幼児、子供、老齢者、慢性疾患を有する消費者である。子供は体が小さく、代謝も遅いため、金属の有害影響により敏感であることから、特別に注意が向けられる。特に懸念されるのは、これらの金属が子供の神経学的発達に有害影響を示すことである。
・暴露を低減する有効な方策を決定する
FDAは、毒性を示す金属に関して、最良の科学的情報を入手し、それを伝達し、政策決定の支援を行う任務を負う。FDAは、暴露を低減するために、広範な政策や活動を考慮する。それは業界に対して製品中の金属含量を低減する対策を働きかけることから、消費者を教育して、これらの金属によるリスクを自分で低減できる方法について知ってもらうことまで、多岐にわたっている。
◇ さらに詳しい情報
・トータルダイエットスタディ
https://www.fda.gov/food/foodscienceresearch/totaldietstudy/default.htm
・ 米に含まれるヒ素
https://www.fda.gov/Food/FoodScienceResearch/RiskSafetyAssessment/ucm485278.htm
・ 魚を食べることの神経学的発達への影響(魚中のメチル水銀の影響)
https://www.fda.gov/food/foodborneillnesscontaminants/metals/ucm393211.htm
・ 食品中のヒ素
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm280202.htm
・リンゴジュース中のヒ素
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm280209.htm
・ 食品中の鉛
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm2006791.htm
・ 食品中の水銀およびメチル水銀
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm2006760.htm
・ 食品に含まれる複数の金属の検査
https://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/Metals/ucm521427.htm